日本の未来を拓く! あたらしい主力艦
謎のX 著
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| 想像図は本案の仮称「金峰」型戦艦 (230×4=920ピクセル) |
| 拝啓 あけましておめでとう御座います。 海軍軍令部及び海軍艦政本部の皆々様に於かれましては、益々ご健勝の段、お慶び申し上げます。 さて、本題に入ろうと思います。 実は、不肖この私も、去る昭和10年8月に発令されました、いわゆる「金剛型代艦」の競争試作に参加してみたく思い、このように至らぬ資料を送付させていただきました。 経験の乏しいばかりに、考慮の足りないところもあろうかとは思いますが、帝国の為を思い、このような行動に出た次第です。 是非ご一読お願いします。 なお、本書はこの型の概要を簡潔に記した物ですので、詳細については添付の図面及び解説書をご参照下さい。 <1、主要目> ・船体性能の部 艦種:戦艦 船型:平甲板型 全長:230m 水線下最大幅:29m 喫水:9m 基準排水量:35,000トン 機関:重油専焼缶8基・ギアード蒸気タービン4軸 出力:176,000PS 最大速力:34ノット 航続距離:18ノットで8200浬 燃料搭載量:重油5500トン ・装甲の部 舷側:270ミリ(傾斜18度) 防御甲板:180ミリ(一部200ミリ) 主砲塔前楯:500ミリ 主砲塔天蓋:250ミリ バーベット部:400ミリ 司令塔:420ミリ ・砲熕兵装の部 36cm(14インチ)50口径3連装砲3基 12.7cm40口径連装高角砲11基 25mm3連装高角機銃14基 13mm連装高角機銃6基 ・航空兵装の部 水上偵察機4機 <2、目的> まず、今回の発令に深く影響を与えた第二次ロンドン海軍軍縮条約から、見る必要があるでしょう。この条約によると、新造戦艦は35,000トン、36サンチ砲以下、新造空母は23,000トン、155ミリ砲以下でなければならず、艦齢26年を超過した物の代艦建造のみが認められます。在来戦艦については従来通りで、主砲口径を拡大せず、3000トン以内に収まる改装は、施して良い事になっています。巡洋艦及び駆逐艦も、代艦建造のみとされます。概ね巡洋艦が20年、駆逐艦が16年で老朽化したと見なされることになっています。雷装に関する制限はありません。その他の艦種は省きますが、主力を支える数量を確保することについて、制限はありません。要するに、老朽化したものの代艦建造のみ認められる、と見て良いと思います。 この状況下に置かれた我々としては、戦艦決戦で英米の海軍と戦うことは、残念ながら無謀と言わなければなりません。そこで我が帝国海軍は、魚雷の破壊力と射程を従来の戦艦戦力に加えて、これと戦うという方針を打ち出しました。つまり、水雷駆逐艦と一等、二等の巡洋艦の魚雷攻撃で、敵主力艦隊に損害を与え、我が戦艦で止めを刺すのです。現条約においては、駆逐艦と巡洋艦の増勢分を建造することは禁止されておりますから、既に、数量では劣勢なものの、強力な水雷戦力を持つ我が国には、有利であると言えます。さらに、樅型、峯風型駆逐艦は、老朽化により代艦建造が認められているので、まだ多少増強の余地があります。この戦術では、我が戦艦には敵戦艦の砲火を引き寄せ、耐える防御力と、逃走を許さない速力が必要です。 しかし、現条約下に発令されました新戦艦の基準排水量は、35,000トンとなっており、防御力の極端な向上を求めるのは難しいでしょう。また、戦艦の本質が他のどんな艦にも優る火力であることは自明の理ですが、これも14インチを上限とされております。数について制限が無いとは言っても、排水量の上限から、極端に数を増やすことは出来ません。仮に実現したとしても、他国を無意味に刺激し、また効果も高いとは言えないでしょう。以上の観点から、新戦艦は戦艦群の中核として長門型を凌駕する物にはなり得ない、と考えます。 そこで本案では、まず速力に重点を置き、その次に火力と防御力の向上を目標としました。