
諸元(1941年竣工時「アドミラル・ゾーヒョン」) 基準排水量 22,500t 満載排水量 26,800t 全長 223.25m 全幅 28.0m 喫水 9.45m 機関 ディーゼル3軸 出力154,000hp 速力 33.0kt 航続力 18,800海里/18kt 乗員 1,582名 武装 28cm砲(L54.5) 3連装 2基 15cm砲(L55) 連装 6基 10.5cm高角砲(L65)連装 8基 20mm機関砲 4連装 4基 単装 8基 53.3cm水上発射管 4連装 2基 艦載機 アラドAr196水上偵察機 10機 装甲 舷側200mm(弾薬庫のみ280mm) 甲板100mm 主砲360mm 同型艦 「アドミラル・ゾーヒョン」「アドミラル・リヒテンフェルス」「アドミラル・ノルドマン」 「アドミラル・エンゲルハウト」「ラデッキー」「アドミラル・ベディッカー」 「アドミラル・ロイター」「ズリニュ」(未完)「シュツェント・イストファン」(未完) 第1次世界大戦における敗北とベルサイユ条約の制限によって軍備を大きく制限されていたドイツは 1935年のナチス政権によるベルサイユ条約破棄、再軍備宣言によってその制限を脱し、戦艦を初め とする海軍の再建に着手する事になった。この中で海軍軍備において注目されたのは再軍備宣言に先立 つ1933年に竣工したドイツ独自の装甲艦「グロス・ドイッチュラント」(後に「リュッツォー」に 改名)級である。本級は、ベルサイユ条約の制限である排水量10,000t、主砲口径28cmを最 大限に活用した結果、巡洋艦を砲力で圧倒し、戦艦相手には速力の優位を活かして戦闘を回避できると いう点で他国の関心を大いに集め、フランス「ダンケルク」級や日本「超甲巡」等本級を意識した対抗 艦の計画に走らせる事となった。 さて、肝心のドイツ海軍であるが、ベルサイユ条約破棄に伴って軍艦の性能に対する制約が消えた事 で本格的な戦艦戦力の整備に入ることとなり、「ドイッチュラント」を徹底的に大型化、強化した形の 巡洋戦艦「シャルンホルスト」級に続いてナチス・ドイツ初の本格的戦艦「ビスマルク」級の建造に着 手した。そして、これら4隻の建造に続いて1938年には対英戦を想定した大規模な艦隊建設の計画 に着手する事となる。この計画では「ビスマルク」級に続く大型戦艦や「シャルンホルスト」を発展さ せた巡洋戦艦に加えて、ドイツ海軍としては初の航空母艦、中核戦力としての装甲艦、あるいは他国の 重巡洋艦に対抗する重巡洋艦やそれらを補佐する軽巡洋艦、駆逐艦(ドイツでは大型水雷艇として整備 されている)などが計画、検討されている。そして、計画の初期段階において最大の問題点となったの が中核戦力となるべき装甲艦、あるいはそれに類する重巡洋艦と巡洋戦艦であった。 重巡洋艦の運用思想としては巡洋艦の一般的な役割である索敵、哨戒に加えて艦隊決戦時の敵艦隊誘 出や牽制、遊撃などといった任務も重視されるが、ワシントン条約の制約の関係上、巡洋艦としては性 能的にいびつな、コストに見合わない艦となりがちである。また、索敵、哨戒といった巡洋艦としての 任務を切り捨てるのであれば艦隊決戦の主力として用いる事が出来ない旧式の戦艦でも敵艦隊誘出や支 援には充分に用いることが可能である。結果として、水雷戦隊の支援戦力としての条約型重巡に固執し た日本以外の各国、特にイギリスでは早々と重巡自体を切り捨て、国力の大きなアメリカはワシントン 条約の失効と共にそれらの問題を大型化で解決した重巡洋艦「バルティモア」級の建造に移行している。 ドイツ海軍自身も大型重巡洋艦である「アドミラル・ヒッパー」型を建造しているが、ベルサイユ条約 で戦力基盤を失っていたドイツ海軍には日米英の旧式戦艦による二線級の部隊のような部隊を編成する 事が出来ないため、本来そういった部隊で賄う任務に投入するための艦をも新たに建造する必要があっ た。これらに用いるには重巡洋艦では絶対的な火力などの性能で不足があり、しかもそれに関してドイ ツは装甲艦「ドイッチュラント」という解答を既に有している。