
|
当初から困難は予想された。 そこでまず、基本的な方針が定められた。 それは、設計を開始するにあたり、要求達成に有効であると考えられる方式を数十種類選定して、そのすべてに対して基礎実験を実施し、その中で特に有効であると考えられるものを組み合わせて機体設計に利用するというものであった。 その基礎実験の結果、数ある方式の中から採用された設計方式は以下のものであった。 |
| 1. | 燃料タンクはコクピット前の胴体内と、内翼の2本の主桁間と、重心位置近くに搭載し、運動性能向上を目指し、航続性能も確保する。 |
| 2. | 胴体内に燃料搭載スペースを確保するため、機銃はすべて翼内搭載とする。 |
| 3. | 有害抵抗を減らすため、オイルクーラーは蒸気表面冷却方式とし、エンジンカウリング下半分をそのスペースにあてる。また、気化器空気取入口は、左翼付け根前縁に配置する。これらにより、胴体直径を極力エンジン直径に近いものとし、前面投影面積を減少させて空気抵抗を小さくする。 |
| 4. | 有害抵抗を減らすため、主翼は中翼配置とするが、脚が長くならないためと、胴体内燃料タンクにより後退したコクピットからの視界を確保するため、主翼は逆ガル翼とする。 |
| 5. | 速度向上のため、推力式排気管を採用。陸軍で輸入したFw190を参考にする。 |
| 6. | 着陸時の視界を確保するため、十四試艦攻の方式を参考にし、上下移動可能な座席と、上部が起倒式の風防を装備する(ラフ画参照)。 |
| 7. | 運動性能向上のためタブルスロッテッド式の空戦フラップを装備し、自動式とする。 |
| 8. | 厚板外板を採用し、外板の剛性向上による速度性能、運動性能の向上、リベット数・部品数減少による製造工数の削減に配慮する。 |
| 9. | プロペラは直径を抑えた3.05mのものとする。これは、脚を短くする意味合いもあったが、どちらかというと重量を抑えて少しでも翼面荷重を有利にするためである。 |
|
ちなみに、主翼はフラップと補助翼の分割線で上方に折りたためるようになっていた。 試作1号機は、航続性能、上昇性能、最大速度は要求値をクリアし、運動性能も、横転性能は零式二号艦戦にやや劣ったものの、旋回性能は空戦フラップを使用すれば零式二号艦戦と同等と、なんとか遜色のないレベルに収めることができた。 ただし、完成後の試験で種々の不具合が発見された。 |
| 1. | オイルクーラーは、冷却面積不足で出力を上げるとオーバーヒート気味になった。 |
| 2. | 自動空戦フラップは開発が難航し、片効きになるケースが多々あった。 |
| 3. | 逆ガル翼は、高迎え角時に失速特性が悪くならないように設計されていた。確かに、通常でのその状態における挙動には、特に問題となる点は無かったが、空戦フラップを使用した状態では挙動が不安定となり、不意自転の兆候があった。 |
|
1.に対しては、冷却器を内翼前部(主脚収納部の位置)にまで拡大することで解消することができた。 2.に対しては、左右のフラップが確実に同時に作動するよう、内部でリンクをとる構造に変更した。 3.に対しては、自動空戦フラップそのものの改善は相当時間がかかることが予想されたため、垂直尾翼前方に背びれを追加することで不意自転を抑える方針とした。 これらの対策により重量が増加し、最大速度、上昇性能が若干低下したが、概ね満足できる結果をもたらしたため、この機体の前途は明るいものになったかに思われた。 しかし、蒸気表面冷却方式としたオイルクーラーは、増積したことによりオーバーヒートの兆候は無くなったものの、飛行時間が増えて機体にゆがみ等が発生してくるに従って、故障が発生し始めた。 このため、審査を担当した空技廠からの指示で、制作中の2号機は通常形式のオイルクーラーに変更されることになった。 この結果、故障は減ったものの、最大速度が18kmも低下して要求性能を満足できなくなってしまった。 また、ここに来て空技廠のパイロットから視界に対する不満が出始め、「滑走時の前方視界不良で母艦からの離艦が難しく、着艦は事実上無理ではないか?」という意見まで出されるようになり、艦上戦闘機としては窮地に立たされることになって、その対策のための改修と試験に多大なる時間を消費していくことになるのだった。 |

|
試作1号機諸元 全幅 :11.85m 全長 : 9.30m 翼面積 :23.00m 自重 :2,180kg 全備重量 :3,440kg 上昇時間 :6,000mまで6分12秒 最大速度 :630km/h 航続距離 :最高速0.5H+巡航速度4.5H 武装 :九九式20mm機銃×2、二式13.2mm機銃×2 試作2号機諸元 自重 :2,090kg 全備重量 :3,320kg 上昇時間 :6,000mまで6分3秒 最大速度 :612km/h ※他は1号機に同じ |

