リパブリックFT(NF-2)
艦上戦闘機



 フラップと降着装置を下げ位置にして着艦体勢に入るFT-1「スパウト」。丸断面の胴体でありながら盛り上げられたコクピット部からの視界は充分そうである。機銃のうち内側2丁は内翼側に、外側1丁は外翼側に弾倉を設けたため、真ん中の1丁だけが奥に引っ込んだ独特の配置になっているのが分かる。


 セヴァスキーから改称して約1年、リパブリック社にとって待望の海軍戦闘機への再挑戦の機会が訪れた。前回、ブリュースターXF2A、グラマンXF4Fの両有力候補機に割りこむように参加させたNF-1が何一つ要求仕様を満たさず、実用性の面からも散々な評価を受けるという結果に終わったことの雪辱戦である。おまけに、リパブリックにはトンプソン杯レースにおいて4、5位各1回、ベンディックス杯レースにいたっては1937年から1939年まで3連覇をなしとげたことによる「空冷高速機の第一人者」としての誇りがあったから、負けるわけにはいかなかったのだ。
 当初、駄作機NF-1の記憶も新しい海軍当局はリパブリックの参加申込にいい顔をしなかったが、「日本海軍への納入実績」を振りかざして迫るアレクサンドル=セヴァスキーの熱意にほだされ、1940年11月末、試作機XFT-1の発注がなされた。
 しかしながら、リパブリックでは同年9月に試作契約を結んだばかりの陸軍向けの高速戦闘機XP-47の開発作業もたけなわとなっており、本機の開発スケジュールはどうしても延びがちにならざるをえなかった。しかも、艦上機の経験に乏しい同社にとって、XFTの開発はその初期段階から基礎研究と試行錯誤の連続となった。
 機体の基本設計そのものはP-47のための研究成果を援用した、といえば聞こえはいいが、従来のリパブリック製単発機の構造様式を踏襲したオーソドックスなものとして開発期間の短縮を図った。ただし、ターボ過給器の搭載が要求されておらず、また空母への搭載効率の向上の必要から、P-47に比べてふたまわりほど小さい規模の機体とされた。また、搭載エンジンが特に高高度においていささか非力であったことから、特に速度性能向上の観点から各所に空力的洗練を施すため、ダクテッドスピナーやカウリング内に収められた気化器空気取入口、V字型風防といった特徴を持つ機体ができあがった。



 悪天を背に、下方の敵機に襲いかかろうとするような機動を見せるFT-1。ドーサル部の大きな透明部は、練習機型への発展を考慮したためだともいわれるが、詳細は不詳。乗降ステップを示す白線から分かる胴体の丸みと、固定式の尾輪に注目。


 同時進行していたP-47の開発・量産化作業が幸いにして順調に進んだため、当初優先順位の低かったXFTの開発は、1941年中盤になると急ピッチで進められ、試作1号機は1942年2月半ばには完成していた。しかし、折から量産数が急造していたSB2C艦爆への供給が優先されたR-2600エンジン本体及びライト社の担当技術者の手配が遅れたため、初飛行は4月後半にずれこんでいる。
 飛行試験が始まると、まずはエンジンの冷却不足が問題となった。機首の形状改善による抵抗減少とプロペラの推進効率向上のために採用されたダクテッドスピナーの中に充分な冷却空気が流れなかったのである。結局、右翼下にだけ設けられていたオイルクーラーを左翼下にも増設して「半油冷」の冷却法をとることとしてこの問題を解決することとした。
 また、機銃収納部の内外で桁間トーションボックス構成部材の荷重負担の割合が異なる構造に起因する主翼の捩れ、着艦フック伸縮機構等の修正も必要となったが、もともとリパブリックらしい強度に余裕のある構造を有していたため、これらの改修によって著しく自重が増したり儀装品の搭載に支障を生じるといった事態には到らず、部分的な改設計の積み重ねだけで処理することができた。
 一方、離着艦時の視界を確保するためにコクピットに向かって盛り上がるようなラインを有する背の高い胴体は、胴体内に800リットル近い燃料を収納できるだけのスペースを有し、P-35で問題となった被弾に弱い翼内燃料タンクを廃止することができた。
 ドーサル部には大きな透明部分が設けられ、後方視界の改善を図っているが、重量面で若干のハンデがあることと被弾時のガラス飛散による乗員への危険を懸念して、特に最後端部分については金属張りにすることが実用試験において検討課題とされた。また、機銃が内外翼に分けて装備されていて装弾作業の流れが悪いことや、内翼下面に爆弾架が設けられない構造であることも指摘されたが、機体の小型化・空力的洗練に伴うやむをえない問題であることから、対策の優先度は低いものとされた。  性能面では、最高速度こそエンジンの性能不足から要求仕様に若干届かなかったが、コンパクトにまとめた機体のおかげで加速性能はすぐれており、特に低空での連続機動が可能な点は、日本軍の航空雷撃を阻止する必要を痛感していた海軍当局に強くアピールするところとなった。また、機内燃料だけでも約1200kmの航続距離を有する点も高く評価されている。



 三点静止角が大きすぎて地上視界が悪く、グラウンドループにも入りやすかったP-35の反省から、意図的に長めに設計された胴体だが、絞りこまれたダクテッドスピナーの開口部との対比のせいか、あまりスマートに見えない。また、P-47にも通じる主脚トレッドの広さは、機体全体にどっしりとした感じを与えている。


〜諸元〜

翼幅36ft.11in.(11.25m)
全長30ft. 8in.( 9.34m)
全高(水平姿勢)13ft. 5in.( 4.08m)
翼面積250.89ft.2(23.31m2)
自重6153lbs(2791kg)
最大発艦重量8739lbs(3964kg)
発動機 ライトR-2600-8離昇出力 1700hp
最高速度324.5kt@15000ft
(601km/h@4572m)
実用上昇限度31500ft(9600m)
航続距離(胴体下150gal増槽使用)1000nm(1852km)
武装
  内翼機銃ブローニングM2 12.7mm機銃×4
  外翼機銃ブローニングM2 12.7mm機銃×2
  爆弾類(胴体下・外翼下)1200lbs(544kg)