ドイツ海軍 巡洋戦艦試案

巡洋戦艦試案


    要目
 
    基準排水量:24,900t
        満載排水量:30,000t
    全長:228.6m
    全幅:27.8m
    主機:ブラウン=ボヴェーリタービン3基 3軸
    出力:130,000hp 
    最大速力:32kt
    航続力:8,000浬/16kt
    武装:47口径38.1cm連装砲3基
       50口径15p連装砲4基 
       65口径10.5cm連装高角砲4基
       37o連装高角機関砲4基
       20o4連装高角機関砲4基
    搭載機:水上偵察機4機
    装甲(最大)舷側150mm 甲板70mm 主砲180o


 ドイツ海軍 巡洋戦艦試案について


1.本計画の意図

 この巡洋戦艦は、ドイツ海軍「Z計画」の一環として、1938年4月に発令された以下の要求に従
って設計されたものです。なお、この計画はO級巡洋戦艦に代わるものということになります。

   満載排水量:
    30,000t以内
   用途:
    敵艦隊誘致、牽制、遊撃、決戦時の主力支援
   特記事項:
    6〜8隻の建造を予定

 船体の規模としては、これ以前に計画されていたP1級装甲艦とO級巡洋戦艦の中間といったところ
でしょうか。艦種は「巡洋戦艦ないし装甲艦」と指定されていますが、まずはこの計画の意図を考えて
みます。

 ドイツ海軍が、将来イギリス海軍に挑戦するべく計画したこの「Z計画」の中では、20cm砲を装備
した重巡洋艦はアドミラル・ヒッパー級の5隻しか存在しません。そもそも重巡洋艦という艦種が、軍
縮条約によって戦艦の建造が制限されたことによって発達したものですから、軍縮条約に参加していな
いドイツがこの艦種を増強する必要を感じなかったのは当然と言えるでしょう。しかし、仮想敵である
イギリスには、質量共に侮れない巡洋艦戦力が存在しています。Z計画では60隻の軽巡洋艦を建造す
る予定だったようですが、これだけの数を揃えるには時間がかかりますし、その間に更に増強されるで
あろうイギリスの巡洋艦戦力に対して優位を保つという点では、いささか心もとないと思われます。

 装甲艦ドイッチュラント級や、これを強化したP1級装甲艦なら、敵巡洋艦戦力に対してある程度優
位を保つことは可能でしょう。しかし、もともとヴェルサイユ条約の厳しい制限下で作られたドイッチ
ュラント級では装甲防御に問題があり、重巡の20cm砲に対する防御力すら持ち合わせていません。ま
たP1級は巡洋艦相手では防御力が過剰で、しかも火力がドイッチュラント級と同等であるため、戦艦
を相手にした場合、戦力としてほとんど期待できないという欠点があります。戦艦級の火砲に対する防
御力も当然持ち合わせていませんから、2万トンクラスのP1級は結局巡洋艦相手にしか使えないと
いうことになります。これでは無駄が多すぎます。

 ではO級巡洋戦艦ならどうでしょうか。これは戦艦相手では防御力が足りませんが、巡洋艦相手では
余裕があります。しかも38.1cm砲を持つことから、敵戦艦を相手にすることも可能です。大型艦も
不足しているドイツ海軍には適していると思われますが、これでは少し大型に過ぎ、本計画の要求にあ
る「6〜8隻の建造を予定」を満たすことが困難になると思われます。
 これらの事から、今回の要求に適合している艦船は「敵巡洋艦を圧倒する性能を持つ、O級と同等の
火力を持つ艦」であろうと考えた次第です。


2.本艦に必要な性能

 上記の前提にしたがって設計した場合、O級より小型の船体に、同等の火力を積み込む必要がありま
す。単に巡洋艦を相手にするだけなら28cm砲でも充分ですが、これでは敵戦艦を相手にする際に不利
となり、先に政治的な理由で28cm砲を搭載したシャルンホルスト級と同じ失敗を繰り返すことになり
ます。ドイツ海軍総司令官のレーダー提督はシャルンホルストの主砲に38.1cm砲の使用を主張して
いますから、海軍の首脳部も28cm砲では恐らく納得しないでしょう。よって、38.1cm6門とい
う火力は最低限必要になると考えられます。

