警備艇 1号級

警備艇 1号 /警3号
警備艇 1号 /警3号

警備艇 1号級 諸元:
     同型艦 1号〜23号
     全長:32m   全幅:6.5m 
     排水量:64t
     機関: 高速時 空冷星型14気筒 4基  4500馬力
      巡航時 空冷ディーゼル    2基 340馬力
      推進器 4軸

     速力:高速時 40kt
      巡航時 14kt

     武装ほか:
    25mm 単装機銃  2基
    7.7mm連装機銃  2基

    

警備艇 1号級 について
 昭和15年、欧州戦におけるフランスの降伏、それに応じた仏領インドシナへの日本の武力進駐は、インドシナの
治安機能の混乱を招き、その結果、現地の治安はかなり悪化していた。海上においても、密輸や海賊行為が横行し、
海上輸送能力の低下が問題となっていた。さらに、密輸の一部には、米英による抗日勢力に対する武器援助も、含
まれてるという噂もあった。 
(作者注 現地の治安以下・・は、作者の創作です。)
 そこで、日本海軍が主体となって、100t未満の警備艇を多数建造し、常時、沿岸をパトロールすることを決定した。
犯罪行為の防止・摘発による沿岸輸送の安全の確保と、武器などの密輸防止が、その目的であったが、もし、対米
英となった場合は、哨戒艇として使用することも、考慮に入っていた。
 
 本艇の設計にあたっては、その機関の選定がまず問題となった。第1次大戦中、魚雷艇として誕生した小型高速
艇は、民間でも広く使われるようになり、30kt近い軍艦顔負けの速度をもつものも現れていた。そのため、警備艇に
は、それを上回る速度と同時に、ある程度の期間パトロールを継続できる航続能力が求められたからである。
 また、将来、哨戒艇として使用した場合、遭遇した敵駆逐艦などの追跡をも振り切るためには、40ktの速力が必
要と考えられた。
 
 そのため、艇の後ろ半分程を機関室にあて、爆撃機用の大型空冷ガソリンエンジン4基と戦車用の空冷ディーゼル
2基を搭載し、巡航時はディーゼルエンジンを、追跡時や現場への急行する場合は、ガソリンエンジンを使用すること
で、最大40ktの速度と巡航能力を両立させた。
  また、機関に航空機や戦車用に量産されている小型エンジンを使用することは、短時間で数が揃えられること、エン
ジンの交換・整備にも大きな設備が不要などの、メリットもあると考えられた。

 次に、艇体は、高速艇として標準的なV字底艇体としたが、犯罪船への接舷時には、相手からの銃撃が予想される
ことや、戦時下の使用では、航空機から銃撃を受ける可能性もあることから、水線部や機関部に10〜15mmの装甲を
はり、100mからの重機関銃による射撃、至近からのライフル弾に対する防御とした。

 多数の機関と装甲板の設置の結果、武装は、わずかに25mmの機関砲2門と7.7mm機銃4丁にとどまったが、交戦
相手は、あくまで海賊や密輸業者であり、正規の海軍に遭遇した場合は、高速を利して距離をとり、敵艦隊の動きを
味方に通報するのが目的であることから、これで我慢することとした。
 ちなみに、25mm機関砲のうち1門は、軽荷状態への貨物船への接舷を想定し、マスト上の見張り台を大型化し、そこ
に設置している。

 100艇の整備が計画されたが、対米英関係の悪化から、航空機の生産が優先されたため、23艇が完成したところで、
生産は打ち切られている。
 
 太平洋戦争中は、南方油田地帯の警備に使用されたが、昭和18年になり潜水艦による被害が深刻化すると、湾口部
や海峡における潜水艦掃討を目的として、駆潜艇に改造されている。    
 

Making of 警備艇
カララン
「あらいらっしゃい。チャララちゃん。」
「チャロさん、コーヒーちょうだい。」(ムス)

