神崎川航空一号 社内名称「鴎」
諸元 1941年12月時点
全長 ・・・10.05m
全幅 ・・・13.75m
全備重量 ・・・4,299kg(非武装)
自重 ・・・2,499kg
燃料 ・・・1800(L)+機外落下式増加タンク400(L)3本
発動機 ・・・ハ−41、ハ−109に改修予定
出力 ・・・1,250hp2基(ハ−41)
最大速力 ・・・660q/h(高度6,000m・非武装・ハ−41使用)
航続距離 ・・・2,800km(ハ−41使用)4,400km(増加タンク・ハ−41使用)
実用上昇限度・・・14,000m(非武装・加速用噴進装置使用・予想)
武装 ・・・非武装又はダミー又は7.7mm後方”固定”機関銃1門60発装填
乗員 ・・・1名
その他装備 ・・・水メタノール噴射器、加速用噴進装置、3段可変プロペラピッチ、
稼動部及び吸気口電熱器、ロボット社自動撮影装置、純酸素ボンベ、
自動操縦装置、リクライニングシート、電熱服、火薬式防風破壊装置、
緊急用カメラ投下機構。
制限事項 ・・・急降下時引き起こし制限、緊急推力10分制限、落下式加速用噴進装置
18秒(1本+2本)
中島、三菱等の巨大航空機企業が存在する中へ、新規参入した神崎川航空は
海軍、陸軍共にあまり信用されず両社の下請けを細々としているだけであった。
元々副業で始められた、神崎川航空に転機が訪れたのは1939年留学と言う
名の外遊を過ごして来た御曹司の雪之丞が帰国した事に始まる。
彼は、鉤十字が靡くドイツにて道楽の一つで有るグライダーにウツツを抜かし
ソレを知った彼の親が帰国命令を発した為に渋々戻ってきたのだ。
実家に帰り他人の下請けをしている現状を知った彼は、玩具を取り上げられた
子供がヤツ当りをするように番頭を怒鳴りつけ、単身陸軍省へと仕事の御用聞き
に向かった。
陸軍としても度々やってくる彼に対して、国内航空機産業の育成に力を注いで
いる建前上、第14回競争試作要求仕様書を手渡した。彼らにとっては弱小のメー
カで有り一つで有り、例え失敗したとしても蚊にさされたぐらいの影響でしかな
いのだから気楽なモノであった。
さて、開発の最大の問題は最高速度700kmと言う難関で有る。
現在使える発動機はハ−41と火星ぐらいしか大馬力のエンジンは無い。将来
の二千馬力級発動機も実際に生産ラインに乗るのも何時の事になるか判らない。
だとすると、空気抵抗の削減、重量の削減により速度を稼ぐしか方法が無いであ
ろうと、神崎川航空で考えた。
取りあえず「現状で利用可能なエンジンでは無理でした。2000馬力級の
エンジンに期待します。」と頭を掻いて謝っておけば当面は大丈夫であろう。な
にせ、陸軍は一銭の金も出していないし、弱小航空機メーカの1社や2社が失敗
しても、それ以上文句は出ないだろうが、現状機よりも遅いならば面子は立たない。
何を優先させるべきか?
司令部偵察機は敵勢力圏内で隠密に、もし敵に見つかっても帰還出来る性能を
持たせなければならない。
ならば、敵機の来ない高々度を新入し、さっさと帰還するのがベストでは無い
がベターであろうか?
優先順位は高度、速度、火力として開発する事になる。
発動機は鍾馗に使われた馬力は減るがコンパクトなハ−41を利用する事に決
定し、高々度を飛行するには喘ぐようなエンジンに頼るのではなく、薄い空気を
掴むように乗る機体を開発する事にした。
重量が増加する要因は、武装、燃料、そして人間。割り切って目的だけに邁進
すればなんとか成るのではと思われる。
機体設計は、試行錯誤と独善により急ピッチで進められ、41年9月上旬に最
終案が完成。モックアップを公開したのは開戦直前の10月。僅か4月程でココ
まで出来上がったのは、弱小企業で有るが故、陸軍からの横槍が全く無かった為
で有ったが、ある意味全く期待されていないと言う一抹の寂しさを社員達は感じ
ていた。
開発の速度にも驚いた陸軍はその異様ともいえる機体に仰け反った。
妙に小さく短く平べったい胴体に、巨大な四枚のプロペラを持つ双発エンジン
から伸びる長い尻尾。床へと向かって緩やかに伸びる長い主翼。そして圧巻は後
方は全く見えず、どうやって撃てば良いか判らない”固定”機関銃が一つ寂しく
佇んでいた。
罵声が上がる中、一つ一つ丁寧に応対した『ドイツ帰り』の技師の言葉に彼等
は魅力的な可能性を見つけた。
「誰よりも高く飛べるのですよ。」
取りあえず自主開発の名の元に試作機を作る事に決定した。勿論資金は神崎川
航空持ちに決まっている。
1941年12月、太平洋に昇り輝く皇国のような朝日を受けて銀色に輝く
三姉妹が、大阪陸軍大正飛行場に揃った。
最もジュラルミン剥き出しの機体は、そんな視覚的効果を得る為では無く、単
に塗料の重量を減らした為で有った。
風防は上部後方まで伸ばされ上部後方視界を確保し、さらにカエサルは上面に
バックミラーを装着し、複雑極まりない遠隔後部機銃を操作出来る様になってい
た為、重量が他の2機に比べて300kgも増えていた。
・神崎川航空一号a(アントン)非武装
・神崎川航空一号b(ベルダ)非武装ダミー機銃
・神崎川航空一号c(カエサル)7.7mm後方旋回機銃1門、ドラムマガジン1(60発)
