アメリカ海軍発令 平甲板型駆逐艦改装案 「航洋型小型高速貨客船」案
Blockade-Runner


ばななぼぉと



諸元

常備排水量 : 1,160t
全長    : 95.8m
水線幅   : 9.4m
主機    : パーソンズ式AGST/2軸
主缶    : ノルマン式水管缶(重油専焼)4基
出力    : 27,000馬力
速力    : 35.0ノット
燃料搭載量 : 重油250トン
航続力   : 20kt/2,750浬
兵装    : 無し
貨物搭載量 : 100t程度
乗客数   : 50名程度



 民間放出用、完全非武装輸送船への改装案です。
 基本コンセプトは「ブロケードランナー」、封鎖突破船・・・・つまりは密輸船です。はい。
 え?軍を相手に密輸船を作っちゃまずいだろうって?
 大丈夫です。表向きは表題の通り「航洋型小型高速貨客船」としてありますから。
 帆船時代のティークリッパーや、生鮮食料品など・・・・、高速での運搬が要求されるが量は少ない――ただし航空機で輸送できるほど軽い訳でもない――貨物の輸送。こうした需要に応えるのが、「航洋型小型高速貨客船」の表看板です。
 そんな小口輸送で採算が取れるのかって?う〜ん、かなり厳しいと思いますよ。でもこれは「表看板」ですから、そんなに気にしなくて大丈夫です。
 さて、では真の目的は一体なんでしょうか?

 実はこの試案は、複数の中小造船企業の連合体が提出したものです。
 もちろん前述の表看板である「航洋型小型高速貨客船」を、真剣に提案した 企業もありますが、この中小造船企業連合体には、数多くの「ダミー会社」が参加しています。彼らダミー会社の真の目的は別にある事が明白ですね。
 では、こうしたダミー会社の黒幕と、その目的を後述していきましょう。


@ 黒幕:マフィア
  目的:密輸船取得

 なんと言うか、とてもわかり易い目的です(笑)
 非武装とは言え、航洋型としては最速の部類に属する駆逐艦をベースにすれば、これはもう「無敵」に近い密輸船になるでしょう。コーストガードの警備艇なんか、遥か水平線の彼方に置き去りです(笑)


A 黒幕:海軍
  目的:即応予備兵力の確保

 海軍自体も片棒かついでいるんですか?
 いえ、正確には海軍非主流派の極一部、です。
 海軍に好意的なルーズベルト大統領の時代になって、海軍の予算も増額されたとは言え、まだまだ充分とは言い難い状況です。
 いざ戦時には、人員は予備役の招集で増員できるとは言え、それなりの再訓練が必要と考えられます。
 予備役に編入された人員が、駆逐艦ベースの民間船で船員として働いていてくれれば、こうした再訓練の手間はかなり軽減できるのではないでしょうか?
 そう考えた海軍の極一部がダミー会社を設立して、この連合体に参加してきたと思われます。


B 黒幕:政府
  目的:非合法政治工作

 いきなり生臭くなっちゃいました(汗)
 1930年代、アメリカ政府は中南米各国に対して、親米化工作を積極的に仕掛けています。
 工作員を各国に送り込んだり、回収したりするのに、こうした小型高速の航洋型船舶は極めて有用です。
 政府所有船では、こうした非合法活動を行なうにも絶対数の限界があります。それを補うためにも、ダミー会社所有の民間高速船舶は「使える」手段と成り得ます。


C 黒幕:ユダヤ系互助団体
  目的:欧州および世界各国の同族保護

 迫害の対象となりながらも、強い政治力と経済力を持つ団体です。
 時代は1930年代、欧州ではナチス政権の成立も含めて、ユダヤ排斥運動はかなり盛んな時代です。
 アメリカ合衆国のユダヤ系団体が欧州の同族保護のため、彼らを密出国させうる手段を必要としていました。
 そのひとつが・・・・物品ではなく人間を密輸する「ブロケードランナー」、封鎖突破船でした。
 この時代のアメリカ合衆国では、欧州ほどではないにしてもやはり、ユダヤ排斥運動は盛んでした。
 政治力の強いユダヤ団体が働きかけたとしても、政府がこうした「密出国」に表立って手を貸す訳には行きません。
 そのかわり、こうしたダミー会社の民間船舶が「貿易」を行なう事を黙認することになりました。


 それぞれ立場の異なる団体の思惑が、「航洋型小型高速貨客船」と言う案で一致を見ました。
 これが、かれらダミー会社を含む中小造船企業連合体が「航洋型小型高速貨客船」試案を提出した顛末であります。


 さて、最後に改装内容を簡単にまとめておきましょう。

 まずは船倉。船体内の空きスペースに、100t程度の船倉を追加してあります。戦時中は燃料槽を150tも追加できた平甲板型ですから、100t程度の船倉追加は充分可能でしょう。武装撤去によって弾薬庫のスペースも空きましたから、バラスト搭載のスペースを考慮しても、充分なスペースが取れます。
 つぎは客室スペース。武装を全廃し、中央甲板上部に客室を増設してあります。もともと兵装関係の乗員が要らなくなっている訳ですから、詰め込めばもっと総乗員数は増やせるとは思いますけれど・・・・。
 最後にデリック。後部マストを太く、強靭なものに変更して、大型デリックを追加しました。
 ・・・・あ、今やっと気が付きました。改装にあたって、大規模なデリックが増設されているのは、物品/人員の緊急収容のためだった訳ですね(汗)
 「航洋型小型高速貨客船」が表看板にすぎず、「ブロケードランナー」が本質である事を、この大型デリックが物語っています(汗)