![]() 緒元
海軍の艦上戦闘機「新宿鮫」を生んだ三菱の自称超天才・堀越ジロー技師(「零戦」の堀越二郎氏とは別人である)が陸軍の要求に応えて作った迎撃機。上昇力と重武装を両立させるため左右非対称構造を採用しているのが特徴である。機体右舷に装備された排気タービンつき 2,500hp「ハ214ル」エンジンは直径なんと 4m の巨大な五翅プロペラを駆動し、これにより高度 10,000 メートルまでわずか 12 分という驚異的上昇力を実現していた。この値は海軍の局地戦闘機「飛電」と並び、日本機の上昇力としては双璧と言えよう。武装にはドイツ製の長砲身 50mm 機関砲(どうやって輸入したのかは謎である)を機体左舷に装備しており、命中すれば重装甲の B-29 といえども一発で空中分解させる破壊力を持っていた。 しかし本機は左右非対称のため操縦が難しく(当たり前だ)、なかんずく着陸の難しさは特筆ものだった。巨大なプロペラ直径をクリアするため脚が異常に長く、しかも轍間距離が 1.5m しかないため地上姿勢は著しく不安定で、これに 200Km/h を超える着陸速度と効きの悪いフラップが組み合わさった結果、福生の腕利きテストパイロット達をして「殺人機」と呼ばしめるほど着陸が難しい機体となった。 モックアップ段階では本機に着陸脚はなく、「飛電」同様減速パラシュートを伴う胴体着陸が予定されていた。設計主任堀越ジローは「脚なんてあんなの飾りです、偉い人にはわからんのですよ」と自慢気だったが、これを耳にした実験部今川大佐の「馬鹿者!」の一言でこのアイデアは却下され、急遽引き込み脚を装備するようになったという経緯がある。 本機の右脚はエンジンナセルに、左脚は胴体に引き込むようになっており、左右で脚の長さも駆動方式も違っていた。さらに、尾輪に至っては水平尾翼への外側引き込みという他に例のない機構が採用されていた。これらの脚はどれもトラブルメーカーで、その機構の複雑なことは悪名高い「紫電」の比ではなく、出なかったり引き込まなかったりすることは日常茶飯事だった。 本機には何故か非公式の機体番号「キ621」が与えられ、「毒猿」という意味不明の愛称(一説によると設計主任堀越ジローの趣味)までつけられた。福生の陸軍審査部に配備された試作機は文句を言われながらも実戦に出撃し、それなりに戦果を挙げたと伝えられる。 作者からのコメント 競争試作のネタばかり考えていたら、とうとう夢にまで見るようになってしまいました。この機体は夢に出てきた変なイメージに、「スター・ウォーズ」の左右不対称スターファイター「Bウィング」のエッセンスを混ぜて形にしたものです。また、解説にちょこちょこ出てくるように、三吉氏の海軍局地戦闘機「飛電」の影響も多大に受けています。 設計者の堀越ジローは「機動部隊・暴走記」で大活躍の人気キャラ(一部誇張アリ)です。彼はクルト・タンクを生涯のライバルと思っているらしいので、本機のデザインにもその影響を取り入れてみました。 文・画とも Copyright by Y.Sasaki 1998 10/18 |