幾度となく飛行を繰り返されたが、高度6000mでの最高速度は残念ながら660km/h
であり、カエサルに至っては全力試験を行う前に着陸失敗大破廃棄されてしまった。
結果を元に陸軍は神崎川航空の試作機を停止を指示、実験機として2機を買い上げ
量産はの道を絶たれてしまった。
たった3機だけ社内生産された彼女達3姉妹の生き残り2機は、ハ−109に改装され
た上、緊急加速用ロケットを装備し、成層圏からの目として確実に情報を持ち帰る事を続
けていたが、その敵情報を解析する組織も敵を叩く兵力も無い日本軍は太平洋戦争に敗北
した。
基地上空を警戒に当っていた米軍機を悉く振り切った偵察機を調べようとした進駐軍
は、彼女の本当の性能を知る事は無かった。敗戦直後に2機とも完膚無き迄に破壊され
海に捨てられていたのだ。
彼女達は決して不幸では無かった筈だ。
成層圏でB29の偵察型F13を至近距離から撮影し、神々の領域を舞う姿は戦後米国
搭乗員に「機関銃が有っても発砲せず、ただ眺めていただろう」と言わしめた。
人間が血生臭い戦いを続ける間、彼女達は
誰も殺さず。
誰も死なず。
ただ悠々と蒼穹の成層圏を舞い続けたのだから・・・。
(作者のコメント)
殆ど1941年当時、日本で実用化されている機構で揃えましたが、加速用噴進装
置とロボット社自動撮影装置は果たして製作できたかは疑問です。しかしながら、車
のオプション装備のような感じで良いかな?と。(w
難しいですねぇ。エンジンが貧弱なのに速度700km以上とは。小型の二千馬力
級発動機が無いので用途を高々度戦略偵察のみと限定し、目標速度は1回だけの短時
間のみ。
グライダーの様に風に乗り、緊急事態にはロケット噴射で一気に加速。それが最
初に思いついたスペックです。
本機の運用方法として、中高度で巡航し目標近くなるとゆっくりと高々度まで上昇
し写真撮影。もし、迎撃を受けたら補助ロケットにより急速上昇した後、十分間の緊
急出力による高速離脱。何分もかけて最高速度に持って行くより一瞬にして引き離し
た方がいいかと思いました。待ち伏せを受けない限り、十分も緊急推力を使えれば
高々度を逃げ切れると思います。戦闘機が軽快であるにしても、機関銃や防弾板は
重いですし、何時迄も全力飛行を続けられると思いますから・・・しかし、実際には
上手く逃げ切れるかは判りません。
偵察員減らして自動照準のカメラを積み重量と酸素を減らし、後方機銃もダミーで
銃身が点滅するだけ(w)、塗料も無くせば約20kgの軽減。燃料タンクの防弾は
胴体、双胴に各2つ有り、敵基地上空付近で戦闘をすると考えるので搭載燃料の半分
ぐらい消費しているであろうからその内前方のタンクのみが対12.7mm弾装甲と
します。装甲が有るのは後面と下方のみ。しかし貫徹力の有るブローニング50口径
では簡単に撃ち抜かれそう・・・取り外した方がいいかな?防弾板。
酸素ボンベは空気が薄くなった時に乗員に供給し、非常時にはエンジンにも供給で
きるようにする・・・混合比難しいでしょうね。(w
乗員一人だから空技廠で開発している銀河の自動操縦装置を取ってきて・・・最高
速度は出来るだけ。加速力を求めるには4枚より8枚のプロペラの方が良かったかも。
引き込み脚は一番の欠点じゃないでしょうか。双同に取り付けられていますが、脚
の間隔が狭いのと、短いので3点着陸しないと折れるか地面にペラを叩きそうですねぇ。
陸軍から嫌がられるでしょう。グライダーのように風に乗りやすいのが、失速速度を低
下させていると思いますが。。。
単発機に無い前方視界の良さは離着陸の時に有利になるでしょうが、キャノピーが大
きく曲面を描いているので、日本の加工能力の低さから、夜間飛行中は反射して見づら
いかも、又パイロットが一人で開閉は出来ないでしょう。整備員が数人掛かりで、添え
つけます。
火薬式防風破壊装置は気休め程度。高速で飛行中はキャノピーが風圧で開かないでしょ
うから付けましたが、背面飛行しないと落下傘降下は失敗しますねぇ・・・多分。
空気抵抗の元になる突出部分を極力排除しましたが、はたして放熱は大丈夫かと心配
になってきます。
こうして考えて見ると、欠陥が多いかも(汗
先っぽに出ているのはピート管です。方位探知機のアンテナはコックピット内の計器盤
の前に有ります。
絶対量産に向かないでしょうね。
見ての通り、繋ぎ目が殆ど無い一体加工。
きっと費用も工数も相当になるでしょう。生産ラインと言うより戦略偵察機だから戦闘
機や爆撃機に比べて発注が少ないだろうと高性能を目指して職人、技手が一つ一つ手作業
で仕上げていく工場制手工業。
費用がかかる理由の一つが、ロボット社のカメラ。
非常に高価なロイヤリティーを払う必要が有るでしょう。一応日本でも一号自動航空写
真機が有りますが、趣味でロボット社の製品を使う事にしました(w
最後に、百式司偵よりも軽量化した為、ハ−41でも660km/hが出ると思います
が、ハ−109に改装した後はどれ位速度が向上したか想像出来ませんでしたので、単に
”迎撃されても振り切った”と言うことにしました。
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