特に速力については、圧倒的優速を誇る水雷戦隊に追従できる事を目指し、この機動力を損なうことなく、援護することが出来る艦を目指します。他のどんな艦種よりも速い、又は同等の速度を持つことで、他の戦艦とは異なり、どんな戦いにも参加することが出来、そして戦艦としての攻撃力で、必ずや我々を有利に導くことでしょう。特に、数で優勢な英米の巡洋艦戦力に対し、常に戦艦で対抗出来る事の有利さは、言うまでもないでしょう。火力と防御力については、火力は制限されているので、将来の拡張に期待するしかありませんが、いずれも可能な限り長門型に比肩する物を目指すことにします。 それでは、以下より本案の示す戦艦の各項目について、簡単に解説させていただきます。 <3、推進機関連> 機関は実績のあるギアード・蒸気タービンとし、四軸推進とします。ボイラーは重油専焼缶としますが、速力確保のため、さらに蒸気条件を上げた新型機関の開発を推奨します。これは戦艦用主機としての意味ですから、現在他艦種で実験中、あるいは採用済みの物を参考に拡張すれば良いと考えます。目標としましては、ボイラー8基でタービン8基、2軸を結合して減速し、最終的に4軸推進の形態を取り、17.6万馬力で34ノットを目指しております。巡航用タービンの搭載という型式もありますが、本案では行わず、重量とスペースの節減に充てたいと思います。これに対して我が帝国の技術実績を考慮し、新規開発での性能向上を前提とすると、以下の図のような構成に収まる物と予想しております。 舵は従来通り平行2枚設け、冒険を避けようと考えます。 |
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| 装甲要領概略(側面) 緑色は缶室及び機械室 |
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中央部断面図 桃色は重油漕、黄色は注排水区画 |
| <4、防御関連> 防御ですが、想定する交戦相手は、やはり新型戦艦であるからには、在来の最強である長門型を選定し、2万mから3万mにて耐えることを目指します。下の方に46サンチ砲を搭載可能云々と書いておりますが、これに対する防御を施すと、実現不可能なほど重量が増加するため、この水準に抑えておきます。もっとも、条約上は36サンチが限度なので、十分と考えます。防御方式については、八八八艦隊計画艦の物を基礎にしております。つまり、舷側装甲は270ミリですが、これを18度の傾角を持たせて取り付けます。36サンチ砲弾防御としては十分ですが、41サンチ砲には当然ながら耐えられませんので、奥の70ミリ傾斜装甲によって、最低限機関部を保護し、限定的に耐える考えです。 防御甲板は、重量と広さの確保を目的として、基本的に一枚となりますが、昨今飛行機の性能向上が加速されているようなので、―――例えば陸軍は、1トン爆弾5発を抱えて2000kmを飛ぶ超重爆を保有していると聞きます。海軍においても、対艦攻撃を考慮した九試中型陸上攻撃機や九試艦上攻撃機が優秀な試験結果を出しております。―――万が一を考えて180ミリを確保し、部分的に増厚する方向で考えています。上図を参考にしてください。なお、機関室防御のため、薄目の装甲領域をこの中に設けてあります。 任務の性質から、水線下の防御は極めて重要な意味を持ちます。要領としましては、まず最外部に艦体と一体化したバルジを設け、内側に重油漕を置き、これらによって魚雷の爆発位置から距離を置き、かつ爆圧を緩和します。内側に防御板を取り付けます。厚さは70ミリ、テーパは無しです。注排水区画は防御板の内側に設け、境にはそれぞれ24ミリの装甲板を配置します。非防御部については、主防御板の厚さを50ミリに減じ、注排水区画の一部を水密構造の重油漕として使用しますが、基本的に同一構造となります。 <5、火力> 世界最大口径砲を率先採用してきた我が海軍ではありますが、この場合は不可能です。