陸軍強襲揚陸輸送艦

兵器運搬船


<概要>
陸軍から提示された輸送艦の整備計画に当り、この設計者は既存の物に囚われる事無く、兎も
角、陸軍が思い描く理想の形態を具現化しようという構想の下に構想を練った。従って、要求
仕様の充足は勿論のこと、考えうる全ての事柄に対応可能とする機能を盛り込んだため、多く
の新機軸を盛り込み、規模はあれよあれよというまに拡大し、出来上がったものは要求を出し
た陸軍でさえ呆れ困惑するような代物であった。
しかしそれでも、検討の俎上に載せたのは、それが陸軍の悲願の具現化したものであることに
は間違いなかったからである。
技術的な問題は勿論のこと、その規模から来る政治的な問題まで孕む本案の採用の見込みは万
に一つのものであったが、追い風は思わぬところからやってきた。
本案のことを何処で聞きつけてきたのか、海軍が本案を採用した場合には技術的な支援をして
も良いと言ってきたのである。これは当初陸軍としては驚いたが、ネタを明かせば何の事はな
い。建造を手助けしてやる代わりに、海軍の空母不足の折には本艦を借り受けることを了承し
て欲しいということだったのである。
ある意味海軍にとってはこれは有意義な話であった。何しろ、正規空母級の船が、普段は予算
がかからず、いざと言うときには使えるのだ。
陸軍にとっても、航空機の海上運用は未知数であり、全てを独自で確立するのは予算と時間の
無駄であった。そこのところを考えれば、海軍の申し出を受ける事は、決して陸軍にとっても
メリットのないことではなかったのである。
結果、担当官同士のすりあわせが終わると、正式に本案の採用が決まり、建造に向け計画は動
き出したのである。

計画が動き出すと表面化してきたのは技術的な問題もあった。
船体は全電気溶接構造を採用し、構造重量の軽減と工期の短縮を図るとされていたのである。
当然の事ながら、陸軍としても、海軍の大鯨の事は聞き及んでおり、溶接構造の船には消極的
というよりも、懐疑的であった。実際、採用前に製造方法を従来の工法と改めるようにと陸軍
側からの申し出があったが、大鯨の経験や、潜水艦の建造等で電気溶接の技術は向上している。
何よりも従来構造では構造重量が過大となり、現在の規模では収まらないとの技術者側からの
説得により、陸軍側が半ば折れる形で全溶接構造のままでいく決定がなされていた。
実際、海軍側の情報提供もあり、電気溶接の歪みの問題は実用レベルで問題の無い程度に押え
られ、大鯨の様に、矯正工事を行う必要は無かった。
その他にも、構造材は潜水艦の耐圧船殻に使われる鋼材を使用するとか、装甲材も構造の一部
として組み込むとか、積載量確保と軽量化に力点のおかれた設計になっていた。
機関に付いても、当初は潜水艦のディーゼルエンジンを元にした過給機付の出力ウ向上型を開
発採用することを目論んでいた。これは、航続距離の確保と車両と同じ軽質油を使うことで場
合によっては、臨時の油槽艦としても機能も持たせようという考えであったのだが、航空機の
運用と速力の確保の必要性にかられ艦本式の蒸気タービン機関に落ち着いたという経緯をもつ。

