要旨
改Z戦備計画による小型高速戦艦。英主力艦の牽制、誘致を主目的とし、北海に作戦
海面を限局して、長期連続外洋行動を放棄した分防御を充実させた。8隻計画された
が、大戦勃発により1隻のみ就役。
大戦後期の燃料事情により目だった活躍はできなかったが、連合国の輸送船団に脅威
を与えつづけた。
外観
平甲板型船型で顕著なシェアをもつ。防御上の観点より舷窓は一切廃止している。
15インチ3連装砲塔を前後に1基ずつ配しそれに背負い式に5.9インチ3連装副砲塔を1
基ずつ。
その間にコンパクトな搭状前部艦橋、一本煙突、低い箱型の後部艦橋があり、
その周囲に対空機関砲がならぶ。煙突の後方に一本マストがある。高角砲、航空儀装
はない。
改Z戦備計画
1938年ヒトラ−は将来の対英戦を考えた長期建艦計画の策定を指示した。
海軍は、英と戦わない事を理想として、通商破壊戦艦を中心とする「抑止力艦隊」に
よるZ計画と潜水艦を中心とした2案を提出した。
ヒトラ−はZ計画を取り上げ1946年以降、対英戦もあり得るとして、実際に戦う事を
想定しての改定を命じた。これが改Z計画である。
独英開戦すれば英は独の地理的不利に鑑み、北海出口とド−ヴァ海峡で海上封鎖を行
うと予想された。
大陸国家たる独は海上封鎖による経済への影響は僅少である。一方島国の大英帝国は
産業基盤を脆弱な海上輸送路に依存しており、通商破壊によって英経済を麻痺させれ
ば、英屈服は可能である。しかし無制限潜水戦は政治的に不利である。
護送船団にて通商破壊活動を封じられた第1時大戦の戦訓を考慮し、潜水艦と通商破
壊戦艦を併用することとした。
通商破壊艦は実際に商戦狩りを行わなくても、大洋に隠れ遊弋しているだけで、英輸
送計画を大幅に狂わす効果があるが、装甲艦や巡洋艦級では掃討される危険性があ
り、
大型戦艦を充てることとした。
この通商破壊戦艦が英海上封鎖を突破して無事に大西洋に脱出できるかが、、海上戦
の鍵とされた。
改Z計画では現在建造中のビスマルク級戦艦隻に加え、新たに7万トン級の大型通商
破壊戦艦6隻と、これらを大西洋に脱出させるために北海で敵艦隊の誘致、牽制を行
う本級小型高速戦艦8隻を1948年までに建造されるはずであった。
本級小型高速戦艦8隻は2個戦隊を編成し、英国本土への砲撃や北海での中小艦の掃
討などを企画し、スカパフロ−に集結するであろう英艦隊をドッガ−バンク付近に誘
致
し、その間に大型通商破壊戦艦がシェトランド諸島沖を大西洋に脱出する目論見で
あっ
た。
その後も北海という限局された作戦海面で積極的に活動し、可能な限り多数の英主力
艦を本土に牽制留置させることを期待された。そのため遊撃活動に必要な速力と、戦
傷を
受けても帰投可能な防御力が重視された。大損害を受けても、艦が浮かんでいる限り
戦闘力の
回復は可能であり、敵を牽制し続けられると考えられたからである。
英主力艦との決戦は意図されなかったが、英16インチ砲戦艦に対抗し得る最小限の
兵装を備えた。
船体
平甲板型船型の堅艦で、ビスマルク級より甲板一層少ない分乾舷が若干低く後部約
4.8mであるが、顕著なシェアを持ち前部約8mである。
高速発揮のための球状船首、広範囲な電気溶接と防御材を構造材としてもよく利用す
ることにより船殻重量の軽減を計った点は、同時代の他の独戦艦と同様である。
大きな相違点は、破片防御のため帝政時代同様に上部構造をできるだけ小さくするよ
う努めたことである。また司令塔は重砲直撃には結局意味をなさないので、重量節減
の
意味もあり英新鋭戦艦同様にこれを廃止し、破片防御を施したコンパクトな搭状艦橋
を設けた。
近海作戦用であるため、停泊中は陸上の兵舎に宿泊させて艦内住居設備を簡素化し、
その重量を防御に回した。
