1930年代の『ヘルゴラント』級戦艦

ヘルゴラント(1928)

戦艦『ヘルゴラント』(1928年)

常備排水量 22,800t
兵装 30.5cm連装砲 6基 12門
速力 20.3ノット
全長 167.2m 15cm単装砲 14基 14門 燃料 石炭 3,200t
全幅 28.5m 8.8cm単装砲 8基 8門 航続距離 3,600浬
50cm魚雷発射管 6門 (18ノット)

ヘルゴラント

 ヴェルサイユ条約によってワイマール共和国が保有を許された8隻の戦艦のうち、ヴェストファーレン級4隻はワシントン条約によって廃棄となり、新生海軍にはヘルゴラント級戦艦4隻のみが残された。
 ヴェルサイユ条約は同級戦艦の廃棄による代艦建造を認めていなかったため、就役後十数年を経ている4隻の近代化改装は焦眉の急といえた。しかし国民議会は4隻の改装を優先事項として承認したものの、軍事費支出より福祉充実を唱える反対派の激しい抵抗に遭い、改装の最終承認は1928年11月までずれ込んだ。(海軍の改装案試作発令は承認を見越して同年1月に行われている。)

 改装は旗艦設備を持つオストフリースラント、比較的新しいオルデンブルク、大改装を施されることとなったチューリンゲンが優先となり、ヘルゴラントはしばらく旧状態のまま、ドック入りした姉妹艦に代わって領海警備に任じた。

 ヘルゴラントオストフリースラントの艦隊復帰に伴いチューリンゲンと同様の大改装に入る予定であったが、同艦の改装が予想以上に難航したことから、改装内容を再検討する間入渠を見送りとされる。

オストフリースラント(1930)

戦艦『オストフリースラント』(1930年)

基準排水量 23,000t
兵装 30.5cm連装砲 6基 12門
速力 20.3ノット
全長 167.2m 15cm単装砲 14基 14門 燃料 石炭 3,200t
全幅 28.5m 8.8cm単装高角砲 8基 8門 航続距離 3,600浬
50cm魚雷発射管 6門 (18ノット)

オストフリースラント
オルデンブルク

 ヘルゴラント級を改装するに当たり、主に予算上の制約から1隻に大規模な工事を実施し、2隻は小規模な工事にとどめて短時日のうちに北海・バルト海に復帰させ、残る1隻は後者の改装完了後に前者と同様の大規模工事を行うことになった。
 小規模改装の対象には、旗艦設備を有するオストフリースラントと、数ヶ月とはいえ艦齢の若かったオルデンブルクが選ばれた。

 改装の要目は前檣の換装・艦橋の増設・後檣見張り所の大型化・高角砲の増載で、主砲及び副砲・装甲・機関部は手をつけられていない。これは連合国監視委員会の要望に盲従した結果ではなく、できるだけ早く艦隊復帰させたいという希望と、単なる予算不足というドイツ側の事情によるものであった。

 本級には領海警備のほかに練習艦としての機能も要求されていたが、これがために本来の戦闘能力を損なうことは容認し難かったため、候補生の居住設備には後部甲板上に仮設小屋を設置し、有事の際には候補生を離艦させるとともに小屋を投棄して、すみやかに戦闘任務に復帰できるよう考慮された。(当然ながら、候補生からの評判は芳しくなかった。)

チューリンゲン(1935)

戦艦『チューリンゲン』(1935年)

基準排水量 24,000t
兵装 30.5cm連装砲 6基 12門
速力 26.8ノット
全長 171.3m 15cm単装砲 14基 14門 燃料 重油 5,000t
全幅 28.5m 8.8cm単装高角砲 8基 8門 航続距離 10,500浬
37mm連装機関砲 3基 6門 (20ノット)

チューリンゲン

 ワイマール共和国海軍が保有するヘルゴラント級戦艦4隻は、いかに改装しようと英仏の艦隊と本格的に対決するには力不足であり、また4隻を同時に大改装することも財政上困難であったので、うち1隻のみが実験的な要素を含みの改装を実施することになった。
 ヘルゴラントが領海警備につき、オストフリースラントオルデンブルクが小規模改装に入ったため、残るチューリンゲンが大規模改装の対象に選ばれた。

