九品仏大志
「 同志・広重、初投稿にしては、なかなかの作品だ。流石は我輩が見込んだ漢。よしっ、貴様を『駆け出し架空艦設計主任』に認定しよう!!」
能登広重
「 ……… 」
大志「 どうした、My兄弟。何浮かぬ顔をしておる。悩みがあるのなら、我輩の胸に来るがよい!! 」
能登「 …普通、相方は♀だろ、 …何で貴様なんだ??? 」
大志「 何を言っているのだ、まい・はにぃ。貴様が我輩を『抱(だ)こう』と言うから、こうして一肌も二肌も… 」
能登「 だあぁっ、『だく』じゃねぇ、『いだく』だ『抱く』!! 手前相手に上にも下にもなる気はねぇ!! 」
チ〜〜〜ン(大変お見苦しい場面を放送致しました。もう暫らくお待ち下さい)
大志「 うむ、それでは今回の競作に対する考察を始めようではないか。
今回は『蘭印海域における沿岸警備艇』が主題であったな。
しかし同志・広重、今回の試案は、あまりに特色が無いのではないか?
高速性能もなく、外洋にも出られず、量産を考慮した木造船体でも、粗悪油を使える焼玉機関でもない。
武装も無ければ、航続能力も無い。何も無いのが特徴とするには、あまりに面白くないぞ。 」
能登「 そうなんだ。
概略と罠は、掲示板でSUDOさんが触れられているので割愛するが、条件を見なおして欲しい。
@ 警備任務(治安維持) → 敵は、小艦艇?小型潜水艦?とれとも反日ゲリラ?
A 船型の制限 → 河用砲艇(25t)〜駆潜艇(450t)のギャップ
B 陸海軍で扱う汎用性 → 海軍の欲しいもの、陸軍の足りないもの、
求められているのは、戦闘性能ではない。
ここでは、条件にある『警備』の意味をどのように捉えるかが分かれ道になるんだろうね。 」
大志「 まずは海軍における砲艇の地位について語ってもらおう。
普通に考え付くのは、機帆船型か魚雷艇型ではないのか。
特に『駆潜特務艇』は200隻もの量産に成功した傑作だぞ。
魚雷艇についても、開戦直前から94式空冷発動機を準備しておけば問題あるまい。
双方共に木造船体で鉄鋼の節約にも繋がるであろうに。 」
能登「 確かに、この砲艇は『駆潜特務艇』で代替できるものだ。
が、『駆潜特務艇』はあくまでも駆潜艇で、艇隊を組んで対潜掃討を主眼においている。
外洋航行能力を捨てきれないから、
これは凌波性を意識したシアの強い鰹鮪漁船型にならざるを得ないんだ。
そして、これらは一線で使うものなんだ。
蘭印だとマラッカ、スンダ、ロンボグの回廊で警戒線を敷いて潜水艦を狩り出す係だ。
だが、常時、駆潜隊を展開させるのには絶対数が足りない。 」
大志「 そこで予備部隊もしくは補助兵力の投入となる、と。 」
能登「 しかも、海路で結ばれる拠点間の交通、交戦により消耗しているであろう港内船の整備も欠かせない。
それならば自衛戦闘もできる雑役船として整備したほうが効率が良いだろう。
実際、雑役船には港湾警備程度ならこなせるものが無いわけじゃない。
曳船、救難艇、交通船、これらには爆雷や防潜網の搭載も考慮されているんだ。
特に航空機救難艇は、船体後部で航空機や魚雷を輸送できるし、爆雷の搭載も可能だ。
排水量の制限があるので100d型を原型にしたけれど、
元々この船は使い勝手の良い船として評判が良かったんだ。
特に不時着した機体を救難・回収するのが目的だから、機関の立ち上がりの良いディーゼルだし、
余分な人員を割くわけにはいかない雑役船にも向いている。
漁船用の海務院型に交換して数の確保を考慮したし、産油地域だから燃料の心配はいらないだろう。 」
大志「 ふむ、潜水艦や軽快艦の掃討は本職の駆潜艇などに任せて、重要港湾の門番だけこなすわけだな。
それでは敵大型艦を夜陰に乗じて襲撃する魚雷艇としての特質は全く生かされないではないか。 」
能登「 それに『匪賊ごときに優秀なる襲撃艇を裂くことができるか』
と予算が不成立になる恐れもあるからなぁ。
もう一つは、 木造=量産性 に対する疑問なんだ。
確かに木造漁船の大量生産には成功しているが、問題が無いわけじゃない。
木造の特務艇などは、大津波で壊滅した三陸の漁船団再建のために選定された鰹鮪船の標準船
を下敷きにしているみたいなんだが、これを徹底する時には東北各地の船大工達に、
青焼きを読み込ませる事、木目と図面の刷り合わせ、などで相当に苦労している。
ましてや南方占領地で、寄せ集めの船大工達に期待が出来るかどうか判断しかねたんだ。
また、海務院の指導で木造造船所の統合が指示されたのは昭和17年の4月だ。
開戦当初には量産体制は作れないだろう。前々から準備していた鋼船造船所でさえ、
続行船からの切り替えに四苦八苦しているからね。