防御上の観点から正副二枚舵を前後に配置した。各所で重量節減に努力しているが、
操舵系には十分な重量を割り当て大面積の舵と大馬力の舵取機械を備え、操艦は容易
で
旋回性能は優秀だった。
防御
英がビスマルク級に対抗して新たに16インチ砲戦艦を計画しているとの情報によ
り、主要部は対16インチ砲防御とした。
想定砲戦距離は北海の気候条件より15000〜25000mとされた。
独戦艦としては珍しく集中防御的な思想により、防御区画の短縮を3連装砲塔の採用
などより図っていが、独伝統の艦首部装甲は施された。
徹底した水密細区画方式、優れたダメ−ジコントロ−ルなどは同様に伝統を引き継い
でいる。
正副舵取機室は重量を惜しまずに主要部と同等に防御した。
本級の主要部装甲要領は以下の通り。
平甲板の露天甲板は強度材を兼ねてWh40mmからなり、これに垂直に接して舷側外
板Wh40mmが水線下2.5mまで続く。露天甲板の3m下方には上甲板Wh100mmが
あり、さらに3m下方には弾片防御用に中甲板Wh20mmがある。
上甲板(水線状1.8m)に接して、外版の内方250mmに舷側甲鉄KCn/A300mmが
垂直
に中甲板(水線下1.2m)まで、さらに水中弾対策としてテ−パ−を付して薄くして
水線下2.5mで
厚さ100mm終わっている。
舷側傾斜装甲を採用しなっかたのは、建造時及び損傷修理の際の利便性を考慮したた
めである。
伊や米と同様の多層防御方式で、露天甲板又は舷側外板のWh40mmで被帽(APcap)
を破
砕したのち防御甲板.舷側甲鉄に命中させ、下方の中甲板で弾片を防御する仕組みで
ある。
水中防御として舷側より4mに水雷防御縦隔Ww45mmが内側に一層の防水区画と、
外側に舷側より防水区画二層と液層一を伴っていた。
機関
MAN社の新開発のV型24気筒17500馬力のデ−ゼル機関を8基搭載し、フルカン流体
接手で4基を1軸に結合して2軸14万馬力で32.5ノットを発揮した。重量節減のため伝
統の3軸ではなく、新開発の大馬力機関で2軸とした。7万トン級通商破壊戦艦は同機
関を12基搭載し、3軸21万馬力32ノットの予定であった。
本級では機関を横置きに設置し、機関区画は中心線縦隔を設けることなく前後4つの
機関室に分割した。
近海用のため搭載燃料は2100トンと少なくシャルンホルスト級の1/3であり、航続力
は20ノット3000海里でドイチェラントの1/3以下である。
砲兵装など
本級の主砲はビスマルク級と同じ38cmSKC/34である。前述の通り3連装に収め前
後に配置した。前甲板に集中しなかったのは、一発の被弾で両砲塔とも使用不能とな
るのを恐れたからである。砲塔装甲はビスマルク級より前盾が薄く(300mm)その
分天蓋が若干厚(150mm)くなっている。満歳時の重量節減のため主砲弾定数は各
門80発となっている。
5.9インチ3連装副砲塔を、主砲塔の背負い式に一基づつ配置し片舷6門の副砲力を得
ている。大和級と同様の副砲配置で、ここを防御上の弱点と指摘する向きもあるが、
弾火薬庫の誘爆対策が十分であれば問題ないと考えられた。(実際そうであった)
特筆すべきは4インチ時限信管式高角砲を廃止したことである。航空機の高速化や急
降下爆撃に対し、停船中はともかくとして高速航行中に時限信管式高角砲で有効な対
空射撃を行うのは不可能であり、費用.重量対効果が著しく低い事より、これを廃止
し高角機関砲を多数装備した。
大型水平爆撃機に対しては、5.9インチ副砲の仰角を75度まで上げ、信管調整用の
半自動自由装填装置を備え、高射装置に管制させ両用砲として対抗しようとした。
北海作専用のため味方陸上基航空隊の支援を受ける事を前提に、航空儀装を廃止し
た。
通商破壊戦艦にあった雷装はない。
戦歴
