
画:天城氏
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「葛城」は金剛級の代艦として計画された、条約型戦艦である。 金剛級の代艦であること、その予定艦名が山岳名であることから、こ の艦が高速戦艦、かつて巡洋戦艦と呼ばれた系列に属する種別の船であ ると推測する人も多いと思われる。 ある意味でその推測は正解であり、間違いとも言える。 なぜなら、この船は確かにかつての巡洋戦艦の血を引く船であるが、 装甲を犠牲にする英国式の設計では無く、速力、装甲ともに充実した独 逸式の設計、つまり実質的な高速戦艦そのものなのである。 では、その高速戦艦「葛城」はどのような性能なのか。以下に簡単な 諸元を記す。 高速戦艦「葛城」 計画諸元 基準排水量 : 34,800t 全長 : 240m 全幅 : 29.5m 吃水 : 9.7m 機関出力 : 200,000馬力 速力 : 34kt 航続距離 : 8,000海里/18kt 乗員 : 約1,400名(司令部要員75名) 兵装 : 35.6cm(L45)連装砲3基(前2基、後1基) 12.7cm(L40)連装高角砲10基 水偵4機/射出機2基 大型探照灯4基 装甲 : 舷側 305mm(傾斜角15°) 甲板 152mm 主砲 305mm 上記諸元からわかるように、この艦は速力、装甲、火力の優先順位の もとに設計されている。特に速力は34ktと巡洋艦並みの高速を誇ってい る。一方で主砲が連装3基、計6門と少ない。 何故、このような偏った設計がなされたのか。 なぜならば、この艦はもともと、艦隊決戦に投入されるべく計画され たのではなく、夜間水雷戦の指揮をつかさどるために設計された艦だか らである。 日本海軍が想定している艦隊決戦、それに先立つ夜間水雷戦で、巡洋 艦では指揮能力が不足することが、演習と長年の研究により判明した。 このため、巡洋艦と行動をともにすることが可能で、大規模な司令部 設備を持つ大型艦が必要となった。 またこの艦は、水雷戦隊と一緒に敵に向かって突撃せねばならない。 その際、指揮能力が簡単に喪失しては困るので、十分な防御力を必要 とする。そして、敵護衛部隊を突破するために、それなりの火力もまた 必要となる。 逆に、その防御力を利用して、指揮下の艦艇の楯となり、且つ雷撃目 標を指示するための大型の探照灯を装備する。 これらの要求を満たすために設計されたのが、高速戦艦「葛城」だっ た。 一方で、艦隊決戦における主力の戦艦とて、戦力に余裕があるわけで は無い。 夜間水雷戦に必要だからといって、戦艦並みの戦力を持つ艦を、水雷 戦専用に保有するわけにはいかない。 高速戦艦「葛城」は状況によっては艦隊決戦にも投入可能なように、 新条約で許される最大口径の14インチ(35.6cm)砲を搭載することとな った。そして防御力も14インチ砲対応防御を想定して設計されるように なった。 舷側装甲は、八八艦隊計画艦での経験を生かし、15°の傾斜を与える ことで、限定的ながら16インチ砲に対応できる防御力を持たせている。 こうした水雷戦指揮のための設計に、艦隊決戦への投入を可能とする 設計を上乗せした結果がドイツ式の巡洋戦艦、実質上の高速戦艦となっ たわけである。 但し、艦隊決戦に投入可能であっても、主力を務めるには主砲門数が 不足している。高速戦艦「葛城」は、金剛級の代艦であって、扶桑級の 代艦ではないのだ。その設計主点は指揮能力の充実にあり、主砲戦能力 にあるのではない。その速力も、防御力も本来、水雷戦指揮能力の発揮 のために与えられたものなのである。 高速戦艦「葛城」の設計面の他の特徴は、兵装の互換性にある。 「葛城」の14インチ連装砲塔は、長門級以前のド級戦艦に共通の14イ ンチ連装砲塔の小改良型であり、弾薬も共通して使用可能である。 統一砲戦を行なう場合にも好都合である。 また、主砲がほぼ同型であることは、乗員の養成、備品や弾薬の調達 に都合がよい。これは、日本海軍の重巡が一貫して8インチ連装砲を搭 載していたことと同様の効果が得られることを期待してのことである。 副砲を装備せずに高角砲を多数装備しているのも上記と同様の理由か らである。水雷部隊と行動をともにすることから、駆逐艦の主砲、重巡 の高角砲として搭載されている12.7cm連装砲を装備したほうが運用上、 都合が良いと判断された為である。高角砲は実質的に両用砲として運用 されることになる。 意外なことに、この高速戦艦計画は海軍内で航空主兵派の後押しを受 けている。これは航空主兵派が、空母に随伴可能な速力を持つ高速戦艦 を、空母の護衛として欲している為であるらしい。その証拠に高速戦艦 の兵装に対し、水偵設備を削減して、高角砲を増設するよう求めている ことから推測できる。 ちなみに、水偵設備を全廃した場合には設計上、40口径12.7cm連装高 角砲を3〜4基程度まで増設可能と考えられている。 最後に、再度強調するが、高速戦艦「葛城」は、水雷戦指揮のために 速力、防御力を充実させ、代償に火力を限定した高速戦艦である。 作者のコメント 指揮官ならぬ指揮艦ということで、ミサトさんの名前をいただきまし た。もともとが、空母の名前から来ている名前なので、本末転倒なんで すが(笑)。 さて、設計思想は、超甲巡の問題点を改良したフネです。水雷戦指揮 艦に装甲強化を施したようなシロモノです。艦隊決戦に投入可能なレベ ルまで、装甲強化しています。 14インチ連装砲なら、12インチ3連装よりかえって軽量でしょうし、 超甲巡より大柄な分を、装甲と機関出力の強化に費やしています。 むしろ、超甲巡よりもシャルンホルスト級に近い設計でしょう。 但し、主砲については、共用性と言う観点で、14インチ連装砲を搭載 しました。門数は6門あれば、一応の砲戦は可能ですし、1発あたりの 火力も新条約では限界レベルですから。 最後に、試験中で忙しい最中にもかかわらず、作画を引き受けて下さっ た天城さんへ、感謝いたします。有り難うございました。 |