アメリカ海軍 敷設艦「クロスビイ」

クロスビイ
「クロスビイ」(改装後:1935年10月)

概要
 1934年2月、アメリカ海軍は大量に建造した平甲板型駆逐艦の改装
を民間の造船各社に通達した。これで海軍に認められれば将来は優先
的に艦艇の発注が受けられる。これが効いた。大規模な企業はライバ
ルに打ち勝つ為、中小規模な企業は自らの生き残りを掛けて参加した
のだった・・・。

 さて、この企画に飛びついたある会社が改装した平甲板型駆逐艦を
見てみよう。この会社、第1時大戦時には小型船舶の建造などでコツ
コツと規模を拡大し、その後の“三年計画”を念頭に設備などの強化
などに努めたが結局軍縮条約により目論見通りとはいかず、戦後の恐
慌で経営状態が悪化していると言う事情があった。
 改装費は海軍持ちで成績が優秀なら海軍の仕事が優先的にもらえる
ようになると言うこの企画はこの会社にとっては起死回生のチャンス
だったのだ。

 まず、改装の方針は海軍の要求にある「将来の小型艦艇開発のため
の研究」に準じて改装を行われることが決定した。(当然の事なのだが)
 主な改装内容は・・・
・機関を新型の試作品に交換(「ファラガット」級の機関の改良型)
・機関室の余ったスペースは燃料タンクに
・艦首をS字型にして付近にフレアーを付ける
・上甲板を改正して乾舷を少し高くする
・艦尾の延長
・重心位置調整の為、船底にバラストキールを装着
・小型のバルジを装着
・上甲板の中央部に新たに機雷庫を設置
・上甲板後部に機雷投下軌条および必要な機材を搭載
などで最終的に敷設艦に改装する予定だった。勿論、他にも改装する
ところがあり例えば、新型ボイラーは2基搭載するがそれに合わせて
煙突の本数を1本にする、などだった。

 以上の事からこの改装では凌波性や復元性の向上を重視されている
事がわかる。また、艦首付近の変更を見ると日本海軍の駆逐艦の影響
を多少は受けているようにも思える。機関は成績如何によっては以後
の海軍艦艇の心臓部の将来に影響を及ぼす事は確実と思われる。
 これらは「将来の小型艦艇開発のための研究」と言う海軍の要求を反
映していると思われていた。

 では何故敷設艦なのか?
 それは設計者が今回の企画では1社が改装する平甲板型は少数だと
判断したからである。
 その考えでいくと性能が均一で数が揃っている事が望ましい第1線
クラスの艦には不向きなのだ。また、実験艦としての機能を特化させ
る事も駆逐艦並の速度を発揮させる為に高価な機関を多く積んで燃料
消費量がが増えてしまうと言うのは限られた予算内では歓迎される事
ではない。一方、敷設艦では第1線クラスの艦ほど性能を他の艦に合わ
せる必要もないし、高速が求められない分高価な機関も少なくて済む
し燃料消費量もその分少ない。どちらにしても新型機関の実用試験は
出来るわけだし巡航時でのデータは十分に取れる。それに戦時でもあ
る程度使えるのだ。
 なお、“駆逐艦並の速度”と言うのは設計者が小型艦艇を駆逐艦だ
と解釈した為である。

 1934年5月、この計画を海軍省に提出、翌月には承認され使用され
る駆逐艦が決定した。艦名は「クロスビイ」(DD-164)で「ウィックス」
級の最終艦だった。
 同年9月、遂に改装が開始された。
 機関室の真上の構造物の撤去から始まる大工事で期間は1年余りの
予定だった。工事は途中で幾つか予定を変更したところもあるが順調
に進み、1935年10月には完了した。

 外観は改装前とは大きく異なり、特に上甲板後部はクレーンとダビ
ット以外には特に何もなくすっきりしていた。ただ、前部は艦首付近
の変更以外にはあまり変わらず特に艦橋には殆ど手を入れていなかっ
た。

 公試の結果、凌波性や復元性は予定通り改装前に比べ大きく向上し
ている事が判り、設計側は大いに喜んだ。機関の方も概ね好調で特に
問題は発見されなかった。それどころか余った機関室のスペースを燃
料タンクにしたのと燃費が向上したのが効いて航続距離が伸びた。
 設計側は十分な結果が出たと満足しているが結局は海軍の評価次第
である・・・。


要目(新造時:1919年)
 基準排水量:1,090t 全長:95.8m 全幅:9.4m 吃水:2.8m
 速力:35.0kt 出力:24,200hp 航続距離20ktで2,500浬(計画値)
 武装:10.2cm単装砲4基、7.6cm単装砲1基、53.3cm魚雷3連装発射管4基

(改装後:1935年)
 基準排水量:1,300t 全長:97.8m 全幅:10.0m 吃水:3.0m
 速力:26.0kt 出力:17,000hp 航続距離:15ktで8,000浬
 武装:10.2cm単装砲2基、機雷200個


コメント
 今まで競作とは距離を置いていたのですが今回は思いきって参加す
る事に決めました。
 実戦では本職である機雷の敷設よりも大西洋か太平洋かわかりませ
んが船団の護衛に使えそうです。太平洋戦争開戦前にアジア艦隊に編
入してフィリピンなどで島々の間に機雷を敷設して日本側に嫌がらせ
すると言う手段もあるような気もしますが・・・。
 時代背景はどこまで事実に近いのかよくわかりませんがそれらしく
書いたつもりです。いや、これは全てに当てはまるかも知れませんね。
 そう言えば改装したのはどこの会社なんでしょうか?(自爆)
 あと気になるのはあの期間内に本当に改装できるのか?と言う点で
す。まあ、そんな事言い出したらキリが無いのでこの辺で止めにしま
しょう。(笑)
 

(2001年6月25日)