改Z計画はヒトラ−の承認を得て、1939年1月には本級一番艦仮称Oが起工され、2月
には二番艦仮称Pが、7月には6万トン級通商破壊戦艦仮称H、8月に同二番艦仮称J
が
それぞれ起工された。
しかし同年9月に大戦が勃発し工事はすべて中断してしまった。1940年のノルウエ−
作戦で水上艦の多くを失ったためOPの工事再開が命じられたが、フランスの降伏に
より状況一変し英の屈服もあと一歩と思われたので、再び工事中止となる。
潜水艦の建造を最優先する政策がとれれていたが、対英あしか作戦の延期が9月に決
定されると、工事の進捗していたOのみ建造再開の命令が下った。ブレスト空襲が激
しくなると逆に工事を急がせ、1941年8月に進水しマッケンゼンと命名された。進水
式には91歳の老マッケンゼン元帥も出席した。しかし独ソ戦のため兵器生産は陸軍が
優先され儀装に2年近くを要した。
1943年6月に竣工、艦隊に編入されたには11月である。ただちにノルウエ−北西岸へ
移動しムルマンスク船団に対する攻撃準備を行った。初陣は12月25日シャルンホルス
トとともにJW55B船団攻撃に出撃、しかし戦果無く帰投中、英戦艦デユ−クオブヨ
−クの
妨害に会い交戦の末これを撃退している。
この海戦が連合国側に与えた心理的影響は大きく、以降船団護衛には米新鋭戦艦まで
投入されることとなった。
一方独では1944年に入ると燃料事情の悪化が深刻化し、訓練もままならず船団攻撃の
出撃は不可能とまったが、テルピッツとともに北部ノルウエ−にあって連合国を牽制
し続け、
英米主力艦を英本土に釘付けにしていた。
5月に連合軍の北フランス上陸に備えるためにキ−ルに移動したが、激しい空爆に会
い
損傷し、修理の為ゴ−テンハ−フェンへ回航された。その後バルト海で陸軍を支援し
た。
1945年1月からゴ−テンハ−フェンからの避難民救出に従事し、リュンツオ−、
アドミラルシェ−アらと共に200万人以上を西方に連れ戻した。
4月13日スウイ−ネミュンデにて空襲により大破着底した。しかし後部砲群は使用可
能で、
海上砲台として露軍を攻撃した。
独降服の前日5月6日、捕獲を逃れるため自爆自沈した。
老マッケンゼン元帥静かに95年の生涯を終える半年前のことである。
要目
基準排水量27900トン 満載排水量30000トン
全長230m 最大幅30m 最大喫水9.2m
デ−ゼル8基、2軸 140000馬力 32.5ノット
搭載燃料2100トン 航続力20ノットで3000海里
兵装 38cm3連装砲塔2基 15cm3連装砲塔2基 37mm連装対空機関砲12基
20mm4連装対空機関砲8基
乗員1100名
注釈
7万トン級通商破壊戦艦について
H41の拡大改良型で、大西洋での潜水艦への補給を新たに任務に加え、多量の
燃料、食料を搭載する。主砲は16インチ砲8門だが、満載排水量は7万トンに達した。
デーゼル12基3軸21万馬力で32ノットを予定した。
コメント
初めて投稿いたします。かねてより攻撃力よりも機動力と防御力を重視する高速戦艦
(巡戦)、司令塔と高角砲の廃止、操舵系の重視、多層防御など妄想しておりまし
た。
今回は満載排水量の上限が決められているので、近海用として基準排水量を稼ぐこと
としました。
重量の配分はいいかげんですが概ね以下の通です。
船体 8500 t
装甲 10200 t
機関 4200 t(主機+補機)
武装 3700 t(含管制装置)
弾薬 600 t
乗員 400 t(含食料、水、諸設備)
基準排水量 27900 t
燃料 2100 t(含潤滑油)
満載排水量 30000 t
巣田夏生さんに素晴らしい絵を描いて頂きました。この場を借りて御礼申しあげま
す。
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