9試艦戦、12試艦戦と過去二回の艦上戦闘機競作で苦杯を舐めた中嶋飛行機では中島
知久平が海軍機設計チームを集めい檄を飛ばしていた。
「三度目の正直だ。今度は取る。そのためには何でもやれ。フェアプレー精神なんか
糞食らえだろ。ずるいと言われようが卑怯だと言われようが構わん。」
「敵を知り己を知れば百戦これ危うからずや」主任技師となった三竹はこれに応え
て、隼と零戦の比較から始めた。「俺達の設計にけちを付けるのか」これには陸軍機
設計チームが猛反発したが、三竹は聞く耳を持たない。
隼とゼロ戦は同じエンジンを積みほぼ同規模の機体だが最高速度では40Km/h近くの
差が在る。主翼と胴体の空力性能の差が大きいのではないかと三竹は空力屋の糸川と
共に風洞試験を繰り返した。この結果、隼の主翼は失速特性に関しては非常に良いの
だが抵抗が大きい、隼の胴体はエンジン直後から直線状に絞ってあるため高速になる
と気流が剥離し抵抗が急激に増加する、零戦のテールコーンは殆ど役に立ってない、
等が分かった。
さて、新しい機体にこの結果を如何生かすか。主翼は翼厚を薄くすることで失速特性
を損なわずに抵抗を減少させられる事が風洞実験で突き止められた。そしてアスペクト
比を大きめに取り翼長を長くすることで揚力の減少を補う。胴体形状は紡錘型にして
しまえば早道だが、低速時では直線状に絞り表面積を減らした方が有利になる。思案の
挙句、FW-190の行っているように推力式排気管を側面に並べることで気流の剥離を防ぐ
事にして試作機のラフスケッチを始めた。
次に航続時間の検討に入った。全開30分で200L、巡航時には時間当たり250Lの燃料が
必要とすると、仕様を満たすためには1,325Lの燃料を積むことになるが、全てを機内に
積むことは不可能である。ラフスケッチから概算し、主翼内に450L、胴体に350Lを積み
残りは増装タンクで補うことにした。
次に武装である。仕様では武装は20mm×2、13mm×2を要求されているが、海軍には
まともな13mmがないではないか。重くなるのを覚悟で99式20mm2号3型×4で設計を進める
ことにした。
最後に残った課題は翼面荷重である。概略設計した試作機の翼面積は22平米しか
なく、全備重量を3,300kgにしなければ仕様を満たさない。とりあえず機体の軽量化を
企てた。削れる所はとことん削って軽くしたがまだ足りず、全備重量を軽くするため
胴体内燃料タンクを機内増装と称して全備には含めない、機銃弾を減らすためバルジ
を細工して60発弾倉しか入らなくした、など姑息な手を考えたがまだ重い。だからと
言って翼面積を増すと速度が落ちてしまう。
そのとき、あるアイディアがひらめいた。一次試作機はダブルスロッテッドフラップ
を装備する予定であったが、フラップを最大に後退させると主翼面積は1.75平米増える
のである。この状態を正規の状態とし、離着陸時にはここからフラップを下に降ろす。
高速飛行時は逆にフラップを格納する。つまりこれはフラップを兼ねた主翼面積可変
装置なのだ。
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