防空巡洋艦「阿賀野」、「大淀」、「伊吹」級
Japanese Anti Aircraft cruiser AGANO , OYODO and IBUKI class
一、日本の実状 岩本です。この三種には共通している事項があります。 名称を見れば判ることですが、第二次大戦中に建造された、あるいは建造されている艦の船体を流用したという事です。 私が船体を流用した理由は、単純の一言につきます。太平洋戦争開戦後起工され竣工した大型艦艇の内、完成した大型艦艇は、「雲龍」級の三隻ならびに軽巡洋艦「酒匂」この四隻に過ぎないという艦艇建造能力におけるお粗末な現実がある以上、一から新設計をするのでは太平洋戦争にはとても間に合わないという実状が存在しているからです。 また設計できたとしても、それを実際に建造開始できるとは想定しづらい状況があります。「阿賀野」級の4番艦「酒匂」、彼女の建造が開始されたのは配色の兆しが濃くなった1942年11月21日です。本来、同級は昭和14年度の補充計画によって建造が決定されていました。そこから建造開始まで3年もかかる。それが日本の国力の実状です。 「大和」級4番艦が建造途中でその建造がキャンセルされたという事例から、建造段階に至っていないこれらの艦の建造をキャンセルして、新型防空巡洋艦の建造を行おうとも考えました。 しかし、41年3月、つまり開戦前の段階において将来の戦いにさほど有用ではないこれらの大型艦艇の建造をうち切って、新型艦艇を建造しようとしても反対されるのがオチでしょう。設計終了後すぐ建造開始すれば、その時期が太平洋戦争開戦時期と重なるので、戦時枠を活用できるのかも知れませんが、快進撃を続ける当時において「防御」主体の艦の建造許可が下りるとは思えません。 理由は簡単、「戦時ではない」からです。 戦局が悪化し、これまでの計画を見直さなければならない必要性が生じない限り、他の枠を切り崩しても本当に必要なフネを造ろうという「理にかなった」改正が、平時において行われるわけがありません。 当時タラント空襲があったとはいえ、その攻撃対象は日本ではなくイタリアであった以上、「(防空艦の整備は)重要だ」と認識されていても、「まずは整備計画上のフネを建造する」事の方が大事です。海軍もお役所である以上、計画通りに進まなければ責任問題になります。 新型艦の建造をねじ込みたい。しかしそんな余力はどこにもない。また平時であるため計画される艦は造らねばならない。
そこで思いついたのが、建造中の大型艦を改装するという事です。 本来建造すべき状態を「第二状態」とし、その「第一状態」は防空艦として改設計の上建造する。改装空母と同じ手です。しかしこれはあくまでタテマエであり、実際には「第二状態」などできない純粋な防空艦です。 書類面はこれでいいのかも知れませんが、一番の問題は「俺のものは俺のもの」とジャイアニズムに走るだろう水雷戦隊、潜水戦隊からどうやって「船体」を奪い取るかです。 これについては、残念ながら思いつきませんでした。ただ競争試作の条件提示がされた以上、何らかの政治的アクションが採られたと判断しておきます(あせあせ)。つまり、早期に防空巡洋艦を戦力化するために何らかの政治的な援護射撃があったことで、このような強引な手法を採ることができた、という事です。
てことで(爆)建造中艦艇の改装という事になります。 それでは、要求に見合った船体を持ち(7.000〜10.000トン)41年3月以降に建造中・改装予定の艦を探してみると、 「龍鳳」、「千歳」、「千代田」 「大淀」、「仁淀」、「阿賀野」、「矢作」、「能代」、「酒匂」 「伊吹」、「301号艦」 になります。お寒い状況です。たった11隻にしか過ぎないのです。他にも改「阿賀野」級計画がありますが、それらの建造開始時期は44年以降と、役に立ちそうにないので除外しました。 これらの他に、競争試作という設定を考えるならば、5500トン軽巡の防空巡洋艦化改装という手もありますが、これは実際にそのような計画(1937年)が存在していたため、そのまま活用してしまうのは競争試作のルール違反でしょう。 また、「古鷹」級、「青葉」級重巡洋艦を防空巡洋艦化改装するという手もありますが、軽巡ならばともかく、1941年という開戦前の時期において、戦艦に準ずる攻撃力を持つ艦艇の改装を許すことはまずあり得ないでしょう。 また、前述の11隻の内、空母に改装されることが決定している「龍鳳」、そして「千歳」級に対しても防空巡洋艦化改装を行うということは、空母を一隻でも保有したいと考える帝国海軍にとってまずあり得ないことでしょう。そのためこれらの艦を除外しておきます。 あと「瑞穂」や「日進」といった水上機母艦を改装するという手もありますが、甲標的母艦としての任務や、機関がディーゼルという点から改装時に相当な手間がかかりそうなことからパスします。 そこで、建造途中の軽巡・重巡クラスを活用した防空巡洋艦への改装ということに落ち着きました。
