アメリカ陸軍 駆逐戦車「ホットロッド」

ホットロッド

諸元

戦闘重量  : 40t
全長    : 7.5m
全幅    : 2.8m
全高    : 3.0m
武装    : 75mm砲×1
        7.62mm機銃×2
最大装甲厚 : 102mm(車体前面)
発動機   : アリソンV-3420-23液冷V字12気筒2,600馬力
最高速力  : 120km/h
航続距離  : 120km
乗員数   : 5名

 ドイツ陸軍における駆逐戦車が重装甲・重火力で、機動性を軽視したのに対
し、アメリカ陸軍の要求した駆逐戦車は機動性と大火力を備え、かわりに装甲
防御を軽視するものだった。
 これはドイツにおける駆逐戦車が防御戦闘向きの車輌であるのに対し、アメ
リカ陸軍における駆逐戦車が、攻性作戦時における戦場の火消し役として早急
に戦場へ駆けつける能力と、敵戦車を撃破し得る火力を要求されたためである。
 車体を軽量にまとめて機動性を向上させるために装甲を減らしたのが、アメ
リカ製駆逐戦車の特性であり、こうして生まれたのがM18「ヘルキャット」
である。
 一方で、車体軽量化ではなく発動機出力の向上で機動性向上を目指そうとし
たのが駆逐戦車「ホットロッド」である。

 駆逐戦車「ホットロッド」は当初はM4「シャーマン」をベースに1,000馬
力級の発動機を搭載する改造車輌として製作されるはずであった。
 しかしながら、M4のエンジンルームでは1,000馬力級発動機を収めること
は不可能で、結果としてM4のエンジンルームを前後に拡張し、これに合わせ
て車体の延長、懸架装置の増設(片側3基→4基)を行なった。
 これによりエンジンルームは約2.5mの全長を持つに至った。
 当初はこのエンジンルームに「アリソンV-1710」系の航空機用1,000馬力級
水冷ガソリンエンジンを搭載する予定であったのだが、どこで如何なる手違い
があったのか、実際に搭載されたのは「アリソンV-3420」2,600馬力、水冷双
子エンジンであった。(よりによって!)
 第二次大戦当時の各国主力戦車の出力が300〜700馬力程度であることを考え
れば2,600馬力の戦車がいかに馬鹿げた存在であるか、容易に想像が付くであ
ろう。

 狂気の2,600馬力戦車「ホットロッド」は当然のことながら、足回りにトラ
ブルが多発した。出力を吸収し切れずに駆動系が破損する、エンジン冷却が間
に合わずオーバーヒート、時には発動機火災の発生等、「ホットロッド」の試
験はトラブルなど日常茶飯事の状態であった。
 当然実用性など皆無に等しく試験不合格となったが、完調時に只一度だけ最
大速力120km/h(時速75マイル)を記録した。

 最終的に試作1号車は事故で失われた。
 最大出力からいきなりクラッチを繋いでの急発進で、演習場のフェンスに激
突横転大破、廃棄処分となった。
 この時の過激な急発進がもとで、失われた試作1号車に「ホットロッド」の
愛称が奉られることとなった。

 後に発動機をP&W R-4350空冷星型発動機(出力3,000馬力)に換装した試
作2号車が製作されている。
 発動機自体のトラブルは無くなったが冷却機フィルターの粉塵対策と、やは
り駆動系の破損と冷却不足に悩まされて実用には至っていない。



作者のコメント

巣田 夏生です。
現代のMBT(メインバトルタンク:主力戦車)ですら、その出力は1,500馬
力〜2,000馬力程度であることを考えれば、この車輌が火葬戦車であることを
納得していただけると思います。
最大速力は推測すら付かなかったのでいい加減な数値ですが、「まともに動け
ば」突拍子も無い速力が出るとは思います。そんな訳で、100km/h以上・・・・。