コポコポ

「はい、どうぞ。」
コク
「ウプ、チャ、チャロさん。な、なに、このコーヒー。」
「フフ・・、当店特製のアイリッシュコーヒー。」
「アイリッシュって・・・、チャロさん、ウィスキー入れすぎ。それに、私、まだ仕事残ってるんだけど」
「そんな血の上った頭じゃ、ろくな仕事できないわよ。」
「あの・・・」
「声かけたら、殴りかかりそうな顔してたわよ。ま、他にお客さんいなかったから、よかったけど。」
「ごめんなさい。」
「ま、それ飲んで、落ち着くから。」
コクコク

「ふー。」
「どう、少しは、落ち着いた?で、どうしたの、ムクの馬鹿とケンカでもしたの。」
「じつはね、チャロさん。今度、日本が、南方で使う警備用の小型艇を、募集したんだけど。
 そしたら、うちのフェイ技師長、それに応募しようって、やたらはりきっちゃって。」
「小型艇100艇て、やつでしょ。いい商売じゃないの。」
「あのね、チャロさん。警備艇用といっても、運用するのは海軍なの。こんなややこしい時期に輸出許可なんか絶対
 出ないわよ。へたに役所に目つけられたら、商売できなくなっちゃう。」
「ああ、そういうこと。納得。
 でも、大丈夫なんじゃない。その艇の仕様って、ずいぶん厳しいんでしょ。」
「なんで、そう詳しいのチャロさん。」
「昨日、お宅の技師長さん、散々ぼやいて帰ったわよ。いくらなんでも無茶苦茶だって。」
「まあね。ふふ・・・」
「何、チャララちゃんには、何か考えでもあるの?」
「考えってほどでもないんだけど。教えてあげるから、このコーヒー、お替りちょうだい。」
「いいけど。飲みすぎなでね。」
コポコポ

「で、警備艇のことなんだけど、確かに仕様に書いてあることを、全部実現することは、無理なの。
 100t足らずの艇に6.1インチ砲なんて、横向けて打ったら、反動で舟ひっくり返るわよ。」
「え?」
「でも仕様書には、6.1インチ以下って書いてあるし、要は全部実現するんじゃなくて、最小限必要なもの
 に絞って、使い方まで提案しろってことなの。」
「ああ、そういうこと。」
「そう。で、チャロさん。警備艇て、どんな風に使うと思う。」
「そうねぇ。やっぱり、海賊や密輸の取締り?。」
「でしょう。そんな連中が、どんな武器持ってると思う?」
「そりゃあ、マスケット銃とか、カトラスとか。」
「チャロさん。『宝島』じゃないんだから。」
「はは・・・。」
「でも、雰囲気はよくでてる。多分、トミーガンとかダイナマイトぐらい。
 だったら、大型機関砲、数門あれば十分。
  無理に艇を複雑にして、武装を強化するよりは、数多く建造して、哨戒密度を上げるほうが、大事って訳。」
「なるほどねぇ。」
「まあ、一番のポイントは、武器より速度かな。」
「速度?。」
「最近、小型で30ktぐらい出る艇あるし、そういうの海賊や密輸によく使うから。
 それに、もし戦争になって、本物の軍艦に出くわしても、速度があれば逃げ切れる。」
「軍人さんが、逃げるのは、まずいんじゃないの。」
「チャロさん、この艇って、戦艦の何100分の1の大きさなの。
 とたえ、映画や小説の世界だって、勝てっこない。
 だったら、つかず離れずついてって、味方の艦や飛行機、呼び寄せたほうが、おりこうさんってもんよ。」
「ああ、そういうこと。」
「あとは、装甲。」
「装甲って、危なくなったら逃げるんだから、いらないんじゃないの。」
「逃げるのは、軍艦相手の話。
 不審舟には、乗り込んで捜査しなきゃなんないから、至近距離からライフルで撃たれることもある
 し、それにいくら何でも、飛行機よりは速くはできないから。
 機銃弾を防ぐためにも、装甲車程度の装甲は必要になる。」
「なるほどねぇ。でも、チャララちゃん、そんな高速を出せる小型エンジン、日本にあるの?」
「まあ、船舶用エンジンの分野では、日本って、遅れてるんだけど、手がないこともない。
 説明したげるから、チャロさん、このコーヒー、お替りちょうだい。」
「はいはい、でも、次はお酒抜きま・・」 
「抜かないで。」(キッパリ)
「いいけど。大丈夫?」
「大丈夫。」
コポコポ

