日本陸軍五式中戦車 チヌ

画 ポ・ウミノダビッチ・ドザチンスキー(画 海野土左衛門氏)

車体重量 34t
全備重量 39t
武装   五式105粍戦車砲2型
     九七式57粍戦車砲
     九七式7.7粍車載重機関銃X2

装甲   車体前面 100mm(45度傾斜)
       側面 50〜25mm
     砲塔前面 125mm
       側面 75〜25mm
       後面 25mm

機関  統制型一○○式空冷ディーゼル
    W型18気筒 過給器 中間冷却機付き 440馬力

寸法
 全長  9.0m
 車体長 6.4m
 全幅  2.8m
 全高  2.6m

乗員  5名


日本陸軍のソ連軍T−34戦車対抗として開発された物で
従来から各方面で要求の大きかった105mm砲戦車として生み出された物である

車体前面装甲は変速機交換ハッチギリギリまで伸ばした事で45度の傾斜を与え
100mmながら150mm級の耐弾能力を持つ事とされている
また砲塔前面は125mmの厚さを持つ(垂直から30度傾斜で150mm級)

実質的に前面装甲として機能する砲塔側面前半部は避弾経始を考慮したデザインで75mm
車体上部前半部も50mmとなっており
前方正眼からの射弾に対しては100〜150mm級の防護性能を確実に発揮可能と判断されている
車体側面部は35mmと虚弱であるが、重量制限からこれ以上は困難であった


主砲は当初92式10加を転用した物を予定していたが、威力面の問題から
平行して開発が進んでいたホリ車のモノを転用する事になった
ホリ車では自動装填装置を備える事で射撃側を確保する事を狙っていたが
いくら巨大な砲塔とは言え、自動争点装置を収める事は不可能であった

またホリ車の場合は装填装置込みで砲耳部で重心を取っていたが
設計変更の時間と手間が惜しまれ(また砲身が長く出ていると操縦上も問題がある)
装填装置の代わりにカウンターウェイトを装着し、揺架等はそのまま転用となっている(実際には砲耳部等の位置は多少異なっている)

ソ連のスターリン戦車の事例でも明らかなように
この種の大砲は砲弾重量から見ても射撃速度が期待出来ない

ホリ車の自動装填はそれに対する解答策であったが、この戦車では不可能である
よって、ホリ車よりも副武装にかかる期待は大きい
副武装の主目的は対戦車砲等の制圧であり、それには榴弾威力が渇望される
軽量で片手でも扱える57mm砲はそれに合致した武器であり
これを車体に装備する事で主として前方への制圧火力として用いる事になった
また従来から車体前方への機銃火力も望まれていたので、同軸式に機銃を備える事で対処してある

砲塔後面にも機銃を備えているが、これは死角を補う事が主目的であり
従来の戦車が砲塔後面を前方に向けて射撃する事を狙っていたのとは異なる用法であり
射撃担当は第二砲手(装填手)である


本車の特徴は日本戦車としては驚異的な武装と装甲だが
技術的には、単に既存戦車を大きくしただけで、そう難しい事はしていない

この戦車の最大の特徴はエンジンである

日本軍では部品等の共有化を狙って統制一〇〇式ディーゼルを運用していた
だが、このエンジンは気筒サイズから見て
一般的に限界と思われる12気筒で240馬力しか発生させられない
既に計画の始まっていた(後の4式戦車用)新型ディーゼルの採用も考慮されたがそれでも400馬力
35t級に望まれる450〜500馬力には到底足りない
そこで、統制ディーゼルの気筒を利用してW型18気筒にしたのがこの発動機である

直列6気筒を3つ束ね、排気量をV12の1.5倍にしたのである
勿論、これでは甘く見てもV12/240馬力の1.5倍だから360馬力しか発生させられない
そこで、過給器と中間冷却機を加える事で440馬力を発生させたのである

空冷発動機で有る事から冷却問題が想像されたが
これには、中間冷却機および発動機ジャケットに水噴射をする事で対処する事になった
常識的に400強しか出ないはずの発動機にあと1割搾り出すのであるから無理無茶は覚悟の上である

4式V12は1800rpmしか回らない、大気筒故の限界である
一〇〇式は2000rpm以上回るのである、つまり単純に考えても1割は排気量当たりの出力は大きい
W型にする事で発動機長さも押さえられるので、無理をするだけの魅力は大きかったのだ

勿論、発動機の寿命や保守点検にかかる手間は拡大するだろうが
統制型であることから部品供給の問題は緩和する、総合的には可能性大と判断されたのである(恐ろしい)

W型の場合問題になるのは左右への開度である
バランス面では60か90度で作りたいところだが
60度では各バンク間が近すぎ、吸排気のレイアウトが困難になり、90度では幅が大きくなりすぎる
よって非常に困難ではあったが72度のバンクが採用された
多気筒なので振動バランスはこれでもなんとかなるという判断である

