
‐概要‐ 昭和14年6月に提示された艦上爆撃機の要求仕様は、空技廠の十三試艦上爆撃機を補填する事を主 眼に置かれたものだった。 これを見た愛知航空機の関係者は内心ニヤリとした。彼らの言い分によると、海軍は空技廠の十三 試艦爆が自分たちの要求に応えられない機体だと考えているのでそれをフォローする必要がある。そ れが今回の艦爆の競作と言う形に表れているというのだ。 そしてこれは言い方が悪いが、金の成る木が突如として現れた形となる。 愛知航空機は十一試艦爆の製作が大詰めを迎えていて忙しい時期ではあるが、上記の理由でこの競 作に参加することを決定した。 設計のコンセプトは構造の簡略化だった。 全体的に直線的なラインを取り入れ、工作の手間を省くようにした。例えば十一試艦爆の主翼は楕 円翼だが、今回は単純な直線テーパー翼とすることになる。これは十一試艦爆の楕円翼の失速特性の 悪さに手を焼いた事もあったからでもある。 その関係もあって、爆弾槽のようなものは作らずに今までと同じく爆弾は剥き出しのままで懸吊す るようにした。流石に車輪は引きこみ式としたが。 また、日華事変などの経験から防御関係も真剣に考えられるようになった。戦闘機は兎も角、爆撃 機や攻撃機などは爆弾をぶつけるまでは自由に行動できない。敵の攻撃に一方的に曝される運命にあ るとも言える。結局落ちにくい、タフな機体が必要になってくる。 この考えに基づき、燃料タンクや操縦席などに防弾・防火のための工夫がなされた。 発動機には三菱の火星を採用した。信頼性の点で特に問題は無かったが、現状では500km/hには届 かず、450km/hが出れば御の字と考えられた。対策として翼面積を小さくして翼面荷重を高めれば艦 上での運用に支障が出る。そして軽量化は無意味だと判断された。どのみち中途半端に軽量化したと ころで要求を満たす事は出来ないし、強度も落としたくない。そのような事情で火星の出力が強化さ れるまでは現状で甘んじる事とした。だが、それでも要求が満たせるかは微妙だった。 他の発動機を選んではどうかと言う意見も出たが適当な発動機がなく、あったとしても完成してい なかったのでこの意見は容れられなかった。 初号機の初飛行は昭和17年2月だった。 火星一二型を搭載した本機は予想通り速度の要求を満たす事は出来ず、関係者も半ば諦めていたと 言う。 この頃になると中島の護が登場していたが、海軍が護に対して冷淡なのを知った愛知航空機関係者 は火星でなんとかすることにした。そして新しい火星二一型の装備や、推力式単排気管を採用して少 しでも速度が向上するように努めた。 こうした改良を施された試作機は同年10月に完成し、最高速度509km/h(高度5500m)を記録した。 この後、審査が進むと共に十四試艦爆には改良が加え続けられるのであった。 ‐要目(試作1号機)‐ 全長・・・・・10.23m 全幅・・・・・12.90m 全高・・・・・3.70m 翼面積・・・・30.25u 自重・・・・・2980kg 全備重量・・・4694kg(正規)/4929kg(過荷) 最高速度・・・447km/h(高度4100m) 航続距離・・・1800km(正規)/2500km(過荷) 発動機・・・・三菱「火星」一二型(離昇出力1530馬力)×1 プロペラ・・・住友ハミルトン(3枚恒速・直径3.4m) 武装・・・・・機関銃:20mm×2(主翼)、7.7mm×1(後席) 爆弾:250kg×1(+60kg×4)/500kg×1(+60kg×4) 乗員・・・・・2名 ‐コメント‐ 彗星とこの十四試艦爆を比べるとその低性能さに驚かされます。そんな時は「彗星の方が異常なん だ」と解釈してください。 しかし彗星は量産性が劣るとか言われながら海軍で3番目に多く作られた機体だというのも不思議 です。数合わせだけならどうにでもなるということでしょうか。気になるのは彗星に限りませんが、 工場から軍に納入されたばかりの機体の内何パーセントがまともに飛べるのかと言う事です。飛べな い飛行機でも工場から出れば生産数にカウントされるでしょうから、実は部隊に辿り着くまでにスク ラップの山が出来ているのかも(爆)。←根拠なし 上の要目には書いていませんが燃料は胴体・主翼内に合計1290リットル入ります。過荷状態ではこ れに追加して330リットル入りの落下タンク2個を取りつけます。これで航続距離の要求は満たせると 思うのですが自信がありません。今回は──と言うよりは今回も──性能推算が無茶苦茶だったこと もあって殆ど勘です。 因みに、最高速度は爆弾を搭載していない状態(4194kg)で甘く考えています。 2003年2月28日 |