川西17試艦戦乙案「暴風」11型

「暴風」11型

寸法     全幅17m,全長11m,全高3.9m。
計画最大速度 高度6000mにおいて700km/h(計測値648km/h)
エンジン 護11型(1870hp)又は火星25型(1850hp)双発
武装 20mm機銃6丁 増槽又は爆弾又は魚雷合計1000kg
航続距離 1700km(増槽4本搭載時3500km)

登場背景
 日本が勢力拡大を初めて阻まれた戦い,珊瑚海海戦。5航戦は米軍のP38とF4Fによる 一撃離脱によって雷撃機・爆撃機のほとんどを失い,SBDとP38による急降下爆撃によっ て翔鶴(と随伴駆逐艦)も失うという大打撃を与えられた。これにより,いくら格闘戦性 能に優れていても敵に振り切られる戦闘機では護衛としての価値はない事が判明。17試 艦戦計画は史実と違い,高速性・航続力を徹底重視した要求仕様を生み出した。
 雷電の改修に手間取る三菱は17試艦戦計画に応える事ができず,この計画に応じた中 島と川西による競争試作によって次世代艦戦を決する事になったのである。

 主任技師は「紫雲」「強風」「試製仮称1号局戦(後の紫電)」と,川西における小型 機を一貫して手掛けてきた菊原氏。この要求仕様は2200馬力以上のエンジンが必要と判 断。誉を強く推す海軍をはねのけて三菱ハ-43で行う事に決定。当時,数多くの計画機 が誉を予定しており,供給量にも不安があった。後に紫電・紫電改の大量首無し機体を 作ってしまった所からもこの選択は正解だったと言えるだろう。ただ,ハ-43も開発途 中であり,出力・稼働率・供給量に不安があった。そこで,安全策を用意したのが彼の 素晴らしい所で,既存エンジン双発にする事で速度を稼ぐ案も提示。ハ-43単発の案は 甲案「熱風」,双発案は乙案「暴風」と呼ばれる事になる。
(以上,架空戦記2より)

 高速を狙うため,層流翼を採用。強度の面からやや厚めの翼になった。
 干渉抵抗を排するため,機体と翼間の角度,翼とナセル間の角度が鈍角になるよう に,機体はややオムスビ型で,エンジン中心を翼が貫通するような形状になっている。
 エンジンには発展性・燃費の両面から中島「護」を採用。双発である事と,「天山」 で中島が苦しんだ成果を海軍よりもらえたため,製作はスムーズに進んだ。ただ,現時 点で「護」搭載機が少なく,打ち切られる可能性もあったため,「火星」もそのまま装 備可能な設計になっている。
 舵面を低速用にセッティングすると高速時には「重く,そして効きすぎる」ことにな ってしまう問題に対処するため,高速用に舵面をセットし,低速時には通常の補助翼と 共に低速用補助翼を動かす事で対処した。
 川西戦闘機のお約束ともいうべき自動空戦フラップはもちろん装備されていたが,こ のフラップ自動制御は着艦時にも働き,失速速度をぎりぎりまで低める働きをしてい た。

(ここからは架空戦記2で流れて「いくかもしれない」ストーリーです)
 戦時であり,少しでも早く制式を決めるべきという理由より,1943年7月に全機の試 験が開始された。
 この時点で「暴風」は,現在の姿よりかなり小さく,全幅15m,全長は10mしかない。 降着装置も尾輪式だった。
 陸上における運用試験では,速度で「熱風」や中島「捷風」をわずかに引き離し,桁 違いの搭載量・航続力(搭載量の多さから増槽を4本吊るせたので)を見せた。
 とくに,3000kmの足の長さは魅力的であり,飛行場の少ない南方作戦では威力を発揮 するとみられ,抜群の好印象を与えたのである。
 その一方で,
 ・射撃時の「すわり」が悪い。
 ・脚が不安定でブレーキが噛付くため着陸に不安を抱かせる。
 ・ナセルストールを起こす事がある。
といった点も指摘されている。

