第1章 みなぎる力
1938年、二期目の半ばを過ぎたルーズベルト政権は、経済恐慌の
混乱をどうにか収拾し、米経済も底を打ったようにみえたが、
いかんせん、本格的な上昇のための牽引力がいまひとつ不足していると
感じていた.
当時のGNPを、イリノイ大学の推計でみると、
米国680億ドル、
英国220億ドル(インド含まず)、
ソ連190億ドル・ドイツ170億ドル・フランス100億ドル・イタリア60億ドル・
日本40億ドル.
ソ連・ドイツ・日本は、対GNP比30%を超える国防支出を続けていたが、
米国のそれは、わずか1.5%にとどまっていた.
公共事業だけでは経済浮揚が難しい.
何とか理由を見つけて、本格的な軍備拡張につなげたい.
これがルーズベルト政権における経済・軍部閣僚のいつわらざる本音だったのだ.
20世紀における米国の戦略は、
@英帝国の資産を強奪する
A中国市場になだれこむ
ことを骨子としていた.
狭い欧州の内輪のことなど、どうでもいい・これがモンロー主義というものの正体
だったのだ.
@の目的は、欧州大戦(WW1)によって、達成のめどがつき、あとはインドを
独立させれば仕上がる.
Aの目的には、思いもかけない新興勢力が立ちはだかろうとしていた.日本だ.
畏れを知らぬ夜郎自大には唐の実力を、まつろわぬカルタゴにはローマの底力を
みせつけねばならぬ.
第2章 海洋帝国建設・あるいは妄想の産物
詳しい議会での審議経過は省略するが、1938年度予算で、史上空前ともいえる
大海軍拡張計画が承認された.
陸軍航空隊の10・10ボマー計画をヒントに、桁違いの海軍投資が行われることに
なったのだ.
米海軍は、もはやパナマ運河のキャパシティに束縛されることをやめた.
必要なものは、太平洋・大西洋それぞれで、必要なだけ用意すれば良い.
手始めに、シアトル郊外と、バージニア州に、あらたな海軍工廠の建設を始めた.
そのドライドックは、長さ350m×幅140mという、空前絶後の規模である.
圧倒的な海軍力を整備して、戦わずして欧州・ソ連・日本などを屈服させ、
世界の海洋通行や資源管理・通商というものについての米国に都合のよいルール
を広め、永遠の繁栄を米国にもたらすための投資・という説明がなされた.
建艦計画
@10万トン、21インチ砲3連装(この砲塔重量が4500トン=1000万ポンド)×3の超戦艦群
A5万トン、16インチ砲3連装×3で、34ノット、あらゆる敵艦艇を捕捉撃滅できる
スーパー巡洋艦群
B10万トン、搭載機(TBD、F4F)300機、300m×120mの飛行甲板をもつ双胴空母、
などが水上打撃部隊の肝になる.
海軍機開発
これも、いろいろ画期的なプランが建てられたが、コアは
〇4発・あるいは双発で、行動半径1600km、搭載量2700kgの艦上攻撃機
が決め手になった.
これさえあれば、世界の主要都市・工業地帯の90%が、米海軍の攻撃可能エリアに
収まることになる.
折りしも、1939.12月に発令された陸軍迎撃戦闘機コンペに破れたノースロップ社が、
その試作機XP-56「シカダ」の機体と脚を強化し、翼下パイロンを装備した
4発複座艦上戦闘攻撃機を提案してきた.
詳しくは、第5回競争試作・米陸軍迎撃機欄をご欄いただきたいが、
全長:20m
全幅:約18m
翼面積:120平方m
機体重量:11トン
STOL運用時の最大離陸重量:16トン
最大離陸重量:26トン
エンジン:アリソンV型12気筒 1,275馬力×4基
武装:20mm機関砲×4門(弾丸 各300発)
および翼下パイロンに2700kgまでの爆弾または魚雷
最高速度:680km/高度7500m
失速速度:時速36マイル(飛行重量20トン未満の場合)
航続距離:最大燃料搭載時10,000km
乗員:2名
というもので、試作機の飛行を見た海軍関係者は「これはいける」という
感触を持った.なにより、着陸距離が短いのが、空母での運用に望ましく
思えたのだ.
第3章 夢(妄想)をカタチに
なにしろ、国防予算が10億ドルから50億ドルに強化され、うち20億ドルが
妄想建艦計画に投入されるのだ.原爆開発予算総額に匹敵するものを
毎年.
とはいいつつも、双胴型艦船の経験など、あるはずもない.
いきなり10万トンの空母というのも、未知のリスクが多すぎる.
そこで、1940年、ぐっと小型(27000トン)の空母を予算化し、あらゆる新機材
の運用試験を兼ねた戦力充実をはかることになったのだ.
いきなり難問が降りかかった.
新開発の23m×28mの超大型エレベータ・これは従来型の4倍の重量が
あるのだが、この昇降速度が、どうやっても従来型の半分でしか動かせない.
やむをえない.
飛行甲板とは別に、整備甲板からも発艦できるようにしよう.
こうして、整備甲板空間は7mの高さを持つ開放型となった.
双胴艦体が、通常の形態では抵抗力が大きく、速度を犠牲にするか、大出力
の機関・これは相当にスペースと重量をくう・を搭載せざるを得ない.
しかし、これでは27000トンには収まらないし、次の本命・10万トン空母の計画
にも影をさすことになってしまう.
そこで、主艦体を、容積12000立方メートルの魚雷型x2とし、電気推進、
80m×210m×厚さ16mの箱型整備/飛行甲板部分とはカミソリ型断面の
橋脚構造で繋げる.
こうすれば、抵抗はぐっと少なくなり、少ないパワーで30ノットの発揮も可能・
と計算されたのだ.
エレベータは、先の超大型×1基、通常型×2基.
搭載機は、従来型機材で100機.(一部は飛行甲板に係留)
カタパルトは、大型機用を飛行甲板に2基、
従来型を整備甲板に1基設置する.
対空砲座は汎用型を全部で28箇所設置した.
これは、5インチ連装砲
あるいは40mm4連装機関砲
のどちらかをチョイスできる.
重量軽減のため、飛行甲板に装甲などは一切設置されない.
「これなら、いきなりトーキョーを爆撃できるな」
第4章 相次ぐ設計変更
原案では、水中艦体部分の断面が円形で容積12000立方メートル/片方
のものを想定していたのだが、予備浮力が不足気味.
そこで、楕円形・天地10m×横方向15mと拡大し、容積は1本あたり
22000立方メートルと大幅に拡張された.
その結果、基準状態(27000排水トン)では、水中艦体部が水面に露出し、
最大巡航速度は24ノットに低下してしまう.
重油・航空機用揮発油(併せて18000トン)・航空機・弾薬などを満載すると
48000トンの排水量となり、図版の水線になり、速度も30ノットが可能になる.
当初開放型だった整備甲板の艦首部には、荒天時に閉じるゲートが
設けられた.フェリーのそれを想像していただきたい.
また、28箇所の汎用砲座も、特に艦側面のものが重量がかさみすぎ、
5インチ高角砲は飛行甲板上に連装x4基固定とし、他は40mm機関砲座
とされた
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