日本海軍十三試大攻 三菱 試製「熊山」
(G5M1 Mitsubisi Yu-Zan)


はちみつ熊山



諸元

全長   : 21.94m
全幅   : 35.05m
自重   : 13,000kg
過荷重  : 27,000kg
翼面積  : 148.5u
発動機  : 火星一一型 空冷星型複列14気筒
       離昇出力1,530馬力(公称二速1,380馬力)×4
最高速度 : 467km/h(高度4,100m) (軽荷時)514km/h(高度4,100m)
巡航速度 : 334km/h(高度4,100m) (軽荷時)370km/h(高度4,100m)
航続距離 : 5,500km(攻撃過荷重)
       8,000km(偵察過荷重)
爆装   : 3,000kg(攻撃過荷重)
武装   : 7.7mm機銃×1(前方)
       7.7mm機銃×2(側方)
       7.7mm機銃×1(下方)
       20mm機銃 ×1(上方)
       20mm機銃 ×1(尾部)
乗員   : 10名

(注1)軽荷時外装 : 無し
(注2)攻撃時外装 : 1,500kg航空魚雷/爆弾×2
(注3)偵察時外装 : 無し



 大攻とは数を投入してナンボの存在です。
 そもそも大攻の雷撃方法は、敵艦隊の回避運動なんか『無意味!』な程の雷数で敵艦隊を押し包んじゃえ!って発想――飽和雷撃――な訳ですから、とにかく数が多いに越した事はありません。
 まあ、単機あたりの雷数を飛躍的に増加させて対応、っていうのも考えられなくも無いんですけれど、大攻のお仕事って雷撃だけじゃないんですよね。
 確かに雷撃が主任務には違いないでしょうけれど。
 偵察任務の場合は、多少の機体の大小なんて関係ありません。それよりも単位時間でより大面積を偵察するためにはとにかく数を投入する事です。
 あ、あと速力も速い方が良いですね。単機あたりで見ると、短い時間で一定面積を飛行することができますので。
 つまり『一定面積をクリアにする単機あたりの所用時間』が小さくなることを意味する訳ですね。



   おわかりでしょうか?要求仕様の搭載量と航続距離を満たせるならば、とにかく数を確保できる機体の方が良いんです。
 では、生産性と運用性を最重要設計ポイントに置くことに同意して頂けるでしょうか?



 ええ、この三菱製十三試大攻、試製「熊山」は、生産性を向上させるために爆弾倉まで廃止しちゃいました(爆)
 爆弾倉が無くっても、要求仕様の搭載物は1,500kg爆弾/魚雷が2発なんですから、外装にしてぶら下げたとしても空力抵抗の増加はそれなりに抑え込む事は不可能じゃありません。
 まあ楽観的に見たら、空力抵抗の増加は二割増ぐらいでしょうか。この数値で大雑把に計算すると、速力低下は一割強となります。
 そもそも試製「熊山」は爆弾倉の廃止による小型/軽量化で基礎体力・・・・じゃなくて、基本の速力(最大/巡航)が向上しているので、一割強の速力低下程度なら、充分要求仕様を満たすことができそうです。うわぁい、らっきぃ(笑)
 ・・・・いや、そうじゃなくて(^^;;
 えぇと、爆弾倉を廃止しても要求仕様を満たせそうなことが確認できたので、これによって機体構造を簡略化して生産性向上・・・・生産数増加が見込めることになりました。まあ厳密に言うと、実際の生産数向上には発動機生産数の問題等が絡んでくるので、すぐに劇的なまでの生産数向上が果たせるとは思えません。ですが試製「熊山」は三菱製。搭載発動機の「火星」も三菱製。発動機生産計画の見直しで、生産数向上を図るのは、他社発動機を使っている場合よりははるかに容易ですね。初動に多少の時間はかかるでしょうが、生産数向上は約束されたも同然です(笑)
 爆弾倉廃止の効果は運用性にも現れています。
 通常の、爆弾倉をもつ大攻ならば、偵察距離での運用には、爆弾倉内に燃料槽を増設して航続距離を延ばすことになります。
 ・・・・面倒くさいし、増槽が必要なんて不経済ですよね。つまり運用性の低下。
 試製「熊山」なら、そんな面倒は一切不要です。
 爆弾倉を廃止した効果で、胴体内に大容量燃料槽が設置できました。これと翼内燃料槽の燃料容量を合わせると、機内燃料だけで楽々偵察距離を飛行することができます。
 ええ、増槽設置は一切不要です。しかも偵察飛行時なら、空力抵抗を増加させる機外搭載物は基本的に不要。したがって速力低下も無し。速力が速いことは、単機あたりの一定面積偵察時間が短縮可能なことを意味します。
 試製「熊山」が生産数向上を図った機体は前述しました。
 つまり偵察任務への投入数増加と、速力向上による、索敵によって『一定面積をクリアにする単機あたりの所用時間』が短縮できることで、試製「熊山」は高い偵察能力を秘めていることになります。



