哨戒艇 「101号」級

Patrol Craft 101 go class



昭和15年8月・日本大本営発令

艦種:沿岸用警備艇
基準排水量:100t以下
備砲:6.1インチ以下
用途:インドシナ島嶼域の沿岸警備
特記事項:
(1) 「沿岸警備」を実施し得る機能と、その運用をともに提示すること。
(2) 同艦艇の運用は海軍のみならず、陸軍船舶兵によっても行なわれ得ることに留意すること。
(3) 現地での運用/整備が容易であること。

 この要求を受けて設計されたものが「101号」級哨戒艇である。「101号」級は船体を共通化して量産性を高め、兵装は運用環境に合わせて変更を可能とするというコンセプトの元に設計されたため、細部の違いによって分類すると10以上の派生型が存在する。
 ここでは、まずプロトタイプとなった「101号」について要目の解説をくわえる事とする。




要目(「101号」、昭和16年時)
    基準排水量:95t
    満載排水量:110t
    全長:30.0m 全幅:5.2m 喫水:1.4m
    主機:中速ディーゼル1基 1軸
    出力:400HP
    最高速度:13.0kt
    航続距離:10kt 1,500浬
    兵装:九六式25ミリ連装機銃1基
       九四式爆雷投射機 1基
       爆雷投下軌条 2基(爆雷20個)

    同型艦:約200隻(隼同型艦を含む)

・・・・・兵 装・・・・・
 兵装は後期の艦になるほど強化されており、それ以外にも多数の派生型が存在する。
「101号」では漁船、貨物船等の臨検、不信船への対応、対潜水艦戦および港湾の防空といった任務を主眼に設計されたため、兵装は対空、対艦用として九六式25ミリ連装機銃1基、対潜用として両舷用の九四式爆雷投射機1基、投下軌条2基を装備している。爆雷は当初20個を搭載していたが後に30個まで増加している。
 九六式連装機銃の採用は、三連装型の開発によって連装タイプに在庫の余裕が出来たためという理由が大きく、同時に建造された「103号」は戦艦「金剛」が第2次改装時に取り外したビッカース式(毘式)40ミリ機銃を装備して完成している。
 この他に探照灯は、5,500トン型軽巡洋艦が改装時に取り外したスペリー式(須式)90センチ探照灯が装備されている。「101号」よりはるかに大きな海防艦でも探照灯は75センチクラスであり中古とはいえ贅沢な装備であるが、港湾、沿岸の警備という目的のために強力なものが装備された。

・・・・・船 体・・・・・
 船体は量産性を考慮して平甲板型で設計が開始されたものの、排水量を抑えつつ凌波性、耐波性を高めるため船首楼型に変更され、さらにタートルバック型の甲板を採用して完成した。この甲板のスタイルは明治期の水雷艇や特型以前の駆逐艦に多用されたものであり(設計に当たっては大正期の駆逐艦が参考にされたようである)、荒天時の航行能力は向上したものの量産性は低下している。何処からともなく顔を出す日本的凝り性の賜物かもしれない。
 船体設計に関しては、資源節約のため木造船体を採用する案も存在したものの、船体強度の問題や、南方での運用が主になるため腐食や害虫対策に不安があるとして取りやめになった。
 排水量は、外洋での運用もある程度は可能となるように、要求時の上限である約100トンとされた。このことから計画時には100トン型と呼ばれていたが、後に大きさから30メートル型哨戒艇という呼び方が一般的となった。
 また、陸軍の船舶兵が運用する事も考慮されたために一般的な艦艇と異なり、客船のような頑丈な手摺が採用されている。
 対潜戦闘を考慮して九三式水中聴音機、九三式水中探信儀を装備したが、探信儀のほうは性能が安定せずほとんど使用されなかったことから取り外した艦もあったようである。

・・・・・機 関・・・・・
 機関に関しては適当なものが見当たらなかったことから航空機用エンジンの転用等も考えられたものの、本級の主な対象は潜水艦であろうとの想定から極端な高速力は要求されず、商船用の中速ディーゼルの採用となった。幸いにも400馬力の中速ディーゼルは新潟鉄工、阪神ディーゼル、池貝鉄工、久保田鉄工などの会社が大量生産に入っており、調達は容易であった。商船用の機関である事から整備等も比較的容易であり、運用面での問題はさほど起きなかったようである。

・・・・・派生型・・・・・
 「101号」級哨戒艇は多数が建造された事から各種の派生型が存在し、また現地で改造されたものも存在するため全てのタイプを確認する事は困難である。
 本来は南方地域での沿岸警備を目的に建造されたものであったが、一部は河川砲艦の不足していた中国大陸で運用された艦もあり、本土の港湾でも驅潜艇、掃海艇として運用されたものも存在する。
 ここでは代表的な派生型について紹介する。


 機銃増設型
 爆雷投射機の在庫不足と、港湾の防空等の任務への対応から後部甲板にも機銃を装備したタイプである。派生型としてはもっとも多数が存在した。爆雷を全廃し、さらに機銃を増設して河川砲艦として使用されたものもあった。