過給器は機械式スーパーチャージャーであり
これはこの時期の日本車両で採用され始めた物である
中間冷却機の採用が目新しいといえるが
3バンクに吸気を分配する関係上、どうしても大きめのチャンバーが必要であった事から
そこを拡大して空冷ジャケットを装着し、強制冷却空気の流路に置いただけで高度な代物ではない

また水冷却は強制ファンの吸入口と各バンク、そして中間冷却機に霧吹き式に行う物で
油温、加給圧、回転数が一定範囲を超過すると自動噴射される
これはガバナーと同様の簡易判断装置で制御されており、試験では特に問題は無かったといわれる

ここまで苦労して空冷ディーゼルを採用するのは被弾時の引火対策処置であった
水噴射は火災発生確率を緩和するにも役立つ事が期待されていたようである

車体レイアウト
画 ポ・ウミノダビッチ・ドザチンスキー
(画 海野土左衛門氏) ☆:はいっ、こんにちわー、毎度おなじみの倉田佐祐理でーっす ★:車両参戦は初めてですね・・・アシスタント2号の天野美汐です(ぺこり) S:てなワケで、真面目に105mm戦車にしてみました ★:開発の経緯というか   御題を出した張本人としてはちゃんと105mmのワケを語るべきです S:えっとね、5式戦車の要求は二重だったんです   A:将来の戦車砲は75mm以上、出来れば105mmが欲しい   B:車体は35t級が各種の制限から限界   C:35tに回転砲塔じゃ105mmは困難では?   D:じゃあ自動装填75mmにすっか>5式戦車   E:でも105mm欲しいよね   F:じゃあ、固定戦闘室の奴も>ホリ車 S:まあ、こんな感じで決まったワケ   35tで105mmってのが日本軍の「次の戦車」の基本だったんだ ★:あの副砲装備はなんなんですか? S:弾が足りないとか、リアクションが遅いとか、射撃速度だね   日本軍は射撃速度をかなり意識していたんだ   それが大口径に対する一つのマイナス要因だったとも言える   少ない戦車で、ビシバシと多くの目標を撃つつもりだったんだろうな ★:それで副砲なんですか・・・ S:あとは対戦車砲の用法の問題だね   至近距離でいきなり撃ってくるでしょ、気が付いても反応が遅れるんだ   実際の日本軍の対戦車砲はそうやって使ってるし、当然それは念頭にあるんだ S:てな訳で、これは殆ど史実の5式戦車の要求スペックのままなんです   105mm砲さえ積めるなら、射撃速度は副砲で補えるんで我慢しちゃおうという戦車だね ★:そうして真面目に105mmを搭載したんですね S:問題は射撃速度だな、どう考えてもスターリンやヤークトティーガーになる   そういう戦車だと、例えばマウスなんかみたいに副砲が欲しくなるのも当然 ☆:えっと、副砲は57mm砲・・・これってチハの? S:そう、こいつは重機関銃並の重量だからね、片手で装填しながら釣瓶打ちできる   副砲に要求された機能と能力から考えるとベストだろう ★:対戦車戦闘には役に立ちませんけどね S:それは主砲でやる   あくまでもいきなり近距離で見つけた目標や、突進時に敵を制圧する為の物だからこれで良いのさ ★:防御装甲も随分と凄いです S:レイアウトを既存の物のままでやるとここらが限界かな   砲塔は側面を絞って、車体前面は寝かせる事でなんとか防御能力を稼いでみた ☆:となると・・・防御力はまあ一級と言うレベルで見ても良いのですねっ? S:そだね、一般的な戦車の火力ではちょっと厳しいと思う   側面はずっと弱いけど、どっちにしても側撃されたら大抵の戦車砲で抜けちゃうしな ★:パンターと比較して、側面を2割弱めて、その浮いた重量で前面を2割強化した感じですね S:総合的な防御性能では似たようなものだけどね   車体が小さい事を最大限に生かそうとしているわけだ ☆:車体サイズとしてはパンターより小さくて、スターリンぐらいですねっ S:装甲の配置で言うならT−44が近似だね   あれよりは装甲薄いけど、それはエンジンや大砲の重量だと思ってくれ ☆:ズバリ言っちゃいましょう、これって成立しますか? S:エンジンが持つなら何とかなると思うよ   W型18気筒が持つならね・・・ ★:なんで、そんな馬鹿エンジンにしたんですか? S:35t級を40kmでとなると、450〜500馬力が欲しいんだ   統制型エンジンは気筒あたり22〜20馬力、18気筒だと20切るだろうな ☆:18気筒で350馬力弱ですね S:各種のこの時期のエンジンを調べるとだ   ディーゼルに過給器つけると概ね15%アップが狙える ★:350の15%として400ちょっとです S:つまり400馬力は狙えるんだが・・・欲しいのはあと10% ★:中間過給器付けたって5%ぐらいしか稼げませんよ? S:そうなんだ、このままだと420しか出ない   