基本排水量 1,500t
公試排水量 1,940t
全長 108.0m 全幅 9.70m
機関 艦本式OGT2基2軸推進 44,000馬力
ロ号艦本式重油専焼缶 4基
計画最大速力 36.5kt
予定航続距離 14kt 4,500浬
武装 45口径12cm単装砲4基(前後背負各2)
7.7mm単装機銃2基
61cm三連装魚雷発射管2基6門 予備魚雷6門
81式爆雷投射機2基(左右各1)
爆雷投下軌道2基
対潜爆雷 常備24個(戦時48個・最大72個)
大型掃海具装備時12個
乗員定数 185名
■発注経緯
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先年、イブクーロ王国(略称・胃国)が列強各国に対して主力巡洋艦を発注し、日本
の三菱長崎造船所案が採用されたのは周知のことである。
それに続けて艦隊整備を進める胃国は1928年(昭和3年)8月、新たに駆逐艦を発注し
た。要求用途として、船団及び艦隊の護衛、港湾等の警備・掃海、対潜掃討、小艇の駆
逐、哨戒任務など多岐にわたり、水雷戦能力を有した小型高速艦というものであった。
今回の発注を受け、日本海軍は早速、艦政本部に駆逐艦試案の設計を指示した。
前回の巡洋艦試案において、一民間企業である三菱造船所に水をあけられてしまった
艦政本部としては、プライドと国家の威信にかけて今回の競作に臨んだ。
今回の競争試作案として真っ先に上がったのは言うまでもなく、特型駆逐艦である。
駆逐艦試案が発注された8月に一番艦<吹雪>が舞鶴において竣工しており、その内容
も名実共に世界最強に相応しい駆逐艦である。それまでの駆逐艦の限界を超えた61cm魚
雷9門と38ktの最高速力は、世界中が羨望の眼差しを向けていた。後に米海軍のある提
督が「米駆逐艦200隻より、日本の駆逐艦50隻が欲しい」と、一次大戦で造り過ぎた平甲
板型駆逐艦と比較して述べている。新基軸をふんだんに取り入れた特型駆逐艦は、それ
までの駆逐艦と一線を隔したものだった。
ところが、特型駆逐艦では要求された基準排水量1,500tに引っかかってしまう。あれ
これ下ろしても1,600tを切る事さえできない。それ以上下ろしたら、特型が特型である
所以さえ喪いかねなかった。
胃国は天然資源や金に恵まれているものの、石油の産出がなく、完全な自給自足はほ
ぼ不可能である。そのため、海洋国家の王道である加工貿易を基軸とした工業貿易国家
の道を選び、国際協調、善隣友好を国是としている。
胃国海軍は未だ巡洋艦以上の艦艇は保有せず、正面切った艦隊戦が行われる可能性も
極めて低いことから、艦隊戦を主眼においた駆逐艦の必要性は当面ない。
それよりも海洋国家であるためには、まず船舶の航路の安全確保が最優先課題であり、
胃国海軍は海上護衛を主任務とする、誠に健全で本来あるべき姿の海軍である。要求仕
様からもそれがうかがいしえる。
そこから導き出されるものは、重武装の艦隊型駆逐艦よりも、船団護衛と対潜任務を
第一に考えた護衛駆逐艦であると考えられる。
■艦政本部設計案
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特型駆逐艦を断念した艦政本部が代りに考えたのは、前世代艦である<神風>級や<睦月>
級の拡大発展型にするという案である。それに特型で培った技術を応用した全く新しい
駆逐艦にするということである。
船体は特型と<睦月>級との中間ほどの108m、大洋を走破するにあたって凌波性を高め
るため、長首楼を艦橋後部まで拡張した。船体幅も9.7mと特型より若干小さい。
基準排水量はギリギリの1,500t。これに特型に塔載されているボイラーを改良したも
の4基載せた。改良した点は、船団の護衛や巡洋艦の随伴を長距離に渡って航海するこ
とが考えられ、航続距離を伸ばす改良が加えられた。他にも要所要所で燃料の塔載量を
増やし、機関出力と速力は落ちたが、従来艦より500浬ほど航続距離が伸ばすことに成功
した。
船体については当初、排水量の節約のために全面電気溶接による建造が考えられたが、
未だ研究途中であり、技術的な問題などにより断念された。