 毘式40ミリ機銃装備型
 九六式25ミリ機銃の代わりに、在庫のあまっていたビッカース式40ミリ機銃を装備したタイプ。戦艦の改装時に取り外したものを装備したタイプでビッカース式40ミリ機銃の在庫分だけの建造であった。初速が遅く作動不良等も多かったことから現場での評価は低く、のちに13ミリ機銃や25ミリ機に銃変更されたものも存在したようである。

 対潜哨戒型
 対潜能力を強化するために、前甲板の25ミリ機銃を対潜砲(三式8センチ迫撃砲)に変更したタイプ。この対潜砲は陸軍の曲射歩兵砲とほぼ同様な構造のため、陸軍船舶兵にも使いやすかったという。このほかに艦橋上と煙突の後方に7.7ミリ単装機銃を装備した。

 高角砲装備型
 対潜哨戒型と同様に前甲板に五年式短8センチ高角砲を装備したタイプ。短8センチ砲は戦艦の外?(トウ)砲を高角砲化したもので、砲身長は23.5口径であった。これは河川砲艦などに多用されたもので、軽量であるため二等潜水艦の備砲としても広く使用された。後に専用の対潜弾も開発されている。このタイプも艦橋上に7.7ミリ単装機銃を設置している。

 K砲装備型
 後甲板のY砲(九四式爆雷投射機)1基を片舷式のK砲(三式爆雷投射機)2基に変更したタイプ。海防艦の増産に合わせて三式爆雷投射機も量産されたため、これにあわせて投射機を片舷用に変更したものである。一部にはK砲を4基装備したものもあった。

 掃海艇型
 爆雷投射機の変わりに対艦式(2隻で曳くタイプ)の掃海具(パラベーン、防雷具とも言う)を装備したタイプ。繋留式機雷の掃海に効力を発揮したが、大戦後半になって磁気機雷が使用されるようになると木造艦に主力を譲る事になった。主機に中速ディーゼルを採用したために低速での行動には比較的余力があり、掃海艇としても有効であったという。

 消防艇型
 機銃、爆雷を全廃して放水銃を4挺ないし5挺装備したタイプ。このタイプの生産は少数にとどまったが、一部の基地では標準型の艦橋上に放水銃を装備するように改装をくわえ、消防艇として使用したものもあった。


 「101号」クラスは多数が建造されたために、戦時中は何処の港湾でも1隻は目にできたという。終戦時まで生き残ったものは、戦後海上保安庁に移管され哨戒艇、掃海艇として使用された。一部の艦は昭和30年代後半まで使用されたという。


・・・・・製作者の能書・・・・・
 あけましておめでとうございます。若宮隼です。
 なんとか間に合わす事が出来ました。大学のほうが卒業間近なので、あれやこれやでいっぱいいっぱいの今日この頃です。
 さて、今回のお題は沿岸用警備艇という事でしたが、はっきり言ってめちゃくちゃ難しかったです。このクラスの資料ってなかなか見当たらないんですね。学校帰りに新宿の紀伊国屋とかものぞいて見たのですが、なかなか見当たりませんでした。
 そんな状態のまま正月休だけでいっきに書き上げたので、あちこちにぼろが出てると思いますが多めに見てやってください。(特に水面下のデザインはさっぱり判らないので、想像だけで描いてます。こんなのでよかったのでしょうか?)
 最初は海上保安庁の巡視艇みたいなものをイメージしていたのですが、30ノットクラスの哨戒艇を作ろうと思うとどうやっても3,000〜4,000馬力の機関が必要になるわけで、適当な機関があるわけも無く、無理して作ったとしても量産や整備の面で問題だらけでしょう。
 そんな訳で開き直って潜っている潜水艦を追いかけられる速力があればいいと思い中速ディーゼルの採用になりました。まあ、魚雷艇を追いかけるのはちょっと無理でしょうが(^^;
(これなら調達も整備も比較的容易かなと思います。まあ、何を持って容易というかによりますが・・・。)

 すこし解説しておきますと、沿岸、島嶼域で行動でき、限定的に外洋でも行動も可能な小型艇で、漁船、潜水艦、(工作船?)等を追いかけられる程度の速力に抑えて量産性を考慮する。船体は共通化しつつ、それに載せる兵装は使用する地域(戦場)にあわせたものを選択できるようにする。といったコンセプトで考えてみました。戦車がプラットフォームを共通化して中戦車(主力戦車)、駆逐戦車(自走砲)、対空戦車等を作るようなイメージですね。1隻にあれもこれもと機能を盛り込むとどうしてもコストが割高になりますし、船体のサイズの問題もありますので・・・。
 ほんとは派生型のイラストも描きたかったのですが、間に合いませんでした。派生型の中で幾つかマイナーな(と、私が思っている)兵器も紹介できたので、まあこれでも良かったかなと思います。
(要するに資料収集の手を抜いたので、簡単なスペック程度しか判らなかったんですね。)

 出来上がったら何だか中途半端な艦になってしまった気もしますが、それなりに実現性はあるかなと思ったりもしています。

 さて、解説はこんなところにしておきます。それでは今年も一年よろしくお願いします。
 以上、試薬屋さんのつけを無視して発注を出し、そのうえ実験をしくじってちょっと先生の視線が痛い若宮隼でした。
                                  2002.1.4