![]() 側面図(クリックすると三面図 640x960 14.5Kbyte) 緒元
解説 川崎キ-623 昭和十六年(1940)五月の新型型司令部偵察機要求仕様を受けて川崎で試作された双発複座機。700Km/h という突拍子もない要求性能達成のため様々な可能性が模索されたが、結局ロッキード P-38(初飛行 1939 年 1 月)の影響を受けて液冷双発のビーム型双胴機となった。ただし寸法は P-38 より一回り大きく、九九式双軽やデハビランド・モスキートに近い。搭載エンジンには川崎で開発中のハ-140(1500hp)が予定されていたが、試作機は暫定的にハ-40(1100hp)を搭載して製作することになった。 主翼は川崎が得意とする二本桁方式で、アスペクト比の高い薄翼である。二基のハ-40 エンジンは P-38 と異なり左右とも右回転共通であり、エンジンマウントは キ-61 とほぼ同じ(一部パーツ流用)応力外皮支持架式。ナセル左側には過給器吸入口が、右側にはオイルクーラーが設けられている。ラジエターは内翼中央部に格納され主翼前縁下部のインテイクから吸気、内翼部フラップ直前の主翼下面から排気する方式が採られた。 外翼部には左右合わせて8箇所の燃料タンクがあり、中央胴体タンクと合わせて容量 2000l の容量を実現していた。ただし、これらのタンクに耐弾処理は施されていない。増槽を装備しない場合巡航速度 450Km/h で燃料消費量 400l/h、行動時間 5 時間・航続距離 2250Km である。目標の 4000Km は 600l 増槽を外翼部に二本+中央胴体下に一本を搭載すれば達成できる見込みだった。 主脚は単支柱式で左右胴体ナセルへの後方引き込み方式(油圧作動)、胴体尾端にはそれぞれ尾輪が設けられた為合計四輪式となっている。尾輪は主脚と連動し油圧で前方に引き込む方式であった。 中央胴体は長さ 6.4m 幅 80cm、操縦席と偵察席は接近しており連絡はよいが無線機・カメラ・機銃などを詰め込んだ後席はいささか狭苦しい。また、後席からの視界は主翼と左右エンジンに遮られて良好とは言えない。操縦席はかなり前方に突出しており、背の高い三点姿勢でここに乗り込むには「ちょっとした軽業」が必要とされた。後部風防は横に回転して引き込むタイプで、98 式 7.92mm 旋回機銃が装備されている。 ![]() 儀装要領図(2.5Kbyte) 試作一号機は昭和十八年(1943)八月に完成。試験飛行の結果心配された操縦性・安定性には問題が出なかったものの、最高速度は目標を大きく下回る 620Km/h にとどまった。もっともこれは設計当初から予測されていた事であったが、換装を予定していた期待の新型発動機ハ-140 開発が難航していたのは予想外の出来事であった。 この頃やっと試作品が完成したハ-140 は早速キ-61-II 型試作機に搭載されたがトラブルの連続で安定稼動にはほど遠く、とても新型司偵に使える状態では無かったのである。ハ-40 でさえ前線からは故障や不調の報告が相次ぎ、工場から出たハ-40 は片っ端から三式戦の生産や予備交換品として前線に送られる有様だった。 司令部偵察機は部品の不足しがちな僻地の基地から出撃して、敵地奥深く潜入しかつ生還しなければ任務は勤まらない。前線での悪評高いハ-40 発動機を二基も搭載した機体が司偵に適しているはずがなく、まして輪をかけて不安定なハ-140 など論外であった。かくしてユニークな「和製ライトニング」キ-623 は陽の目を見ることなく不採用の闇へ消えて行ったのである。 作者からのコメント 一度やってみたかった「和製ライトニング」ですが、むしろイタリアのサボイア・マルケッティ SM.91 に似ているかも知れません。P-38 の派生偵察型 F-4/F-5 は勿論ヒューズ XF-11、ノースロップ F-15(P-61 の偵察型)、ドイツの空飛ぶ目玉 Fw189 など意外とこの形態の偵察機は多いのです。しかし中央胴体に乗員二人とカメラ・機銃・酸素や燃料タンクをコンパクトに収めるのは意外に難しく、この部分のデザインにはてこずらされました。 ハ-40 の燃費データは飛燕のスペックから逆算しましたが一基あたり約 200l/h、ほぼ同馬力のハ-102 が 150l/h 未満(キ-46-II のデータから逆算)なのに比べるとだいぶ悪いようですね(;_;)。燃料タンク容積を稼ぐためと複座の中央胴体を支えるため、偵察専用機の割に大柄な機体になってしまいました。しかし 2000l 燃料満載+600l 増槽三本装備したらさしずめ空飛ぶガソリンタンクの様相で、離陸でコケたら命はないでしょうね(^^;)。 最高速度は要求を遠く下回る値に設定していますが、本当は 600Km/h にも届かないんじゃないかと思っています(笑)。ハ-40 を搭載したキ-61 試作機が 591Km/h、1550hp にチューンアップした DB601A 搭載の速度研究機キ-78(研三)ですら 699Km/h にとどまった事を考えると、4000Km の航続距離を持った機体が ハ-40 双発で 700Km/h を達成するのはどう足掻いても無理でしょう。それでもハ-140 を積めば 650Km/h オーバーは狙えると思うのですが、史実のキ-61-II が辿った運命を思うと…ねぇ。 文・画とも Copyright by Y.Sasaki 2001 9/18 |