_-_-_-_ 防空巡試案・甲案 by 天城
Project Anti Aircraft Cruisers

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第1次世界大戦では、多くの新兵器が登場した。 その中でも最も大きな脅威へと進化を遂げたのはほかならぬ航空機である。 そして、その航空機に対してそれまでの主兵力はあまりにも無力であった。 この結果、各国で「航空機の脅威に対抗するためのフネ」の計画が持ち上がってくる。

この「防空艦」の先陣を切ったのはイギリス海軍だった。 第1次世界大戦の際に建造した軽巡洋艦の主兵装を取り払い、高角砲や機銃を搭載したのだ。 この思いきった改装は、各国海軍に大きな衝撃を与えた。 実際に「防空艦」と言う艦種が登場した事で、 当初の「航空機の脅威に対抗するためのフネ」の計画がかなりの現実性を帯びたのである。

さらに、「防空艦」の生みの親イギリス海軍は同艦種の新造を行う事となる。 これが1940年に竣工したダイドー級である。 そして続けて、アメリカ海軍で1941年にアトランタ級が登場する。

ところで、日本の防空艦はどうであったか。
まず、一番最初に登場したのはイギリス海軍と同じく、旧式の軽巡洋艦を改造した「天龍」級である。 同艦は既に旧式化していた上に、ラックにより両舷へとスライドさせる魚雷発射艦の不具合、 さらにその対策として魚雷発射管架台を高くしたところ魚雷本体の強度が若干不足し、 水雷戦の遂行に著しい悪弊が発生したため水雷戦隊の旗艦として不適合とされ、 半ば存在意義を失っていた。 一時は廃艦が真剣に見当されていた程である。 そこへ防空巡洋艦と言う新しい艦種の計画が浮上してきたのだ。 この「防空艦」の実用試験に適当な艦は同級をおいて他になかった。

そこでただちに改装計画が動き出す。 だが、いくら実験価値のある艦種とは言えど、 たかだか「実験艦」であるだめに予算の都合上抜本的改装はできず、 重油専燃缶への換装等は見送られて改装内容は英防空巡と同じく主砲と雷装を撤去し、 代わりに八九式12.7cm連装高角砲4基搭載と言った比較的簡単なものとなる。

「天龍」級に続く、日本海軍の防空艦はかの有名な駆逐艦「秋月」である。 排水量3000トン弱の船体に強力な長10cm砲を4基搭載し、防空駆逐艦としては世界最強のフネだった。

そして、昭和16年───今度は新造防空巡洋艦計画が持ちあがってきた。 ところが、まさに太平洋戦争前夜とも言えるこの時期に船体を一から設計する余裕などあろう筈もない。 そこで、水雷戦隊旗艦として建造された「阿賀野」をタイプシップにすることとして新造防空巡建造計画が始まった。 この「阿賀野」級は、元々水雷戦隊旗艦用であるため、旗艦としての能力は申し分無く、 既に4隻が建造中であるため、建造にかかる工期の短縮も見込まれていた。 さてその計画案だが、武装は「軽巡」としての15.2cm連装砲から「防空艦」としての10cm連装高角砲とされ、 これを艦首に3基、艦尾に2基搭載。 また、主砲を高角砲とすることで舷側搭載の長8cm高角砲は下ろされ、 その代わりに従来の防空兵装である九六式25mm連装機関銃に加えて駆逐艦の小火機用にとドイツから輸入された37mm機関銃も搭載し、 遠中近3重の迎撃体制を整える事となる。

問題は、雷装だった。
航空戦隊の護衛艦として用いるのであれば、敵水上艦と会敵する可能性は低く、 雷装の搭載意義に疑問が投げかけられたのだ。
また「防空巡」として、機銃や高角砲の搭載を考えると甲板スペースが不足し、 艦の安定性から当初より予定されていた航空艤装の非搭載を勘定してもまだ安定性は不足気味だった。 さらに、予備魚雷の防弾も問題だった。 重巡の様にシェルター甲板に覆われているならともかくとして、 機銃弾の防御にすら事欠く予備魚雷の搭載はいわば自らアキレスのアキレス腱を生み出させる様なものだった。 幾度も会議がもたれ、色々と議論と検討を重ね、結果として防空艦への雷装搭載は取りやめられることとなる。
そして、その代用に搭載が企図されたのは九九式対潜臼弾砲だった。
健脚を誇る空母を守ると言う任務上、最大の敵はその健脚をはるかに凌ぐ速度を持つ航空機、 それと音もなく忍び寄って必殺の魚雷を叩きこんでくる潜水艦である。 敵水上艦など、護衛の駆逐艦にまかせて自慢のアシで逃げ切れば良い。 となると残るは静かに忍び寄る潜水艦、ということになる。 そこでこの対潜臼弾砲の出番となったのだ。 この九九式対潜臼弾砲は、陸軍の九八式臼砲のライセンス品で、 海軍が8cm高角砲と交換で入手したものである。 同砲の大きな特徴は、歩兵によって容易に運搬できる大砲として開発されたものであるために 砲自体が軽量な上、砲弾を前後に分割できる事だった。 また、弾頭を換装して焼夷弾を搭載し、近接防空火器として使用することも見込まれた。 同砲の対空射撃は、臼弾砲だけに射程は短いとは言え、 低速・低空で来襲する雷撃機を一網打尽にするには十分な能力を有していたと言われる。

こうして完成した防空巡洋艦計画の主要諸元は以下のとおりである。

排水量6652t
全長174.5m
最大幅15.2m
喫水5.63m
機関出力100000馬力
最高速力35kt
航続距離18kt/6000浬
兵装
主砲九八式10cm(L:65)連装高角砲5基
機銃一式37mm連装機関銃6基
九六式25mm連装機関銃13基
その他九九式対潜臼弾砲4連装3基
13号、21号、22号電探搭載

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