 改装の要目は以下の通りである。

機関 主缶とレシプロ機関を全撤去し、MAN社のディーゼル機関に換装した。
 軸数は3軸のままとし、ディーゼル機関(7,100馬力)を1軸当たり4基配し、フルカン流体継手で結合して推進力を得た。ディーゼル機関の採用によって航続距離は3,600浬から10,000浬に向上した。反面、機関重量の低減には期待ほどの効果をもたらさず、船体形状も相まって最大速力は26ノットにとどまった。この速力は、それでも「22ノットを超えない」とする連合国の要求に違反していたため、普段は22ノット以上の速度を出さないよう運転を制限し、最大速力の計測には夜間に燈火を用いて行う念の入れようだった。
 もっとも、このディーゼル機関は故障が頻発し、原因を突き止め安定稼動を実現するまでの数年間は、そもそも満足に全力運転できる状態ではなかった。

武装 従前の30.5cm連装砲6基のうち、両舷側の4基を廃止し、代わりに首尾線上に同口径の3連装砲塔2基を搭載した。
 これによって、艦首・艦尾方向へ指向し得る砲は各2門と激減したものの、側面へのそれは10門に増加した。ただし、この新砲塔は従来の連装砲塔を単に拡幅しただけという体であり、砲の仰角向上などは行われていない。もともと狭い中央部に砲塔2基を置くためスペースの制約があったのである。
 砲自体は30.5cm砲と変化なく、これは監視の目をくぐる手段がなかったため止むを得なかった。砲身長を延伸することも検討されたが、それよりは将来に向けて大口径砲を開発するほうが有利とされ、この改装とは別に38cm砲の研究が進められることになった。
 副砲の15cm砲はそのまま残された。また、8.8cm平射砲は全廃され、代わりに8.8cm高角砲が搭載されている。
 イラストでは4番砲塔上にカタパルトが装備されているが、これは後日追加されたものである。改装時はヴェルサイユ条約の規定により、艦載機の保有は認められていなかった。

船体 両舷の砲塔を撤去して中央に集約したため、舷側近くに主砲弾を置く必要がなくなり、防御上の弱点のひとつを解消することにつながった。この部分は従来の炭庫に代わって重油タンクや注配水区画などに当てられ、無論ドイツ艦の特徴である細分された区画割が徹底されていた。
 装甲の強化は、監視委員会の目と製造技術の未成熟により達せられなかったが、内側に多数の隔壁を設けることによって弾片の突入を防ぐように工夫されている。

 艦首は速力の向上を見込んで、クリッパー型に改められている。このため艦首魚雷発射管は廃止された。


その後のヘルゴラント級

 ヘルゴラントオストフリースラントオルデンブルクはヴェルサイユ体制が存続していればチューリンゲン同様の大改装を実施する可能性があった。
その他にも、機関を重油専燃缶と高圧タービンに換装する案、イタリア戦艦のように艦容を一新する案、水上機母艦ないしは本格的航空母艦に改装する案が計画されている。

 しかし1935年の英独海軍協定によって、ヴェルサイユ体制そのものが終焉を迎えたため、ヘルゴラント級を主力艦として整備する必然性自体が薄れた。この結果ヘルゴラントオストフリースラントに準じた小規模改装を実施し、また主缶5個を撤去して候補生の居住・教育用施設を設け、完全に練習を目的とした艦に生まれ変わった。
 、オストフリースラントオルデンブルクも、以降は10.5cm高角砲への換装など細部の更新にとどまっている。


あとがき

 酒匂135と申します。これで何作目でしょうか?相変わらず、ギリギリになってバタバタする癖が治りません。

 思い切りいじりまわすか、何もしないか、ということで両方やってみました。なんだかいじるたびにカッコ悪くなっているような。デザイン力の無さに泣けます。

 本当なら、その後のヘルゴラントにも簡単なイラストをつけたかったのですが、時間切れです。空母化案は作ってみたかったですね。実現性はともかく。
 「宇宙戦艦化」? や、それは、さすがに…。


 今度こそ期限までに余裕を持って、と思いつつ、しかしまあダメだろうな、と半ばあきらめつつ、筆を置きます。ご覧いただきありがとうございました。

 参考文献:
   世界の艦船 1989年3月号増刊 「ドイツ戦艦史」(海人社)
   「ヒトラーの戦艦」(エドウィン=グレイ 都島惟男/訳・光人社NF文庫)

2004年1月 酒匂135