ヘルゴラント級 ゲルビクス設計所改装案

完成予想図


「1928年1月 ドイツ共和国海軍発令 …常備戦艦たるヘルゴラント級4隻の近代化改装を実施する…」
 弩級戦艦の近代化改装。
 ドイッチェベルケやB&Vといった名だたる造船会社、あるいは海軍御用達のヴィルヘルムスハーフェン工廠にこそ、当然に
相応しいであろうこの計画が、こともあろうにベルリンの街角に工作機械等の設計事務所を構えていた一介の技術者をして参加
へと踏み切らせたのは、一体何の因果であったのだろうか。
 未だ敗戦の混乱が影を落とすドイツ経済での企業家精神の発露かもしれないし、あるいはワイマール共和国が持つ、混乱と紙
一重の自由の気風によるのかもしれない。ひょっとすると、少年期にみたツェッペリン飛行船という、あらゆる技術者にとって
の記念碑とも言い得る憧憬が彼を突き動かしたのかもしれない。
 
若き技術者の名はファルク・ゲルビクス。この男がツェッペリンの再来となるか、はたまた20世紀のドンキホーテとなるか、
それはまだ誰にも知り得ない。


諸元
○ 全長   …173.2m(艦尾6m延長)
○ 全幅   …31・5m(バルジ幅1.5m増)
○ 基準排水量…24,500t(約2,000t増)
○ 機関   …シュルツ・ソーニクロフト式ボイラー10基(炭油混焼缶へ改修)
        4気筒3段膨脹蒸気レシプロ2基 2軸
        MAN9気筒ディーゼル3基 1軸
○ 出力   …レシプロ:20,000馬力
        ディーゼル:18,000馬力
           計:38,000馬力
○ 最高速度 …21.5ノット(計画値)
○ 武装   …50口径30.5cm砲   U×8  12門
        45口径15cm砲     T×12 12門
        65口径10.5cm高射砲 U×4  8門
          (45口径8.8cm高射砲による代用も考慮)
           3.7cm高射砲      U×4  8門
           2cm高射機関砲      T×6  6挺
           53.3cm魚雷発射管   U×2  4門(水上・舷側固定式)
           航空機           なし
          (※軍備制限解消後、D砲塔上にカタパルトを、後部艦橋に格納庫を設ける予定)


「はじめまして。当設計所々長のファルク・ゲルビクスです」(以下『G』)
「博士の助手を務めています、カーゲン・ジュージリッヒです。皆様、よろしくお願いします」(以下『K』)

外観
K:「バルジが付きましたね」
G:「艦橋が高く大きくなった上に高射砲とか色々載せるから、復元性を増やすのが主目的だ。あと機関と絡む話で燃料槽と
      しても利用する」
K:「艦尾が延長されているのは、そのバルジで増えた抵抗を減少するためですね」
G:「その通り。あと反対側の艦首も少々形を変えているがな」
K:「また機関に絡みますが、それほど機関に手を加えているわけではないのに集合煙突にする必要ってありますか?」
G:「艦橋との距離が開くから煤煙に煙に捲かれにくくなり、また煙突側面に大型探照灯を設置するスペースが設けられる。
      あとは見栄えだな」
K:「最後は要りません」
G:「そんなことはない、これには練習生も乗る。いかにも古臭くては士気も奮わんだろうが。古くても我が国海軍の
      一枚看板といって過言ではないのだから、見た目も重要だ」

機関
K:「缶を混焼に改造するとはいっても、18年前のレシプロ機関と最新式ディーゼルの併用は
      いかにもアンバランスな感じがしますが?」
G:「まず、例え我が国が大戦時の潜水艦等で大量に運用した実績があるといっても、やはりディーゼルは信頼性の面で
      劣るから3軸ともというわけにはいかないし、何より予算が嵩む」
K:「どうせ新型機関に換えるなら、タービンの方がより信頼性が高いです」
G:「勘違いしないでほしいな。中途半端を承知で中央軸をディーゼルに換えたのは、出力が目的じゃない」
K:「と言いますと?」
G:「第一に、タービンは決して小さくはない。左右の機関に挟まれた限られたスペースに収めるには
      小さく出来るディーゼルの方が適している」
K:「建造中の新型軽巡のものなら何とか収まりませんか?」
G:「第二に、この艦は練習任務も兼ねる。練習生が余分に搭乗するし、各種教育機材も必要だからスペースは可能な限り
   広く欲しい。それに遠洋航海などを考えると燃費の良いディーゼルの方が適しているし、彼らにディーゼル機関に
   慣れさせるという教育的意味もある。それに、要求仕様の範囲では別に速力は必要とされていない。
      何せ領海警備と練習任務だからな」
K:「では、せっかく缶に手を加えるなら、炭油混焼よりも重油専焼のほうが重量や効率の点で有利ですよ。
   石炭焚きの火夫が要りませんから人員も削減出来ます」
G:「これは少々政治的になるのだが、要求仕様で『雇用創出の観点』の文言があるなど、今回の計画は公共投資的な意味も
      比較的強い、とみて間違い無いだろう。そして話は飛躍するがドイツで石油は出ないが石炭は出る」
K:「つまり?」
G:「運用される限り継続して国内需要を生み出す、ということだ。無論いつも石炭で動かすわけではないが
     『この計画は継続した国内需要を生みます』と言うだけでも予算は付きやすくなろう」
K:「しかももともと石炭焚きですから、それに伴う周辺機器は既に揃っていると」
G:「その通り」