だから中間冷却機を冷やし、シリンダーも冷やして、回転数と充填効率を稼ぎ出す   それで+5%を確保しようと・・・ ☆:ううっ・・・素直にもっと排気量増しましょうよ・・・ S:シリンダーサイズを変えたら統制型の利点が無くなるでしょ   つまりシリンダー数を増すしかない   常識的な配置だと、V16とかW24とかになるけど ★:16では足りないので・・・24は腐ってますね S:そうなんだ、V12を二基結合ってのも考えたんだけどね ☆:V12が240馬力ですから、2つで480、多少落ちても450は出ますーっ   過給器つければ520馬力ですねーっ S:だが、V12を2発入れるスペースが無いのだ   入れるとなると車体幅は思い切り広がる、つまり重たくなる   砲塔径以上の車体幅は欲しくないから、これは過剰だよね ★:その上、整備性や信頼性も問題と・・・ ☆:はいっ、W型24気筒では? S:この場合はクランクシャフトが怖い事になる   18でも怖いけど、24はとてもじゃないが手を出したくない ★:ではセイバーみたいなH型は? S:飛行機でならカウル外せば全てのシリンダーにアクセスできるけどね   水平対抗エンジンの車でも弄ってみれば判る   車の類では、とてもじゃないが整備できんのだよ ☆:つまり、色んな意味でW型18が一つの限界だったと? S:W21も考えたんだけどね、やっぱ偶数でやりたかったんで・・・ ★:開度が72ってのもマニアックですよね S:これは60だと吸排気系のレイアウトで死ぬからね   実際にV6エンジンとかで60度の奴を見てみればよい   あれで入れるのは厳しいぞ ☆:でもって90だと左右バンクは実質水平対抗になるんですねーっ S:これも整備性や幅を考えると却下だ   ギリギリの妥協が72だったんだ、結構厳しいけど努力すればなんとかなるだろう ★:冷却の水利用は単純ですよね S:全開時間がそれほど長くないという見積もりと   空冷のシンプルな構造を最大限に生かしたかったんですな   シリンダーに吹き込むよりはずっと安全性が高いし構造も簡単で済むでしょ ☆:問題点もあるようですよねーっ? S:なんてったって、整備したくない   埃が水に溶けて、次に熱でガビガビになって張り付いてるわけだ   しっかりと水の流れ方を考えておく事と、保守しやすさを念頭に入れておかないと・・・ ★:目に浮かぶようです   木へらと木槌持って半べその整備兵がこびり付いた泥を削ぎ落としてる姿が・・・ S:まあ、水冷却しなくても400+は出るからね   回転が1900rpm超えると水噴射、2100rpmでガバナーが入るようにしておこうと思う ★:1900で止めるなら400+の馬力で無理は少ないと・・・ ☆:W型18気筒ってところですでに無理無茶無謀ですけどねーっ S:18気筒にした事でエンジンの全長を押さえる事も出来た   V12よりは長いけど、例えばV16とかにするよりも短いんだ   補機類で場所食ってるけど、重量はともかくサイズ的にはコンパクトになってる   空冷だから小さいのは必ずしも良い事ではないが、水噴射で冷却は補えるし、まあ何とかなるだろう ★:水タンクの大きさが問題になりそうですが・・・ S:この水噴射は緊急時に全開にすればエンジンルームの温度を下げるのにも役立つ   つまり被弾時に引火する可能性を多少下げる事も出来るだろう   日本戦車がディーゼルだったのは引火予防だったそうだからね ☆:はぇ?・・・燃費問題じゃないんですか? S:それもあったけど、引火もあったんだ   装甲は高熱で炙ったら二度と使えないからね、引火した戦車は修理できない ★:撃破された戦車の回収と再利用・・・貧乏くささが燃料問題よりも光ってますね・・・ S:つまり、こんな大きくて高価な戦車は被弾して引火するなんて許される事ではないんだ ☆:これって、夢の超強力戦車なのに・・・ ★:色んな所で妙なギミックと貧乏神の呪いを感じさせますね S:まあ、仕方が無いよ、色んな意味で日本の国力の限界がここらへんなんだから ★:で、この戦車、使い物になるんですか? S:運がよければ1945年迄に完成する   まあ、試験やら何やらやってるうちに終戦だな   そして戦後の雑誌とかに、5式戦車が間に合っていたらとか書かれるんだ(笑) ☆:実際に前線に出したら故障しまくりで駄目ですよねーっ S:そんな事を言うもんじゃない   輸送手段が残っているうちに数両がフィリピンか硫黄島に送られてとか考えたって良いじゃないか ★:そうなっても何も変わらないと思いますけどね S:良いのさ、俺の頭の中には   この戦車が照明弾に照らし出された敵集団を遠距離狙撃している姿があるんだから(笑) おまけ