次に南洋材の問題だ。カユプラウは必要数入手するのが困難だし、
ラワンは水を吸ってすぐ水に沈んでしまう。チークは艦艇が再優先だ。
内地の吉野や日向の杉を曳航するくらいなら、瀬戸内で機帆船を作った方が良い。 」
大志「 それでは現地で建造することは困難だな。 」
能登「 まだあるぞ。南洋のフナクイムシは、外板を2重、3重にしても食い破って漏水させる。
木船の船底に貼るべき銅版は戦略物資で節約しなければならない。
しかも船材というのは1年程度乾燥させ、寝かせて撓みをとらないと使い物にならないんだ。
切り倒したばかりの木材を、木目を無視して強引に製材したもので建造したとしたら、
木が乾くことで縮んで甲板に隙間が出来る、肋材が撓んで船体に歪みが生じる、
木材の粘りが不足してひび割れを招く、間違っても乗りたくは無いな。 」
大志「 うぅむ、木材を準備するのに1年、良質の木材を揃えた頃には特務艇群との取り合い、か。
結局、戦地には間に合わぬではないか。 」
能登「 だから鋼船にしたのだが、港内用の雑役船なら材料規格も緩くできるし、
場合によっては占領した工廠にある軟鋼でつくってもいい。
強度と重量に不安はあるが、使えないことはないだろう。元々無理させない船なんだから。 」
大志「 続いては陸軍だ。 」
能登「 陸軍に関して考えるのは比較的簡単だった。 」
大志「 むぅ、意外な事を言う。
帝国陸軍が世界に冠たる海洋陸軍であることは我輩も知っているが、
戦闘用舟艇といえば脚の遅い装甲艇があるだけではないのか?
水上戦闘を前提としたものが無いから、史実では武装大発などを慌てて準備したのであろう。 」
能登「 いや、蘭印方面に比較的似通った戦場が1ヶ所ある。
上海〜南京間を中心とするの華南戦線、揚子江と洞庭湖の付近だ。
点と線、聞いたことがあるだろう、抗日ゲリラの勢力は侮れないので、都市と連絡線しか掌握できない。
これは蘭印にも言えることなんだ。
蘭印全土に警備隊を置くことは出来ないから、都市や産油地、交通線の維持が中心となる。
各都市の襲撃を防ぐには、住民宣撫とゲリラ根拠地の掃討が肝要だ。警備=治安維持と考えれば良い。
たとえ潜水艦で工作員を送りこんでも住民が親日的ならば活動を阻害できる。
警備任務には水上封鎖も含まれるが、これは海軍の小艦艇、掃海艇や駆逐艦にまかせておけばよい。
陸軍に必要なのは、人目に触れずに掃討隊を輸送できる能力、そして戦闘時の火力支援だ。 」
大志「 確かに『金輪丸』には、歩兵の扱える武器しか搭載していないな。
しかし、歩兵随伴の装甲車、にしてはもう少し武装が増やせるのではないのか。 」
能登「 むしろ中隊本部としての機能を考えたんだ。
歩兵中隊(砲艇-1+大発-4)を基準に考えると、大発は銃隊、
砲艇は本部と支援砲分隊、段列の機能を果たす。
船体後半の作業甲板は載貨区画として使えるから、トラック、随伴砲、必要なものを取捨選択すればいい。
逆に言えば、数的な主役は大発と徴用の漁船、機帆船だ。
これらの能力を充分に生かすためには、適切な指揮系統が有れば良い。
指揮機能を大発に追加することで、舟艇隊の運用に弾力性を加えようとするものなんだ。
部下を掌握できる、大発と同じ距離を同じ速さで走ることが出来る、
これで漁船や大発による輸送時での先導には充分だろう。 」
大志「 ふぅ、冗長な解説であったが中々面白いことを聴かせてもらったぞ、同志・広重。 」
能登「 本当だったら、投稿の際に送らなければならなかったんだけどね。
今回の解説は過去の入賞作品の解説で、読みやすい手法を選んだつもりだ。
次回はもう少し考証を深められないかと思っているのだが… 」
大志「 流石だな、まい・だーりん。
高々一度の入賞で我を忘れることなく、次回に向けて自己の研鑚に励もうとは。
ヲ○クによる世界征服の日も遠くは無いぞ、My同志!! 」
能登「 あ、あの… 大志さん……… 」
大志「 照れるなゝゝ、しかし立派に成長したものだな。
これで我輩が貴様に教えることなど、何も ウッ 」
ガサゴソ、ガサゴソ……… ズルズルズルズル
能登「 (ふぅ、危ない所だった……ハァハァ)
さて、長い解説にお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました。
主用参考文献としましては、
・ 日本護衛艦艇史 世界の艦船別冊
・ 昭和造船史
・ 小艦艇入門 光人社FN文庫
・
聞き書 ふるさとの戦争 (社)農山漁村文化協会
です。最後になりましたが、不手際に満ち溢れた拙稿をフォローして頂きました、
胃袋3分の1 様に感謝いたします。
平成14年1月吉日 能登広重 」
|