「はい、どうぞ。」
「ありがとう、チャロさん。
 で、エンジンの話だけど、飛行機のエンジン積んじゃうの。」
「飛行機のエンジンて、船に使えるの?」
「まあ、常用回転数なんかが違うから、2,3割出力が落ちるけど。でも、爆撃機用なら1500馬力ぐらいあるから、
 それを4基も積めば、4,500馬力は稼げる。それだけあれば、40ktぐらい出せるわ。」
「そんなに積めるの?」
「大丈夫、航空機用のエンジンって、小型軽量だから。」
「でも、燃費が悪いんじゃない?」
「だから、ディーゼルエンジンも積む。」
「まだ載せるの?」
「日本の戦車って、小型の空冷ディーゼルエンジン積んでるから、それを2つ使うのよ。」
「なんで、わざわざ種類の違うエンジンを、使うわけ?」
「それはね、チャロさん。40ktの速力が必要なのは、不審船を追跡したり、敵艦から逃げるときだけで、
 パトロールは、10ktもあれば十分。
 だから、パトロール中は、燃費の良いディーゼルエンジンを使って、速力が必要なときだけ、高出力エンジンを
 使えば、燃費を気にせず、広い範囲をパトロールできるって寸法。」
「なるほどねぇ、さすがチャララちゃん。」
「へへ・・・。ま、こんな感じかな。」(カキカキ)
「この後ろのものは、なあに。」
「見張り用マストと通風孔。
 見張り用マストは、広い範囲を監視するために必要だし、空荷で乾舷の高い船に接舷することを考えたら、
 甲板を射撃するために、マストの上にあるる程度武装を載せるスペースも欲しいから、どうしても大きくなっちゃう。
 後、通風孔は、この艇エンジンは全部空冷だから、やっぱり大きくして、強制的に空気を送らないと、あっという間
 にエンジン焼き付いちゃう。」

「すごい。もう、できちゃってるじゃない。」
「へへ・・・。考えるだけなら、面白い課題だったんで、つい。
 でも、チャロさん。今の話、フェイ技師長には、内緒ね。
 聞いたら、絶対、エントリーしようとするに、決まってるんだから。」
「わかった。チャララちゃん。今度来たら、馬鹿なことはやめなさいって、言っといてあげる。」
「ありがとう。チャロさん。ほんとに、うちの技師長ったら・・馬鹿・・なん・・だから・・・」
「あらら、さんざんしゃべって、寝ちゃったか。
 しょうがない、ムクの奴に電話して、迎えにきてもらうとするか。
 それにしても、ウィスキーの量、やっぱり多すぎたかしらね。」

    


おまけ 特設駆潜艇 201号級

特設駆潜艇 201号 /203号
特設駆潜艇 201号級/203号

特設駆潜艇 201号級 諸元:
     同型艦 201号〜221号
     全長:32m   全幅:6.5m 
     排水量:70t
     機関:  空冷ディーゼル    2基 340馬力
      
     速力: 13.5kt

     武装ほか:
    75mm野砲       1門
    13mm単装機銃    2基
    爆雷投下軌条     2条
    吊り下げ式聴音機  1基
    軽便式探信儀     1基

    

特設駆潜艇 201号級について
 昭和18年半ばを過ぎ、潜水艦による被害が深刻化してくると、 海防艦をはじめとして対潜・護衛用艦艇の整備が、
急務となった。
 南方の沿岸警備用として整備された1号級警備艇も、湾口部や海峡部における敵潜水艦の掃討用に転用された。

 改装点としては、高速用のエンジン、戦闘檣、一部装甲の撤去などを行い、かわりに、爆雷投下軌条2条と爆雷24
個、吊り下げ式聴音機などの設置を行っている。
 また、一部の艇は、ディーゼルエンジンを、1式戦車用の240馬力のものに交換、速力を15.5ktとすることで、海峡
部での護衛任務にも使用されている。