川崎4式司令部偵察機(キ96)


川崎4式司令部偵察機(ハ140)





川崎4式司令部偵察機(ハ45)





諸元(ハ140搭載機)

全長   : 14.07m
全幅   : 16.50m
自重   : 6,500kg
全備重量 : 9,000kg
発動機  : 川崎ハ140
       液冷倒立V型12気筒、離昇出力1,500馬力×3
最高速度 : 706.3km/h
航続距離 : 4,000km
武装   : 7.7mm旋回機銃×1(後席)
乗員   : 2名



諸元(ハ45搭載機)

全長   : 13.82m
全幅   : 16.50m
自重   : 6,500kg
全備重量 : 9,000kg
発動機  : 中島ハ45-11
       空冷星型複列18気筒、離昇出力1,800馬力×3
最高速度 : 701.6km/h
航続距離 : 4,000km
武装   : 7.7mm旋回機銃×1(後席)
乗員   : 2名



諸元(ハ112-2搭載機)

全長   : 13.82m
全幅   : 16.50m
自重   : 6,000kg
全備重量 : 8,500kg
発動機  : 三菱ハ112-2
       空冷星型複列14気筒、離昇出力1,500馬力×3
最高速度 : 683.5km/h
航続距離 : 4,000km
武装   : 7.7mm旋回機銃×1(後席)
乗員   : 2名




 百式司偵後継機に求められた最高速度は700km/h。
 例え空気抵抗の小さい高高度に持ち込んだとしても、相当な出力を発揮しなければ達成できない性能であることは明白だった。
 これに対し川崎航空機は単純な解決策を提示した。3発機である。

 川崎は99式双発軽爆撃機をベースとして2式複座戦闘機を作り上げた実績がある。
 このシリーズをベースとして、機首にも発動機を備えれば、それほど空力損失を増すことなく、出力を増強できると判断したがゆえの、3発機案の提示であった。

 勿論、そのまま安易に機首に発動機を追加するのではない。安易に発動機を追加すれば、機首と両翼のプロペラの作り出す後流が干渉しあってしまうことが想像される。
 よって川崎では主翼面積拡大も兼ねて――またアスペクト比改善も兼ねて――内翼部を延長する事にした。両翼の発動機を機体から離す事で、プロペラ後流の干渉を解決できる、と判断した結果の設計である。

 問題となったのは使用発動機である。
 直接的なベースとも言えるキ45改(2式複戦)では1000馬力級双発だったが、これを単純に機首に同規模発動機を加えた3発機としても、機体重量の増加、サイズ拡大、プロペラ後流等の効率低下等から、さほどの性能向上は期待できない、との計算結果が提出されていた。

 この問題の解決に必要なのは、空気抵抗の低減、そしてより強力な発動機である。
 川崎は自社で生産しているハ40、もしくはその強化型であるハ140を使う事で要求性能のクリアが期待できると判断していた。
 ハ40は液冷発動機であり、機首やナセルも含め、全般的な空力洗練を突き詰めれば、同出力の空冷機以上の速度性能発揮が可能と考えたのである。

 陸軍はこの計画に対し、一つの条件と引き換えにキ96の番号を与え、実機を発注した。

 ひとつの条件。空冷発動機を使用する機体を同時に設計、製作すること。

 既に実用化の目処が立ち始めている、期待の高速新型戦闘機キ61が発動機としてハ40を採用している。例え高額貴重で有る事を許容されている司令部偵察機であっても、同発動機を3つも使うことは、キ61の生産や取得に影響を与えかねない。
 また液冷発動機の取り扱いは、95式戦闘機の時にもすでに問題が存在することが明らかになっており、ましてや3発機では、整備等での問題が生じる可能性も高い。液冷発動機の取得にも、稼動面でも懸念がある以上、なんらかの安全策を講じる必要性があった。

 これはすなわち、他の代替発動機を検討しておけということを意味していたのである。

 川崎としては、自社で生産するハ40シリーズの採用が最善ではあるが、機体採用そのものがなくなってしまっては元も子もない。
 実機の発注と引き換えに、この要求に応じざるを得なかった。

 川崎は液冷機の開発を主軸として、その空冷発動機換装型を同時開発するという形でこの要求に対応することになった。
 空冷化を実施した場合に生じる諸問題の検討を行った結果、若干の軽量化が可能であるが、正面投影面積の増大から空気抵抗が増加することが判明し、空冷化には、液冷に比し2割増の出力が望ましいという結論に至った。

 計算上、本命であるハ140搭載機は要求性能をクリア出来る見込みが立ったのだが、ハ140にたいして2割以上の出力増の空冷発動機となると、中島が完成させたばかりのハ45しか要求を満たせる発動機は見当たらなかった。
 ハ45は軽量コンパクトな空冷発動機で、機首に搭載するにも、組み込みは比較的容易なことが判明した。
 また液冷用に細くデザインされたナセルにも、工夫次第ではかえって空気抵抗を軽減した形でハ45を搭載できる可能性が示唆された。
 このことから、ハ45搭載空冷機案も充分に要求性能を満たしうる可能性が期待できた。

 結局発動機の手配の関係で、先に初飛行を遂げたのは、空冷の試作弐号機の方である。試験飛行では高度6,000mで700km/h前後を発揮し、関係者を喜ばせた。
 実戦装備では試験飛行並の速度は出せないと思われるが、一応は速度要求を達成したと言えるだろう。