従いまして、上限である36サンチ砲を3基の3連装砲塔に収め、艦首側に2基、艦尾側に1基配置することにします。極めて常識的なところですが、射界、防御、機関配置、そして排水量制限などから、総合的に見てこれが最も良いと判断しました。しかし、各砲塔周囲は、条約失効の折には、直ちに41サンチ3連装砲(連装ではありません)、若しくは46サンチ連装砲へ換装可能なよう、重量及び容積の点で、余裕を持たせて設計されてあります。また、バーベット部周囲の構造はユニット化してあるので、換装の際にまとめて取り替えることで、工期も縮減できると思われます。この場合は、重量増大によって速力が1ノット弱低下すると思われます。なお、記述の必要は無いかとも思われますが、36サンチ3連装砲塔、41サンチ3連装砲塔、46サンチ連装砲塔とも存在していませんので、新規に開発する必要があります。当然のことですが、存在していない以上、図中の主砲塔は想像の域を出ません。 副砲は重量節減の観点から、高角砲と共用します。これは八九式四〇口径一二糎七粍高角砲を、連装砲塔に収めて用います。巡洋艦には火力不足になりますが、その場合は主砲か、状況によっては味方巡洋艦を当ててください。本型の想定任務から考えると、敵に戦艦が居ない、又は少ない可能性もかなり高いので、巡洋艦は主砲で叩くものと考えても良いと思います。数は11基を予定していますので、その点では不足は無いと考えます。なお、試作中の長砲身10サンチ級高角砲ですが、駆逐艦相手としても、これでは対艦打撃力が過小に過ぎると思います。もしこれを採用する場合には、別途副砲を用意する必要があるでしょう。この場合は14サンチ級で、一定程度の防空能力を持つ砲が適当だと考えます。 高角機銃は、差し当たってあの程度搭載する予定です。こちらは試験中の新型高角機銃を搭載する物とし、図中でもそうなっています。ただし、前述の九試中攻のような機体を想定すると、25ミリでは阻止能力が不足することも予想されますので、その場合に備え、さらに大口径高性能の高角機銃の開発をお勧めします。大口径化によって射程距離も延伸し、つまり敵機一機に対する射撃可能な時間も増大し、さらに僚艦上空に防御火網を張ることも可能になると思われますので、その点からも開発を勧めます。なお、副砲・高角機銃とも、射撃指揮装置によって数基ごとが制御されます。 <6、その他艤装> 航空機につきましては、艦尾に火薬式射出機2基と「クレーン」を1基装備し、要求の通り水上偵察機4機を搭載する予定です。格納庫は設置せず、全機とも露天繁止の形になります。 煙突は大出力の観点から2本となりました。1番煙突を思い切り後ろに持ってくることによって、前檣楼への煤煙吹き付けを避ける予定です。仮に不十分な場合に備えて、覆いを装備する計画もあります。図では装備した状態になっています。煙路途中には「蜂の巣装甲」を用い、防御力の向上に努めています。 探照灯は中央上部に設置しました。数は4基で、片舷2基の装備です。防空火器もそうですが、まだこの付近には余裕があるので、各種機器は必要に応じて増備することが出来ます。現在は短艇を置くことになっておりますが、想像図では描かれておりません。 乾舷が高いため、艦首のシアは弱いものです。速度向上のため、水線下には球状艦首を採用しております。電気溶接についても、軽量化の観点から見て、全面的に採用することを前提としております。 <7、予定艦名> これはまったくの蛇足なのですが、金剛型代艦であるこれらには「金峰」、「阿蘇」、「飯田」を希望します。これらはすべて、私の故郷である熊本県内の有名な山の名前です。山の名前は巡洋艦用なのはわかっていますが、金剛型代艦ですし、寛大な決定を下されれば、望外の喜びであります。 以上で、概要を終わらせていただきます。詳細は、前述の通り添付の図面及び解説書をご参照下さい。 それでは、皆々様のご健康と、帝国の繁栄を祈って、しばし筆を置かせていただきます。 敬具
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