 本艦の防御力に関しては、要求されている任務が「敵艦隊誘致、牽制、遊撃、決戦時の主力支援」と
いう、他国では巡洋艦以下の戦力が担当するものですから、主力打撃部隊の中核となる戦艦並みの防御
は不要と考えられます。しかし、個艦の戦力として敵巡洋艦に対する優位を保つ必要があると考えられ
るので、重巡の火砲で簡単に装甲が破られるというのは問題です。よって最低限の対20cm砲防御は欠
かすことができないでしょう。

 満載排水量3万トンという、戦艦としては小型の艦にこれだけの攻防性能を収めようとすると、航行
性能を削るより方法がありません。もともと巡洋艦戦力の補完として建造するのですから、速力をこれ
以上削ることはできません。そうなると削れるのは、航続力しかない訳です。同じZ計画で建造が予定
されていたH級戦艦の航続力は19,200浬/19ktという長大なものですが、これほどの航続力
を要求されると武装を減らす、あるいは機関の性能を落として速力を落とす必要が生じてしまい、戦力
としての価値が減少してしまうことになります。ここは北海、大西洋で英艦隊と交戦するための艦、と
割り切って、航続力の低下には目をつむることにしました。

 上記のように考察した結果、文頭に挙げた諸元を持つ艦であれば、必要とされる性能を満たせると判
断しました。O級の装甲と航続力を削った艦ということになりますが、巡洋艦相手なら圧倒的な優位が
期待でき、かつ戦艦と撃ち合うために必要な火力も備えているので、割と多用途に使用できる艦になっ
たと考えています。速力も必要充分な性能を備えていて、また機関出力は押さえ気味なので、それまで
のドイツ海軍の大型戦闘艦より信頼性も高めだと思います。ただし、史実のドイツ海軍が(結果的に)
行った通商破壊に関しては、短めの航続力からあまり期待できないかもしれません。


3.艦型について

 本艦の艦型は、基本的にO級のそれを踏襲している。これは船体こそ短くなるが、機関がビスマルク
とほぼ同じ形式のため煙突が減り、上甲板に多少余裕が生じると考えられるからです。主砲の38.1
cm砲は前部に2基、後部に1基を装備。副砲と高角砲は両舷に2基ずつ割り振って装備しています。

 艦橋構造物の形状は他のドイツ艦同様、敵を攪乱するために共通のものを採用しています。このあた
りは目的があって共通化していることから、特に個性を出す努力はしませんでした。没個性となるのは
否定できませんが

 他には、シャルンホルストが乾舷の低さから凌波性に問題を抱えていたことを考慮して、艦首のシア
を若干きつめにして、乾舷も充分と思われる高さを確保するようにしています。

 
4.運用および仮想敵について

 本艦が要求にあった数だけ建造されるということは、何らかの理由で対英戦が遅れた結果、Z計画が
予定通りに進んでいると考えられます。この状況からすれば、相手とすべき英海軍も当然増強されてい
ると考えるべきです。ここで、運用と共に交戦する可能性のある敵艦について考えてみます。

 敵艦隊の誘致、牽制を行うのが主任務である以上、本級2、3隻程度と巡洋艦、駆逐艦などで艦隊を
編成、遊撃部隊として敵遊撃部隊の撃滅や、破壊活動(通商路破壊や拠点への艦砲射撃)を行うことで
敵主力を誘引することが役割になると考えられます。もちろん主力打撃部隊に加わったとしても、主砲
の火力が戦艦級なので、充分にその一翼を担うことができるはずです。

