
えぇ、初飛行の時期は“同時代の機体は?[攻/爆撃機編]”の天山を参考にしたのですが「1941/3」 を「1942/3」と読んでしまいました。十四試艦爆の初飛行の時期は本当は昭和16年2月です。 書いてしまったものは仕方ありません。このままでいきます。 ハハハ…。 ‐仕様提示後‐ 昭和14年6月に提示された艦上爆撃機の要求仕様は、空技廠の十三試艦上爆撃機を補填する事を主 眼に置かれたものだった。 これを見た愛知航空機の関係者は内心ニヤリとした。彼らの言い分によると、海軍は空技廠の十三 試艦爆が自分たちの要求に応えられない機体だと考えているのでそれをフォローする必要がある。そ れが今回の艦爆の競作という形に表れているというのだ。 そしてこれは言い方が悪いが、金の成る木が突如として現れた形となる。 愛知航空機は十一試艦爆の製作が大詰めを迎えていて忙しい時期ではあるが、上記の理由でこの競 作に参加することを決定した。 設計のコンセプトは構造の簡略化だった。 全体的に直線的なラインを取り入れ、工作の手間を省くようにした。例えば十一試艦爆の主翼は楕 円翼だが、今回は単純な直線テーパー翼とすることになる。これは十一試艦爆の楕円翼の失速特性の 悪さに手を焼いた事もあったからでもある。 その関係もあって、爆弾槽のようなものは作らずに今までと同じく爆弾は剥き出しのままで懸吊す るようにした。流石に車輪は引きこみ式としたが。 また、日華事変などの経験から防御関係も真剣に考えられるようになった。戦闘機は兎も角、爆撃 機や攻撃機などは爆弾をぶつけるまでは自由に行動できない。敵の攻撃に一方的に曝される運命にあ るとも言える。結局落ちにくい、タフな機体が必要になってくる。 この考えに基づき、燃料タンクや操縦席などに防弾・防火のための工夫がなされた。 発動機には三菱の火星を採用した。信頼性の点で特に問題は無かったが、現状では500km/hには届 かず、450km/hが出れば御の字と考えられた。対策として翼面積を小さくして翼面荷重を高めれば艦 上での運用に支障が出る。そして軽量化は無意味だと判断された。どのみち中途半端に軽量化したと ころで要求を満たす事は出来ないし、強度も落としたくない。そのような事情で火星の出力が強化さ れるまでは現状で甘んじる事とした。だが、それでも要求が満たせるかは微妙だった。 他の発動機を選んではどうかという意見も出たが適当な発動機がなく、あったとしても完成してい なかったのでこの意見は容れられなかった。 初号機の初飛行は昭和17年2月だった。 火星一二型を搭載した本機は予想通り速度の要求を満たす事は出来ず、関係者も半ば諦めていたと いう。 この頃になると中島の護が登場していたが、海軍が護に対して冷淡なのを知った愛知航空機関係者 は火星でなんとかすることにした。 要目(試作1号機) 全長・・・・・10.23m 全幅・・・・・12.90m 全高・・・・・3.70m 翼面積・・・・30.25u 自重・・・・・2980kg 全備重量・・・4694kg(正規)/4929kg(過荷)/4194kg(軽荷) 最高速度・・・447km/h(高度4100m) 航続距離・・・1800km(正規)/2500km(過荷) 発動機・・・・三菱「火星」一二型(離昇出力1530馬力)×1 プロペラ・・・住友ハミルトン(3枚恒速・直径3.4m) 燃料容量・・・総容量1290l+660l(胴体中央150l+主翼1140l+落下タンク660l) 武装・・・・・機関銃:20mm×2(主翼)、7.7mm×1(後席) 爆弾:250kg×1(+60kg×4)/500kg×1(+60kg×4) 乗員・・・・・2名 ‐仕様変更後‐ 初号機が初飛行した後、雑多な不具合を改修した試作2号機・3号機が完成し、審査は順調にすすん でいった。 