また、敵哨戒部隊や主力艦隊前衛の軽 巡や水雷戦隊に対抗する巡洋艦隊、あるいはドイツ海軍自身が前衛や哨戒部隊として用いる巡洋艦隊も 当然ながら整備しなくてはならず、こちらに関してはコストの問題上重巡では高価すぎて数が揃わない 以上、軽巡洋艦の整備もまた必要である。要するに、ドイツ海軍は重巡を必要としていなかったのだ。 一方、装甲艦、及び巡洋戦艦についてもやはり問題があった。「ドイッチュラント」級の場合、竣工 当時こそ快速とされていた28ktの速力は新型戦艦に対してもはや有利とは言えず、防御力に至っては 1万tという制約上、ほとんどおざなりになっていた。これに対して既に「ダンケルク」のような対抗 艦も登場している以上、それらの艦の性能もふまえた艦とならざるを得ない。その意味では巡洋戦艦と いう選択肢は有力ではあるが、既に戦艦の最大速力が30ktになろうというという時代では「戦艦並の 艦型を持った巡洋戦艦」という艦では戦艦との運用上の差別化が難しいという事になる。事実、装甲艦 の改良として計画されていた「シャルンホルスト」型は主力となる戦艦がまだ存在していなかったとい う事もあって巡洋戦艦として建造されたが、竣工時の28cm砲9門は艦型の割に火力が低過ぎるとい う評価を受け、「ビスマルク」と同様の38cm砲6門に換装した後は実質的に高速戦艦として運用さ れている。これに対して、今回の計画ではあくまでも主力戦艦が存在するという前提の元での計画であ り、よって、必要とされる性能は「巡洋艦」としての物が優先される事となる。 これらの事情に対し、最終的な結論としては新型戦艦である「H」級(後の「フリードリヒ・デア・ グロッセ」級)軽巡洋艦以下の中小型艦艇は当初の予定通りに建造するが、当初「シャルンホルスト」 の軽装甲型として計画が進んでいた巡洋戦艦「O」級は計画中止、既に隻が建造中であった「アドミラ ル・ヒッパー」級重巡洋艦以降の重巡洋艦計画は大型軽巡洋艦に移行することとなり、これらの大型軽 巡と戦艦の中間的な戦力となる大型装甲巡洋艦として本級が建造される事となった。 こうして計画された本級は、「ドイッチュラント」級と同様「重巡洋艦以下の艦は砲力で圧倒し、戦 艦に対しては速力で主導権を握る」と言う方針をそのまま踏襲した上で、巡洋艦として運用するために 充分な30kt超の速力と戦艦を相手にした誘出、牽制に用いるに必要なだけの防御力を持たせることと なった。その方針に基づき、また、建造費用や期間を圧縮するために既存の物が用いられることになっ た主砲は戦艦を相手にある程度の効果を期待できる最小限度として「シャルンホルスト」級で用いられ た28cm3連装砲塔を2基搭載、副砲以下の砲に関しても戦艦に準じた装備とされた。また、航空偵 察力の不足を鑑みて、艦型の大きな本級には艦載機12機に本格的な格納庫の採用という高い水上機運 用能力が与えられた事で主力艦隊の眼として、また、対英戦初期においてはされた単艦での通商破壊作 戦時においても充分な能力を持った有力な艦として運用されている。 本級1番艦「アドミラル・ゾーヒョン」は二次大戦中の41年3月に竣工、同年2月に竣工していた 2番艦である「アドミラル・リヒテンフェルス」や「シャルンホルスト」、「グナイゼナウ」等と共に ブレストに進出して大西洋方面で作戦行動に従事、特に41年5月のライン演習作戦では英艦隊の度重 なる襲撃で危機に陥った「ビスマルク」を救援するために、空襲で損傷を受けながらも出撃可能であっ た「ゾーヒョン」が「シャルンホルスト」と共に出撃、英艦隊と交戦した。 大戦中期以降ドイツ大型艦が活動を控える中でも本級は比較的活発に活動、3番艦以降も北海、北大 西洋、あるいは地中海などで活躍しているが、中でも44年11月の第2次北海海戦において本級は巡 洋戦艦「シャルンホルスト」と共に「ゾーヒョン」「ノルドマン」「エンゲルハウト」の計3隻が巡洋 戦艦隊として出撃、「リシュリュー」「スードゥ」「フイクッス」を主力とする連合国艦隊との激戦の 結果、「ゾーヒョン」「エンゲルハウト」が沈没している。 