 さて、本艦が標的とするのは英仏の優勢な巡洋艦戦力ということになります。あらゆる巡洋艦に対し
て圧倒的な戦力を持つ本艦が、遊撃部隊の中核としてこれら巡洋艦群を撃破すれば、H級戦艦群を中心
とした主力部隊が決戦に及ぶ際に非常に有利な状況を作り出すことができると考えられます。そうなる
と敵は本艦の跳梁を阻止しようと高速戦艦や巡洋戦艦を送ってくるでしょうから、巡洋艦以外に相手と
する敵艦は、これらの戦艦たちということになると思われます。実際に完成、設計されたものに限りま
すが、簡単に比較してみようと思います。

 この場合、レナウンなら単艦での性能差も少なく、また数で勝るので充分に戦えるはずです。ダンケ
ルクも恐らく数の優位で何とかできる相手だと思います。リシュリューは怖いことは怖いですが、これ
はフランスにとっては切り札となるべき戦艦なので、おいそれと敵遊撃部隊に向かわせることはできな
いでしょう。交戦の可能性は低いと思います。

 問題はイギリスのフッドとヴァンガードです。史実では未成に終わったライオン級は主力打撃部隊中
核だからいいとしても、戦争開始が遅れた結果、近代化改装されたであろうフッドと、R級の主砲を転
用して更に量産され、かつライオン級の存在によって遊撃部隊として使用することも可能になるであろ
うヴァンガードは脅威です。これらは速力が速く火力も充分、しかも強固な防御力を持つので、単艦で
はとても歯の立つ相手ではありません。数隻で取り囲めば何とかなるかもしれませんが、運良く相打ち
でも敵巡洋艦戦力に対する味方戦力の減少につながるので、できれば相手にしたくないでしょう。ただ
し、戦艦並みの火力を持つ本艦であれば、全く戦えない相手でもないと思います。

 最後に、史実どおりにZ計画が日の目を見なければ、この艦も建造されることもないと思います。仮
に建造できたとしてもせいぜい2隻程度でしょうし、護衛艦艇の不足から先に上げた遊撃部隊としての
運用を行うことも困難です。恐らく史実のビスマルクやシャルンホルストの二の舞になるでしょうが、
この艦はこれらより防御力で劣っていますから、戦局に寄与するところはほとんどないと思います。あ
くまで本艦はドイツが充分な戦艦戦力を保有し、イギリス相手に艦隊決戦を行うという前提において必
要な艦であると、作者は結論する次第です。



        作者より

     新作は前回の競作以来という、こちらでは随分久しぶりになってしまいましたA
    -140です。日本(風)の軍艦以外の投稿は、これが初めてになります。

     今回は最初からドイツ式「超甲巡」を作るつもりでした。史実のO級のスペック
    を見てみると、超甲巡795号艦の主砲を強化したものといってもよいくらいだと
    思ったからです。戦艦、巡洋艦戦力が充分な日本やアメリカが超甲巡を作っても中
    途半端になるでしょうが、ドイツのように巡洋艦以下の戦力が弱体な海軍なら、こ
    うした発想も成立するだろうと判断しました。結果的にうまくまとめられたと思え
    て、なかなか満足しています。
          ただ、画像が少し淡白かつ、ありふれたドイツ艦のものになってしまったのは惜
    しまれます。これははじめてのドイツ艦ということで仕方ない部分もありますので、
    以後も精進していきたいと思います。また製作を終えて、もう少し熟成させる時間
    があれば、と思いたくなる面も多々あります。設定等の不行き届き、あるいは誤字
    脱字についてはご容赦頂ければ幸いです。

     ところで、今回は特にIRCチャットにおいて、多くの助言をを頂いて製作して
    おります。ひとえに自分の勉強不足ゆえのことで、今回の作品はそうした助言を頂
    いた方々の意見をまとめて、自分の形にしただけという面もあります。このたびお
    世話になった皆様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

     次回の競作も楽しみですが、最近は一般投稿が完全に滞ってしまっています。何
    か新しい艦が形になったら、また製作したいと思います。


     では皆様、これからもよろしくお願い致します。
 
                            2002年 4月13日 投稿