 爆弾倉廃止の効果のお話はこれぐらいにして、機体の説明をしておきましょう。
 試製「熊山」はおなじ三菱製の十二試陸攻とは異なり、軽度ながら防弾装備となっています。主翼は二本桁応力外皮構造で、燃料槽は外側ゴム被覆のものを収納しています。さらに燃料槽への炭酸ガス注入装置と、一応の消火を備えています。
 たしかに防弾無視のインテグラルタンクに比べれば、単位容積あたりの燃料容量に劣りますが、試製「熊山」は大容量の胴体内燃料槽を装備していることですし、多少の燃料容量低下は問題ありません。それならば多少は防弾装備に気を使っても良いでしょう。
 まあ、防弾と言ってもやり過ぎは重量増、基本性能の低下に繋がります。
 今回の要求仕様の最大速力を考慮すると、敵戦闘機が大攻に会敵できる可能性は、精々一回、よくても二回。一会敵あたりの攻撃可能回数は、速力差から考慮して精々一回。
 つまり精々一回、余裕を見込んで二回の被弾に耐えるだけの防弾を備えていれば、一応合格でしょう。
 え?艦隊の対空砲火ですか?
 えぇと、大攻の雷撃は1,500kg魚雷による、遠距離調定飽和雷撃。対空砲はともかくとしても、対空機銃の有効射程の外からの雷撃を想定したものです。
 対空砲相手の場合、「まとも」に対策を施そうとすれば、とんでもない重装甲が必要になりそうですし、「ある程度」で目をつむるのであれば、前述の「精々一回」の対弾性能でも、それなりの効果は発揮できるでしょう。
 雷撃以外の場合・・・・爆撃の場合ですが、大攻の爆撃は敵飛行場の破壊が主目的です。この場合、水平爆撃と言うことになります。被弾率は上昇するでしょうね(怖)
 ただ、これに充分な対策を施すと、前述同様大幅重量増の結末が見えるので(怖)、やはり「ある程度」で我慢しておきましょう(汗)



 次は操縦系のお話。大攻に必要なのは「運動性」よりも「操縦応答性」です。
爆撃にしろ、「多数の大攻による同時調定雷撃」にしろ、さほど運動性を必要とするものではありません。むしろ編隊を維持するための「操縦性」のほうが重要です。
 試製「熊山」では、十二試陸攻で採用した「小翼弦長舵面」を採用しています。舵面を小さくすることで、より小さな操舵力に対する応答性を高めようと知る発想ですが、十二試陸攻の場合はこの結果、双発機としてはかなり高い運動性をも手に入れています。
 試製「熊山」の場合も十二試大攻ほどではありませんが、四発機としては良好な運動性を保持しています。爆弾倉を廃止して機体を小型/軽量化した結果、翼面荷重がかなり低くなりました。これによって運動性と離着陸性能、低空低速時・・・・つまり雷撃時の比較的良好な運動性と安定性を手に入れたのです。
 試製「熊山」は、他にもフラップ/着陸装置の電動化などの設計方針を、十二試陸攻から継承しています。



 最後に爆弾外装の効果について。
 爆弾を外装にすると言うことは、装備する爆弾の大きさ/種類が爆弾倉のサイズに制限されないことを意味します。
 つまり多彩な爆装パターンを可能にする訳ですね。
 まあ、小型爆弾多数、等と言う場合は空力抵抗の増大が著しく、大きく速力低下してしまうので、航空優勢が確保できているのでなければあまりお勧めできませんけれど。
 対空砲火が貧弱な輸送船団攻撃などの場合には、800kg航空魚雷多数を装備して肉迫雷撃も良いかもしれません。
 ・・・・燃料搭載量を減らせば、爆装もかなり増やせるでしょうし。ただ、機体構造強度の許す範囲内でしょうけれど。
 ああ、機体構造強度で思い出したことがありました。爆弾倉を廃止したことで、燃料満載と爆装は、重量面以外では互いに干渉しないことになります。
 通常の、爆弾倉を持つ大攻だと、偵察飛行時は爆弾倉内に増槽を装備して航続距離を延伸することになりますので、爆装/雷装と干渉しちゃうんですね。
 爆弾倉を持たない試製「熊山」なら、満載の偵察燃料と爆装を同時に搭載ことができます。まあ、機体構造強度面ではかなり辛い面があるでしょうけれど・・・・(汗)
 ちなみに1,500kg魚雷2本搭載で簡単な試算をしたところ、速力(最大/巡航)は攻撃過荷重時と殆ど変化無く、燃料満載でおよそ7,200kmが飛行可能、との結果が出ました(汗)


 攻撃兵装で約2,000浬近い行動半径を持つ大攻・・・・とても「す的」です(泣)