武装については、主砲は新開発の12.7p連装砲ではなく、それまでの12p単装砲を装
備した。12.7cm砲と12cm砲とでは、わずか7oでも18%もの威力の違いが出てくるが、
ここでも排水量の節約が問題視され、主砲口径を1ランク下げたものを装備した。
12cm単装砲は背負式に前後、2基ずつ塔載された。これは<神風><睦月>級に塔載され
ていた3年式12cm単装砲G型と呼ばれているものを砲塔化したものである。砲塔といっ
ても名ばかりで、実際は10mmの鋼材で覆った砲室に過ぎない。しかし、前甲板など波風
を直接被る砲は、従来の前盾だけに比べれば非常に快適性に優れている。砲自体も改良
され、24発/分という良好な速射性と、仰角を75度まで上げることで対空戦に対応させ
た。この砲は小艦艇に対する威嚇・及び掃討にも有効である。
この時、連装砲にしたらどうかという声が上がったが、ただでさえ少ない門数である
ならば、同時に複数のを狙える方が有利であるとともに、これ以上新しい砲を開発する
必要性が認められないため、単装砲に一本化した。
この単装砲や砲の配置などは、大西洋で活躍した英国駆逐艦を手本にしている。砲だ
けではない。Uボートとの熾烈な戦いで対潜水艦戦に一日の長がある英国は、この手の
駆逐艦の本家である。
航路を確保する上で潜水艦は最も厄介な相手であるが、地中海に駆逐隊を派遣した日
本帝国海軍は、とうとう潜水艦との戦闘を一度も行わないで現在に至ってしまった。
いつか訪れる未知数の敵との戦いに備えてはいたが、艦隊決戦思想が跳梁する海軍内
においては、このような任務は二次的なものと思われていた。本来それこそが任務であ
る駆逐艦からもあまり好まれてはいない。海軍内の少ない有識者たちはその必要性を説
いてはいたが、やはり副次的な任務ということで、駆逐艦が少数の爆雷を積んでいるだ
けであった。
本案では今後ますます増大すると思われる対潜に対する脅威に対し、必要最低限の爆
雷として常備24個、戦時で48個、掃海具などの装備を全て下ろせば最大72個を塔載する
ことができる。爆雷にはドラム型をした新兵器の88式爆雷も考えられたが、この爆雷は
敏感過ぎて艦上で誤爆する可能性があり、常備24個もの爆雷を積んだ艦艇では安全管理
上問題が発生しかねない。そのため、従来の爆雷でも十分に通用すると判断して88式の
塔載は断念する。
爆雷の投擲方法としては、投射機と投下軌道を使った2種類。81式爆雷投射機は、片
舷へ爆雷を射程90mで投射することが可能である。英米が気に入っているY砲の導入も
検討されたが、国内でも採用されていない兵器の装備には積極的ではなく、「今回は残
念ながら見送る」こととなる。
対潜兵器に関して見ると、断念するところが多いが、従来兵器でも通用することには
かわりなく、言い換えれば使用実績のある信頼性の高い装備とも言えよう。
本案は航路護衛を主眼に置きながらも、要求にあった通り水雷戦を考慮した設計にな
っており、水雷戦能力も他国の駆逐艦と同等かそれ以上である。
先に採用された巡洋艦が塔載した魚雷の口径に合わせ、本案でも61cm魚雷を使用し、
3連装魚雷発射管を2基6門を装備している。予備魚雷を含め、12門の魚雷を塔載して
いる。尚、酸素魚雷は未だ開発途上のため塔載されていない。
ここでは次発装填装置の搭載は正式には決定していない。というのも、秘密兵器であ
るこの装置を、公式の場である胃国競争試作で英米に曝け出すわけにはいかない。
そこで、胃国が第三者と戦争状態に突入した場合に限り、他国へ譲渡しないという条
件の下、次発装填装置を付与するという事を水面下で取り決めた。
本案は、胃国が航空機に対する関心が高いことを受け、特に対空化を施した改良案も
提示するものである。
前部第一砲塔と後部第三砲塔及び、第二魚雷発射管を撤去し、13mm連装機銃4基を新
たに増設するものである。この場合、撤去して出来た余剰スペースに兵員室を設けて居
住環境の改善、爆雷の塔載数の増加などが見込める。
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