二、防空巡洋艦試案 防空巡洋艦試案、これは1938年という非常に早い時期に日本が計画していた艦隊防空を主任務とする単機能型巡洋艦です。これと時系列的に同じ時期に設計案が出されたのが、「阿賀野」級水雷戦隊旗艦用巡洋艦、「大淀」級潜水戦隊旗艦用巡洋艦です。実際には戦局に益する事のなかったこれらの艦艇が建造され、太平洋戦争中一番必要であったろうこれらの艦が建造され無かったのは皮肉でしかありません。
漸減戦術を採用し、来襲してくる米艦隊に立ち向かうためだけに整備された連合艦隊にとって、防空巡洋艦試案のような「防御」を主目的とする艦を保有する事は、その存在理由と相容れなかったのでしょう、であるからこそこの艦は計画のみに終わり、実際に建造されなかったのかも知れません。 しかしながら、この防空巡洋艦が計画された頃、英米においてもまたこの艦と同じ性格を持った防空巡洋艦が建造されていました。 これが米「アトランタ」級、英「ダイドー」級です。 特に「アトランタ」級は、防空巡洋艦としての本来の役割ではないガダルカナルを巡る戦いで二隻が戦没した他は、空母機動部隊の守護天使として、その恐るべき防空能力で帝国海軍航空機を地獄へと送ったのです。(雷装があったのであながち防空戦のみを主目的としたとはいえないかもしれませんが。) 日本の防空巡洋艦がこのまま建造されていたとしても、レーダーやVT信管といった、最新技術を採用した米艦艇に戦闘能力で劣っていたことは否めませんが、長10センチ砲を連装12基も備えた本艦は、個艦の戦闘能力で比べた場合、英米の防空巡洋艦よりも遙かに強力でしょう。 しかしながら先述したとおり、本艦は実際には建造されることはなく、日本における艦隊防空を主任務とする防空艦は、「秋月」級駆逐艦がそのかわりとして建造されたのでした。それも終戦までに竣工したのはわずか12隻にしか過ぎません。 そして、少ないながらも彼女たちが洋上に出た頃になると、彼女たちが守るべき空母もほとんど無くなっているという状況でした。
三、防空巡洋艦への改装 1941年という非常に遅い時期での要求では、ミッドウェイ海戦には間に合わず、各工廠・工場がどう頑張ったとしても、それらのフネが戦力化するのは第二次ソロモン海戦か南太平洋沖海戦になってしまいます。 しかも、この戦いに間に合うといえば「阿賀野」級の一番艦、「阿賀野」だけでしょう。後の艦は、最後の機動部隊同士のまともな戦いであるマリアナ沖海戦に全艦揃って間に合うかどうかぐらいにしかなりません。これらが揃えばそれなりの活躍を見せてくれるとも思います。「翔鶴」「大鳳」を守ったりという可能性があるかも知れません。 これらの中で、「伊吹」は建造開始時期が42年4月と極めて遅く、防空巡洋艦として工事を進展したとしても間に合うかどうかは疑問符が残るかも知れませんが、6ヶ月の中断期間が無く、また本級本来の空母改装への手間を考えるならば、マリアナ海戦時に完成する事も可能であったかも知れません。 製作に非常に手間のかかる長10センチ砲が果たして間に合うのかという問題がありますが、「秋月」級の建造をうち切ってもこれらの戦力化を行う方が、人員のことを考えても良いと考え、このまま全艦長10センチ砲を搭載しています。 それではこれら三クラスの防空巡洋艦化改装を行ってみます。
・「阿賀野」級
・基準排水量 7,152t ・全長 174.5m ・最大幅 15.2m ・吃水 5.65m ・出力 100,000hp ・速力 35kt ・兵装 65口径10センチ連装高角砲10基 25mm三連装機銃5基、同単装8基 ・航空機 なし ・同級艦 「能代」 「矢作」 「酒匂」
・「大淀」級
・基準排水量 8,150t ・全長 189m ・最大幅 16.6m ・吃水 6m ・出力 110,000hp ・速力 35kt ・兵装 (竣工時) 65口径10センチ連装高角砲12基 航空機 3機 25mm3連装機銃6基、同単装6基 (最終時) 65口径10センチ連装高角砲14基 航空機 なし 25mm3連装機銃10基、同単装6基 対空奮進弾発射機二基 ・同級艦 なし
・「伊吹」級
・基準排水量 11,500t ・全長 200m ・最大幅 20.2m ・吃水 6.1m ・出力 152,100hp ・速力 35kt ・兵装 (計画時) 65口径10センチ連装砲14基 航空機 3機 25mm3連装機銃6基 (竣工時) 65口径10センチ連装砲16基 航空機 なし 25mm3連装機銃7基 対空奮進弾発射機四基 同級艦 なし
この三クラスを改装するとなるとこれぐらいが妥当であると思われます。
「伊吹」級に関しては、重量減の方策を採ったとしても排水量が1万1000トンぐらいになると思われますが、要求項目が「1万トン前後」と厳密に規定されていないので、これでもOKでしょう。 「大淀」級・「伊吹」級とも後期になれば航空機装備を撤去していますが、史実の「大淀」も航空兵装を減少させるという方策を採っていますし、大戦後半になって水上機が活用できる状況になるとはとても思えないので、その分防空能力を拡充させるために撤去したという設定です。 本来ならばこの後にSSでも入れようかと考えていましたが、3クラス含めて書いていると、とんでもない量になるのであきらめましたm(_ _)m。 |