その後、連合国に制海権を奪われて苦戦を強いられつつも本級は出撃を繰り返し、後期建造艦は艦載 機運用区画を改造する事で世界初の艦対艦ミサイル運用艦となるが、実際にこの状態で竣工したのは 「ベディッカー」のみであり、「ベディッカー」も実戦でのミサイル運用は行われないまま「ノルドマ ン」「ラデッキー」と共に46年10月にはヴィルヘルムスハーフェンで空襲により大破着底の末放棄 された。その他の艦も47年5月に地中海で「リヒテンフェルス」が沈没、48年2月のスカゲラク海 峡海戦で戦艦「グロス・ゲルマニア」と共に大規模な空襲を受けて「ロイター」が沈没したことで、ナ チス・ドイツ海軍の壊滅と共に本級も全艦が失われ、過去の存在となっていったのである。 作者より お久しぶりです。と言うより、覚えていてくれる方おりますでしょうか? 創る艦が皆へっぽこ巡洋 戦艦というワンパターン野郎、明石耕作です。今回の競作、テーマが巡洋戦艦と言うことでしたが、満 載排水量30000tはかなりきつかったです。と言うか、最初は基準排水量30000tで考えてい たのでさらに驚いてしまいました。とりあえず、最初の方針から既に小さくまとめる事にしていたので 方針を変える必要が無かったのは不幸中の幸いでしたが。 で、今回の方針。方向性としては「シャルンホルストをベースに何をどう切りつめるか」「ドイッチュ ラントをベースに何を付け加えるか」の二つの方向性があるなぁ、と。で、前者は運用思想的には割と 普通の巡洋戦艦(と言っても高速戦艦が確立した段階で敢えて巡洋戦艦と言うのもどう考えればいいの かちと難しそうですが)と言うことで技術的、設計的な話になるのに対して後者はベルサイユ条約のた まものである装甲艦を運用思想、戦略的にどう解釈するか、そっちの方をメインに持っていけるなぁ、 といった感じがしました。で、技術的、機械的に説明、解説するのはは自分には難しいので運用面、戦 略面で話を進めることにして後者を選びました。で、一応出した解答が「軽巡の発展形として登場した 条約型重巡洋艦やその発展型の重巡を圧倒できる『装甲巡洋艦』」です。とはいえ、結果的には「真実 一路」でSUDOさんがされていたドイッチュラント級の解説の下手な焼き直しにしかならなかったの が残念です・・・・・・ で、設計、デザイン面での解説。平たく言ってしまえばシャルンホルストの航空戦艦版的なデザイン でまとめました。で、防御に関してはドイツ艦としては珍しく集中防御。弾薬庫の装甲は他よりも分厚 くしているというのもその関連設定。満載30000tで全体防御では戦艦相手に持ちこたえる様な装 甲は無理でしょう。航空装備に関してはかなりぎこちない配置です。艦尾側の死角について割り切って しまえばよかったのですが、それが出来ないせいで艦尾側は副砲と高角砲の背負い配置で強引な艦尾側 射界の確保。さらにクレーン配置の都合上、格納庫は「クレーンで甲板に上げて艦首側から収容、艦尾 側から出してエレベーターで艦載機甲板に」というややこしい方式に。いくら何でももう少しスマート な配置にすべきなんでしょうけどねぇ(汗) 今回は戦歴も書いてみました。「スードゥ」の名前も出ているとおり、日米英連合vs独伊枢軸&ソ連 の自分内設定のお話でですが。史実通りでは開戦で建造中止で終わりだし(笑) 艦名はWW1当時の ドイツ海軍提督&プリンツ・オイゲンの例もあるのでオーストリアの主要艦名から。WW1のドイツ提 督といえばヒッパー、シュペー、シェーア提督なんですけど、もう使われているのでネームシップにし たゾーヒョン提督以外はジュットラント海戦の提督からです。 さて、今回も大した作品にはなりませんが、枯れ木も山のにぎわいと言うことで。 2002.4.9 明石耕作 P.S.割とどうでも良い話ですが、某ゲームのチャットルームでここのことを話題にしましたら何人 か興味を示して投稿するようになりました。で、宣伝した本人は何をやってるんでしょうか(汗 |