さて、実は一番困ったのは武装であった。
対空兵装だけなら、持ち前の九八式二十粍機関砲や海軍から供与された九六式二十五粍機関砲
で間に合った。大口径砲としても対空用なら八八式高射砲や九九式高射砲でとりあえずは十分
であろう。しかし、設計陣の頭を悩ませたのは「独航を考慮し適度な自衛火力を有する事。
(なお火砲は陸軍部隊で運用する)」の一文だった。
何故、独行を考慮する必要があるのか?
本来なら、輸送船は船団護衛をつけて目的地まで行くのが普通である。敵前揚陸するのではれ
ば、支援火力として少なくとも駆逐艦か軽巡、よしんば重巡が、できれば旧式でもいいから戦
艦の主砲の援護をつけることを前提とするのが普通である。しかし、陸軍が出してきた条件は
「独行」なのである。嘗て日露戦争当時の渡洋作戦において陸軍が兵力の輸送を海軍護衛の都
合により遅らせねばならなかった経験から、自前の船団を海軍の支援なしでも運用する能力を
陸軍が欲していたのは、知るひとぞ知る事実である。そして、その延長線上にあるのは、当然
の如く、海軍の支援無しでの上陸作戦決行であった。
これだけの規模の艦となれば、赤城や加賀のように十数門の十五糎より大きい口径の火砲を積
む事は可能であった。しかし、それは積載量を減らすことにつながり、好ましい選択とはいえ
なかった。また、その分確実に上陸用の大発動艇の積載数を減らすことになる。
少々威力不足の感があるが、一番好ましいのは海軍の八九式十二.七糎聯装高角砲を装備し、
これをもって上陸時の支援火力ならしめることであったが、海軍内でも不足する同砲をまわし
てもらうことは叶わなかった。
結果的には、最上甲板(飛行甲板)上に、野砲を設置し砲撃できるようにすることで一応の解
決を見るに至った。但しその場所は、航空機の運用を妨げないという制約から、右舷の艦橋後
方から重機重機の間に限られ、火力支援を行う場合は右舷を陸側にする必要がある。勿論常時
設置ではなく使用時のみ最上甲板に上げられ、所定の位置に設置されるもので、最終的にはそ
れも揚陸され使用されるこになっていた。しかし陸軍にとっては逆に好ましいとされたのであ
った。

<構造>
艦内は、機関其の他の物が納められた水線下部分の上に三層の全通甲板をのせ、その上に飛行
甲板を設けた構造になっている。
居住空間は最上甲板と第三層の間に確保され、決して快適とはいえないが、少なくとも海軍駆
逐艦のそれよりはマシな状態にはなっている。そこ以外にも、隙間を埋めるようにして、居住
スペースは確保され、運用人員と上陸部隊員を収容している。

貨物の搬入は第一層にある両舷のランプと後部ランプから行われ、汎用エレベーター(艦首の
一番目と二番目の通信アンテナの間と、後部大重量起重機の直ぐ横に一基ずつ。しかし艦首側
の物は第一層まで下ろせるが、後部はウェルドックの関係上第二層までしか下ろせない)
大発および積載貨物用(艦橋前部に設置、大発および積載貨物を各層への積み下ろしに使用)
の三機のエレベーターと後部甲板右舷に50tデリック(エレベーターシャフトを使って直接
船内に貨物を吊り下ろすことが可能)により、速やかに積み込みが可能である。また、艦橋部
後部にも起重機が一基あり水上からの吊り上げ、甲板上での移動などに使えるようになってい
る。

貨物が搬入される第一層は、いわゆるウェルドックとなっていて、後部の甲板の高さは海面す
れすれの位置にある。バラストに注水することで喫水を下げると艦尾から五分の三の低い甲板
は水没し、そこに搭載された大発、特大発は自力で艦から発進できる。この方式を採用した理
由は、ランプ式の場合、戦車等の重量物は空の大発を下ろしてからデリックで洋上の大発への
積み込むという手間が必要なことと、ランプからすべり下ろすとき、どうしても転覆の危険が
付きまとい、事故が起こった場合作戦の遅延を引き起こす危険性が伴うこと。自力発進方式に
はそれらの危険もなく、揚陸物資の搭載が艦内で行え、特に夜間作戦において、作業の効率お
よび光により発見される心配が少ないこと等のことから採用された。
艦首寄り五分の二は一段高くなっておりエレベータデッキとなっている。此処は注水した場合
でも冠水しないのはいうまでもないが、此処には先に述べた汎用エレベータと大発および貨物
用のエレベータがある。両舷のランプから入った場合は、このフロアへ入ることになる。この
一段高くなったフロアと冠水するフロアは右舷側にあるランプで繋がっていて、車両等は自力
でエレベータフロアへ入れるようになっている。
大発を積まない場合は、そこへ車両を積載することも可能である。
また、第一層の天上には、縦横に走るクレーンが備えられている。これは重量物移動用の物で、
現用の戦車なら吊り上げてウェルドック内の大発に積み込むことが可能である。