 艦上運用試験では,辛い点をつけられた。前下方視界は極めて良好であるものの,機 体重量が重めである事で,失速速度が高く着艦が難しい。と評価された。

 そのままでも陸戦として採用される性能ではあったものの,海軍は「熱風」「捷風」 は仮想敵機のF4Uに劣ると判断し,「暴風」を艦戦として制式にすることを決定。ただ 同時に提示された条件として,
 ・翼端を1m延長し,角型翼端として主翼面積を増やす。
 ・フラップの大型化。
 ・内翼前縁への自動スラットの追加。
  (この3つによって失速速度を低下させる狙い。)
 ・降着装置を3車輪方式にし,剛性向上を図る事。
  (このことにより,引き起し角度が小さくなり,速い失速速度でも着艦しやすくな る。また,ブレーキが噛付いてもつんのめることがなくなる。)
 ・胴体を1m延長する。
  (射撃時の安定性を向上する。)
 ・ナセルを延長し,翼後縁をつきでたところで集束するようにする。
  (ナセルストール対策。)
といった条件が付け加えられた。これらの改修により,問題点はほぼクリアされ,機内 燃料が増加した事,さらに空力的洗練により,航続距離は実に3500kmまで達した。艦攻 を大きく上回る搭載量(過荷で魚雷2本)により,流星はもっぱら急降下爆撃に用いられ る事になる。

 暴風は日本海軍きっての快速機であり(「捷風」もとうとう追い付けなかった。), 大型の機体にもかかわらず旋回性能は単発機に迫り,搭載量でも陸攻に迫る優秀機であ り,取り回しも容易であったために,正規空母の艦上機は全て流星と暴風とに置き換え られた。唯一の難点といえば,改修を行ったにもかかわらず失速速度が高めであること で,軽空母での運用にはやや難を生じたことである。(これが「捷風」制式化のきっか けとなる。)

 また,機首下面に機銃を設置し,発射炎が視界に入らないようにできていることか ら,派生型として電探装備の夜戦型も登場。他にも練習機,21型にダイブブレーキを追 加した艦爆型など,日本海軍の航空機としてはもっとも多用途任務をこなす機体となっ た。
-------------------------------------------------------------------------------
 暴風制式各型一覧
    試製「暴風」:最大速度650km/h。翼端は丸みを帯びており,これ以降に
          比べると一回り小さい機体である。
    A7K1「暴風」11型:最大速度648km/h。海軍に指摘された難点をほぼ解消した。
    A7K2「暴風」21型:最大速度640km/h。急降下からの引き起こし強度を高めた。
    A7K3「暴風」22型:最大速度673km/h。量産体制がようやく整ったハ43を装備。搭載
                       量が過荷で1800kgと,わずかに増加した。
    A7K3a「暴風」33型:最大速度704km/h。ハ43ルを装備。「護」搭載のための太いエン
                       ジンナセルを絞った。高々度戦闘機を狙ったものだが,翼面積
                       が足りず,中〜低高度における性能向上に留まった。
    A7K5「暴風」44型:最大速度790km/h。エンジンをJumo004b-1のライセンス生産品,
                       ネ60に変えたもの。
-------------------------------------------------------------------------------
暴風から派生した各型一覧   A7K1-K「暴練」:A7K1を複座にした練習機。初めて着艦訓練をする練習生はその           壮絶な視界に失禁するという伝説を産んだ。九州航空機にて           生産。   A7K2-S,A7K3-S,A7K5-S「雷光」:A7K2,A7K3,A7K5を複座にし,電探,斜め銃を装備した           夜戦。これらの装備によって各型いずれも30km/hは                  速度が低下した。   A7K2-D,A7K3-D「開陽」:A7K2,A7K3を複座化。ダイブブレーキを追加した艦爆型。川西   の生産体制が追い付かないため愛知にて生産。流星の後継機   となる。なお「開陽」は北極星の古き和名であり,命名基準   にはなんら違反していない。注意されたし。   A7K3a-J「暴風局戦」:A7K3aの翼折り畳み機構を廃止し,翼面積増加を施した本格的  高々度戦闘機。   A7K1-Q「嵐海」:型落ちとなったA7K1を改造して対潜機としたもの。任務的に は東海の艦上機版と考えてよし。
-------------------------------------------------------------------------------
 ふぇー。ずいぶん長いテキストになったなぁ。
 えーどうも,SADA(ライターS)です。架空戦記2の管理人やっております。
 この機体が生まれたきっかけは,米軍機の資料(といってもたいしたものじゃないが) を漁る内に,日本人って頭固いなぁと実感したものですから。
 アメリカではグラマンがF7FやTB2Fなんて双発艦上機をてがけておりますし,イギリ スにいたってはモスキートを艦上化して実際に使ってますし……。ほんとならこういう ことはまともな大出力戦闘機用エンジンを開発できなかった日本がやるべきことでしょ うが!

 というわけでやってみました。かなり無謀な所なんかあったりするかもしれません が,見逃してくださいませ。電気工学科卒なので空力なんかもフィーリングでやってま すし……。
 え,「暴風」の由来だって?強風より強いでしょ(笑)!以上!
-------------------------------------------------------------------------------