8月に入ると要求仕様が変更された。航続距離は兎も角、最高速度の要求を見た愛知航空機関係者 は「ちょっと待ってくれ」と思った。最高速度を100km/h以上も向上させる必要があるからである。 だが、悩んでいるひまは無い。太平洋戦争が始まって以来戦力、とりわけ航空機の損耗率は飛躍的 に跳ね上がっている。勿論、これは機体の脆弱さが直接の原因ではない。太平洋を挟んだ二つの── 周りに比べて──圧倒的な軍事力を持つ国がぶつかった事が最大の原因とも言える。例えば、珊瑚海 海戦では第五航空戦隊から出撃した69機のうち、23機が失われた。損耗率33.3%というのは、数字だ けを見れば日露戦争で戦艦八島と初瀬を失って以来である。そして戦いが終わってみると祥鳳の搭載 機を含めて全体で約100機の航空機が失われ、祥鳳そのものも失われた。結果、先のミッドウェー海 戦に第五航空戦隊は参加する事ができなかった。この戦争が消耗戦であり、どれだけ多く、どれだけ 早く戦力を補充出来るかが勝敗の鍵を握っているか、という事を端的に現している。 とにかく戦場に1機でも多くの飛行機を送り出すには開発を急ぐしかない。 おもな改良点 ・発動機を火星二二型に換装 ・プロペラの枚数を3枚から4枚に変更 ・排気管を集合排気管から推力式単排気管に変更 ・主翼の平面形をそのままに翼型を層流翼に近づける ・厚板構造の採用 ・ファウラー式フラップの改良とエルロンフラップの採用 ・燃料タンクの容量を増やす ・防弾・防火装備の改良 ・部品点数の削減 以上のように、最高速度の向上を主眼に改良をした。 また、エルロンフラップの採用で重量が増加しても離着陸性能が維持できるように図った。重量の 増加とは、発動機や防弾・防火装備の分や、その他に雑多な艤装の増加によるものである。 強度を落とさずに重量をあまり増加させない工夫として厚板構造を採用し、有害抵抗も減少させる。 これらの改良を施した十四試艦上爆撃機の試作4号機は昭和17年10月に飛行した。 注目の最高速度は509km/h(高度5500m)と、要求を満たす事が出来なかった。「まぁ、こんなものか」 と、関係者は自嘲的にいったという。ただ、強度と離着陸性能は予定通りで、急降下や戦闘機並みの 高いGがかかる旋回をしても機体には異常が見つからなかった。空母を用いた発着艦試験では同時に 試験が行われた中島の十四試艦上攻撃機よりやや良好、という成績をおさめた。 要目(試作4号機) 全長・・・・・10.23m 全幅・・・・・12.90m 全高・・・・・3.70m 翼面積・・・・30.25u 自重・・・・・3360kg 全備重量・・・5065kg(正規)/5300kg(過荷)/4565kg(軽荷) 最高速度・・・509km/h(高度5500m) 航続距離・・・2000km(正規)/2800km(過荷) 発動機・・・・三菱「火星」二二型(離昇出力1850馬力)×1 プロペラ・・・住友ハミルトン(4枚恒速・直径3.4m) 燃料容量・・・総容量1640l+660l(胴体中央300l+主翼1340l+落下タンク660l) 武装・・・・・機関銃:20mm×2(主翼)、7.7mm×1(後席) 爆弾:250kg×1(+60kg×4)/500kg×1(+60kg×4) 乗員・・・・・2名 ‐さらにその後‐ 誉二一型(離昇出力2000馬力)を試作4号機をベースにした試作X号機に搭載。 最高速度545km/h(高度6400m)を記録。ただし燃料容量が増えていないので航続距離はやや減少。応 急的な工作をした部分もあったことや発動機そのものの信頼性が高くないことから不具合もある。 |