 空冷機初飛行の2週間後、本命である、液冷の試作初号機が初飛行した。
 試作エンジンであるハ140を搭載した本機は弐号機を上回る速度を発揮した。
 このことは川崎関係者を喜ばせると同時に、ひとつの問題点を明らかにすることとなった。
 当初弐号機でクリアできたと思われていた、空冷発動機への換装に伴う空力悪化が予想以上のものであった事を証明してしまったのである。
 これは、キ96開発陣は問題点の洗い出しと解決策に勤しむきっかけともなった。

 いくつかの問題点はあったが、こうして川崎の送り出した二種類の司令部偵察機はどちらも採用され、それぞれ、キ96-1とキ96-2として併用される事が決定した。

 だが実戦配備が始まると、どちらも当初から懸念されていた問題点が浮き彫りになってくる。
 キ96-1は発動機の生産が進まず、キ96-2は発動機の性能不安と故障が多発し、まともに動くなら高性能だが実態としては『兵器としての確実性に欠ける』結果となってしまったのである。

 ハ140の生産問題は更に、同発動機を採用するキ61と共に、首無しのキ96-1が工場を埋め尽くすという情ない事態を引き起こした。
 機体そのもののポテンシャルは決して低くはないキ96である。これを実戦力化できないことは――川崎航空機にとっては経済的にも――明らかな損失である。
 そこで急遽、信頼性の高い空冷発動機であるハ112-2を応急的に搭載した、キ96-3が登場することになった。(生産数の一部はハ45搭載のキ96-2から改装されたものも含まれる)
 尚、このキ96-3に排気タービン式過給器を備えたキ96-4と称する機体も同時開発されている。
 ただし、乱流を推力式排気管で吹き飛ばす事で誤魔化している3型以前の機体に対し、排気タービン式過給器を備える4型には、高高度性能以外には目立った改善点は無かったとも言われる。高高度飛行による空気抵抗の減少も、推力式排気管による推進効果が失われたことで帳消しになってしまったためと考えられる。




★:どうも、お久しぶりです、解説担当の天野美汐です(ぺこり)
☆:天然ボケ役の倉田佐祐理お姉さんですーっ
S:えっと、今回は結構真面目に考えてます
★:3発機ですね、かなり珍しい形態ではないでしょうか
S:でもね、このちょっと前だと
  フォードのトライモータとか、ユンカースのタンテとか、所謂ベストセラー機で使われていたんだよ
☆:でもWW2の作戦機となるとイタリアのサボイア・マルケッティぐらいですよねーっ
S:うん、結局3発は思ったより効率が良く無いんだね
  ジェットならともかく、ペラだと後流干渉の問題があるんだね
★:今回、あえてその妙なスタイルを選択した理由は?
S:まずは要求性能が700km/hだった事だ
  これは採用されたばかりの100式司令部偵察機が600km/hぐらいであることから見てもかなり大変だね
  単純に考えれば1.6倍ぐらいのパワーが無いと駄目なわけだ
  っていうか、この速度は一部の飛行機の急降下制限速度なみだから機体の強度もそれなりに欲しい
  たぶん1.8倍ぐらいのパワーが無いと成立しないね、そしてそんなエンジンは何処に有るだろう?
☆:うーん、100式司令部偵察機が確か1000馬力ぐらいでしたよね
★:単純計算では1500〜2000馬力級が有れば成立しますが、そんなエンジンは少ないと
S:無いわけじゃない、でもその多くは結構大きいエンジンだから空気抵抗も増えちゃう
  重量の増加もあるしね、つまり結構難しいんだ
☆:だからキ45改を元に3発化すると・・・・?
S:3発化に伴う重量増加、それに主翼も大きくなって空気抵抗も増えるし
  当然だけどエンジンが多いから燃料も沢山使う、たぶんコストも高い
  だけど、単純に1.5倍の馬力が入手出来るというのは魅力的だ
  川崎の場合は自前で発動機も作ってるでしょ
  一般に戦闘機程度では発動機と機体の価格が大体同じぐらいだそうだから
★:戦闘機一機作るより儲かりますね
S:つまり営業的にも魅力的なわけだ
  司令部偵察機はかなり特殊な位置付けの機体だからゴージャス豪華でも許容されるしね

★:3発化することで馬力問題をクリアしてしまうのは判りますが
  空冷発動機版を平行して開発するのですか?
S:これは取得とか運用で絶対に懸念されると思うからだね
  液冷発動機の問題は95戦の時に既にあったんだから、懸念が合っても不思議じゃない
  特に多発機だし、長距離を高速で飛び、ある意味代替の効かない司偵では問題だろう
☆:だから保険としてハ45採用モデルを用意するとっ
★:かえって傷口広げてますよね
S:まあ、それは有るんだけどね
  でも、あの時点にあった判断材料で言うなら他の選択肢は無いんだよ
  しかもちゃんと制式作用されたエンジンだから
  まだ試験を通ってないハ140よりある意味安心とも言える
  ハ45(誉)が駄目っていうのは完全に後知恵だろうね




企画    : SUDO&巣田
設定    : SUDO   
解説    : SUDO   
画像    : 巣田     
性能推算  : 巣田