戦艦「甲斐」改装案

戦艦「甲斐」改装完成時


        要目

    基準排水量:35,000t
    全長:238.0m
    全幅:29.2m
    主機:艦本式オール・ギアードタービン4基 4軸 
    主罐:ロ号艦本式重油罐8基
    出力:152,000hp 
    最大速力:31.5kt
    航続力:10,000浬/18kt
    武装:55口径35.6cm3連装砲3基
       50口径14cm連装砲6基
       40口径12.7p連装高角砲6基 
       25mm3連装対空機銃6基 13mm連装対空機銃2基
    搭載機:複座水上偵察機12機 水上観測機4機
    装甲:舷側270o(20°傾斜)甲板190o


1.改装要領

 第二次ロンドン条約に基づき建造が決定された戦艦「甲斐」型であるが、一番艦が建造中の昭和1
3年1月、本艦型の改装が下命された。
 要求は、複座水上偵察機12機、水上観測機4機を搭載できるようにする、というものである。

 この要求に対応するため、当初は後部3番砲塔を撤去するということも考慮された。
 だが、要求に「主砲の火力を著しく低下させぬこと」と条文が盛り込まれていることを考えると、
9門しか有していない主砲の1/3を削減するというのは、攻撃力の維持という観点からは避けるべ
きという結論に達したのである。

 そのため、以下の要領で改装が施されることになった。

 1.後部甲板と航空機用設備の拡張、搭載機用格納庫の新設
 2.拡張部分、および3番砲塔周囲に航空機移動用のレールを追加
 3.搭載スペース確保のため後部構造物を縮小。それに伴い高角砲の配置を変更

 この改装で大幅に改造された後部甲板の状態は以下のとおりである。

後部甲板上面図
 搭載機の配置場所であるが、格納庫内に4機を収納する以外は、すべて翼端を折りたたんだ状態で 甲板およびカタパルトの上に整列させることになっていた。この方法が採用された理由としては、他 にスペースが確保できないというのと、大規模な改装を行うことにより完成が遅れ、長期にわたって 戦力化できないという事態を避けたかったということがあった。 2.用法  今度の改装によって、本艦の用法そのものに大きな変化をもたらすことは無いと考えられる。  決戦時においては、本艦はまず爆装を施した複座水上偵察機と観測機を出撃させることになってい た。前者は味方航空部隊と共同して敵に先制攻撃をかけるためのものであり、後者は砲撃戦が開始さ れた際に弾着観測を行うのが任務であった。  だが本艦は、戦闘前に発進させたこれら艦載機を後に収容することは考慮していない。  これは本艦の搭載方法がスペースの関係上非常に無理なものになっていることもあるのだが、本艦 は味方水雷戦隊の襲撃を容易ならしめるため、敵の攻撃を引き付ける囮としての役割も期待されてい た。そのため、戦闘終了後に自艦の艦載機を搭載できる(極端に言えば、戦闘終了時に浮いている) 保障がなかったのである。  そのため、戦闘前に本艦から発進した艦載機は、戦場近辺の基地に待機した特設水上機母艦に収容 してもらうことになっていたのである。  この方法の利点は、艦載機を収容することを求められることによって本艦の戦闘が妨げられるとい うことが無いこと、そして特設水上機母艦を使用することにより新たな軍艦を建造する必要もなくな るということである。  (特設水上機母艦は平時は商船であるため維持費が安価で、かつ自身で維持のための費用を稼ぐ  ことができるという点も見逃せない) 3.(私的な)改装案その2 41糎連装砲搭載案
 本艦は第二次ロンドン条約の規定に従って建造された戦艦であるが、もしこの条約が何らかの理由 で失効したとしたら、当然日本海軍は大和型戦艦を建造することになるだろう。  しかし、もしこの「甲斐」型が量産されつつある状況で条約が失効したらどうなるか?  日本の建艦能力を考えると、早急に大和型戦艦の建造を開始するのは不可能と考えるべきである。  本案は条約失効時に、本艦型が建造されていると仮定した場合において、その戦力を早急に向上さ せるための方策として考案されたものである。  まず、主砲を41糎連装砲に換装することにした。  この砲は新規製作されたものではなく、戦艦「長門」「陸奥」が大改装時に降ろした41糎連装砲 塔に、仰角の増大、装甲の追加など改装を施したものである。この連装砲塔は8基が保管されていた ので、本艦型なら少なくとも2隻分の主砲がすぐに確保できるのである。  ただし、この案はあくまで建造準備中あるいは起工されて間もない状況など、主砲の換装と建造の ための工事を平行させることができる状況に備えたものであり、完成した本艦型の主砲を換装するこ とを考えていないことに注意していただきたい。  条約が失効するという緊迫した状況の中で、最新鋭の戦艦を改装工事のため「だけ」に前線から下 げることは出来ないからである。  この改装を施したとしても、本艦の用法は全く変わらないであろう。だが、火力が大幅に向上した ことにより、戦艦部隊の構成艦としても、夜戦部隊の支援艦としても、より強力な戦力として活躍で きるのではないかと考える次第である。        あとがき                 前回競作はお休みを頂きましたので、久しぶりの参加ということになり       ますね。        今回は自分にとって一番関心のある日本海軍の戦艦ということで、それ       なりに楽しませていただいたと思います。                   ただ、第二次ロンドン条約の規定というのが私にとっては曲者で、これ       と「ビッグ7」という強力な戦艦を相手にすることを考えた結果、無理を       重ねてしまった部分が多々あります。できるだけ堅実に纏め上げようと努       力はしたのですが、このあたりは知識および練りこみが足りませんでした       ね。反省しきりです。        仕様変更に関して、私はこの艦の砲力にほとんど期待していなかったの       で、水上機によって航空攻撃力を持たせることが出来る分、歓迎したいと       いう気持ちがありました。幸い主砲も減らさずにすんだので、その点はよ       かったと思っています。           最後に、本競作を投げ出しそうになった際、IRCにて励ましていただ       いた皆様、同じく作者に助言くださいました皆様、この場を借りましてあ       らためて厚くお礼申し上げます。