武装
G:「見た目で分かるのは対空砲の装備だな」
K:「配置や数で紆余曲折ありましたね」
G:「暗い裏話をするじゃない。ちなみに高射砲の弾薬庫を設ける都合上、副砲が左右一門づつ撤去されている」
K:「D砲塔直後の舷側にある丸い穴は魚雷発射管ですか?」
G:「その通り。固定式の連装発射管を左右各1基積んでいる」
K:「戦艦なのに、しかも中甲板に固定ですか?誘爆時の危険性とかは」
G:「練習任務用だし、日本のフルタカ級巡洋艦も同じ装備方法だ。戦艦だから、いざとなれば撤去すりゃ済む話だ」
K:「ところで、もめにもめた仰角引き上げはしないのですか?」
G:「どうも我が国の戦艦主砲塔はコンパクトに過ぎて、そのままでは俯角を犠牲にしなければ仰角を上げられないらしいし
   費用をかけて砲架を造り替えても22度辺りがどうやら限界のようだ」
K:「そして砲塔を完全に造り替えるのは、予算の制約上・・・」
G:「無理だな」
K:「射程が延びないなら高い塔檣は不必要です」
G:「まぁ、そこは見た目重視だ。もっと将来には新たに改装されるかもしれんしな」
K:「大雑把・・・」

防御
G:「装甲強化は無しだ」
K:「そんなぁ・・・」
G:「無しだ。バルジが付いたから、水中防御は強化されたと言って良いだろうが」
K:「でも・・・」
G:「デモもストライキもない(笑)。それにコイツの仮想敵がどこか考えてみろ」
K:「えーとっ、イギリス、フランスそれにソ連の弩級戦艦に北欧諸国の海防戦艦あたりですか」
G:「そのうちフランス海軍はバルト海どころか北海までも出てくるかどうか疑わしいし
   イギリスは巡戦含めて全て38cm以上だ」
K:「考えるだけ無駄レベルですね」
G:「となると残りで最強はソ連のガングート級だ。30cm砲だから舷側装甲最大300mmは十分過ぎるくらいだ。
   まあ片舷斉射で劣るから、遠距離戦を考えると甲板装甲はもう少し欲しいところだが、狭いバルト海では
   考えにくいし、隻数で勝るから総合的には多分優位だ」

まとめ
K:「何か、実際の能力はあんまり変わってないような気が・・・」
G:「主砲同一・射程同一・装甲同一だから、戦闘能力の点でいえばその通りだ」
K:「他にどういった計画が提出されるかはわかりませんけど、こんなので採用されるんですか?」
G:「単純にいけば無理だな。多分、というか間違い無く他のいくつかはアノ手コノ手で監視委員会の要望を超えた案に
   なっていることだろう。おそらくこの案は最弱艦になる。だがそれで構わん、というよりむしろ我が社以外の全てが
   そうであったほうが好都合だ」
K:「?」
G:「我が案は委員会の要望含めて全ての事項をクリアしているといっていい。まあディーゼルだけは別だが、そのことは
   十分アドバンテージに成り得るはずだ」
K:「???」
G:「また政治の話になるが、オプションとしての履行政策は今も残されているし、その政策がとられた時、連合国の要望を
   クリアしているこの案は魅力的なものとして映るはずだ。それこそがアドバンテージなのだ」
K:「つまり、自国の宥和路線に賭けていると・・・?(睨)」
G:「そう睨むな。ただ、こういう選択肢もあって良いだろうということだ」


 はじめまして、影十字です。
 今回の主人公のゲルビクスという人物は某所のリレー架空戦記企画で自キャラとして登場させた技術者ですが
キャラが立っていて非常に動かしやすく、以来ほうぼうで登場させている私の分身ともいうべき人物です。
 助手のカーゲン・ジュージリッヒはゲルの相方として登場させました。名前は自分のHNをドイツ風にもじって
5秒で考えました(笑

最後になりましたが、競作初参加にあたって
ヘルゴラント級の雛型を製作して下さった 明石耕作様
不明な点を掲示板でご教授して下さった  まなかじ様
                    SUDO様
本館Q&Aでの書き込みにご回答下さった 駄レス長官様
                    再びSUDO様
の4名の方々に深くお礼申し上げます。特にギリギリまでお返事くださったSUDO様には感謝の極みです。
ありがとうございました〜 m(_ _)m