このウェルドック内には80隻ほどの大発が搭載可能であり、おおよそ、二往復すれば必要最低
の物資の揚陸が可能である。

貨物は第一層の一部および第二層、第三層、登載される。
しかし、要求がある場合は最上甲板にさえ、露天繋止することで積載が可能である。特に、ウ
ェルドックの大発だけでは足りないような場合は予備の大発を最上甲板に登載する。そのため
甲板は、全金属製となっており、規則正しくフック用の穴が等間隔で開いている。但し甲板位
置が高いため、積載物の重量配分には注意が必要である。

さて、先にも述べたように本艦は航空機運用能力を有している。
第三層に積載貨物を搭載しなければ、現用航空機(計画年度)において最大28機(捕用機を除
く)の搭載運用が可能である。勿論これらの運用能力は積載物との排他であるため、作戦にお
いてどれだけ航空機の運用が必要なのかを考え、搭載機数を調節する必要がある。
また、ある程度の第三層への荷物の搬入があってもできるだけ円滑に航空機の運用が可能なよ
うに左舷に航空機用のエレベータが設置されている。
運用航空機が三式連絡機およびカ号観測機の場合はそれで十分であろう。
尚、当然の事ながら、露天繋止で登載すれば、機数を増やせる他に、その分だけで運用するな
らば、積載貨物量を減らす必要は無い。

その他に特筆すべきものとして、上陸地点沖に停泊し、上陸作戦を指揮する必要があることか
ら、本艦には通信機能も必要十分なものを備えており、その能力は海軍が誇る給糧艦「間宮」
軽巡洋艦「大淀」の其れに勝るとも劣らない物を装備している。



<諸元>
武装:九六式二十五粍双聯機関砲x29
	 九九式八糎対空砲特x9
   九六式十五糎榴弾砲x10
   
   大型発動艇x80隻(登載数は状態によりかわります)
   
   航空機x28機(他の積載物と排他)
   
総排水量:66000t
積載重量:20000t(航空機および車両用燃料含む)
全長:250m
幅:36m
航海速度:20kt
最大速度:30kt
航続距離:18000km(20kt)
機関出力:180000hp(艦本式オールギアードタービン)四軸推進

<後書>
はじめまして、5万ドルの猫ともうします。
競争試作初参加です。以後お見知り起きを…

少々勝手が分からず。勢いででっち上げてしまったような船ですがいかがでしょうか。まあ、
それでも、資料をかき集めながらああでもないこうでもないと考えて作り上げたものではあり
ます。
初めは単なる輸送船だったんですけど、いろいろ調べていくうちに、航空機運用能力は必須だ
なぁとおもい、さらには、何で陸軍が船(輸送艦)を持ちたがったかということを理解するに
あたり、「独行を考慮し……」の要求仕様は海軍の手助けを借りずに単独で上陸作戦を決行し
ようとしているという確信を得たのでした。
結果、本来なら速力と貨物の積み下ろし能力を向上させた武装輸送船を必要な物資を運べるだ
け用意すればいいはなしなのでしょうが、渡洋作戦を単艦でこなせる能力を持った船の形態を
模索する破目になりました。
しかし、当時のものでは参考になるものが無いというのが現状で、唯一それらしいのが神州丸
だったのですね。しかも、この手の船の資料が無い。そこでスペックについては仕方なく現代
のものに範をとりました。結果できたのが本艦であります。