XP−56『シカダ』

『シカダ』

全長:67ft.(約20m)
全幅:60ft.(約18m)

翼面積:1300平方ft.(約120平方m)
機体重量:22万ポンド(約10トン)
STOL運用時の最大離陸重量:35万ポンド(約15.5トン)
最大離陸重量:45万ポンド(約20.5トン)
エンジン:アリソンV型12気筒 1,275馬力×4基
武装:20mm機関砲×4門(弾丸 各300発)

最高速度:時速470マイル(約750km)/高度25,000ft
失速速度:時速20マイル(飛行重量35万ポンド未満の場合)
航続距離:STOL運用時2,800マイル(約4,500km)
最大燃料6,300マイル(約10,000km)
乗員:2名

ジンマーマン技師は、ヴォート社で、円形戦闘機の開発に着手していたが、予算不足などで、前途がけわしい.
そこに、陸軍が、目的達成のためなら予算つかいほうだいという夢のようなオリエンテーションをした.
ジンマーマンは狂喜し、さらに全翼機に経験をもつノースロップ社の協力を得、シカダ・プロジェクトは一気に前進した.

1940年秋には試作機が完成した.図版は、その1号機である.
昇降舵は二重構造になっており、離着陸時には国籍マーク付近からガバッと作動、飛行時には、ラダー部のみが作動する.

パイロット2名は、コクピット後部にはしごをかけてよじのぼり、着席する.
「こりゃ、飛びおりるにはいいね」
コクピットの後ろには、なにもない.
コクピットは、前後ともに同じレイアウト.どちらかが疲れたら交替してもいいし、操縦と通信を分担してもいい.
シカダの操縦はくせが強いから、練習機として使えるようにしておかないと・・・
いよいよ初飛行だ.
プロペラは、ハミルトン・スタンダード社特製の、直径4.8mもあるやつだ.(二重反転ではない)
トルクが強く、あまり滑走安定性はよくない.
スタートして、60mも進まないうちに昇降舵を引いた.
とたんに機首が30度も傾斜、そのまま強引に離陸してしまった.
離陸すると、すぐに飛行モードになり、昇降舵面積が小さくなる.
シカダは重心が前よりだから、すぐに機首は下がり、普通の飛行機のような角度で上昇していく.
こんどは着陸.
バルーニングが強く、なかなか失速しない.
時速50マイル・・・30マイル・・・まだ降りないのか!
ここで昇降舵を引く.ようやく主輪が接地、続いて機首輪も接地、わずか40mで停止した.
シカダは、離陸も着陸も、尾部をぐっと下げるのがコツだ.

シカダには、本来2000馬力級のエンジンがふさわしい.
そうすれば、速度は530マイル(850kmh)を超える!
また、その場合は、滑走なしで離陸したり、空中で停止することも可能・と計算された.

シカダは単発の戦闘機には当然ながら、かなわない.
長距離侵攻してくる護衛なしの敵爆撃機が目標だ.
STOL離陸や、空中停止などをやらなければ、連続20時間近く飛べる.
だから、敵爆撃機を迎えるというより、積極的に探して追いかけてしとめる.

さらにレーダーを搭載すれば、夜間戦闘機としても使用できると説明された.しかし、この提案は、別途ブラックウイドゥ・プロジェクトを企画するノースロップ社の営業方針とかち合い、このあたりから両者の協力関係がぎごちなくなっていく.

また、シカダは高価な飛行機だった.旋回砲塔などの装備なしにもかかわらず、B17爆撃機の1.5倍の価格は、どうしても引き下げられなかった.

のちにジェット機が実用化されると、陸軍航空隊の関心はそちらにむかい、シカダはふりかえられなくなってしまう.

リフトエンジンや、推力偏向装置なしに、超短距離での離着陸や空中静止できる固定翼機は、20世紀末にあっても存在していない.


『Vx1e』
秘密工場で実物大モックアップ審査を受けるCICADA XP−56試作2号機.
急ぐため、エンジン、ナセル、プロペラなしで行われた.
一緒にならべられた、英国製戦闘機と比べ、異様な図体であることが一目瞭然である.
こんなものが、上空から急降下で襲ってきたら、枢軸側爆撃機搭乗員はパニックになるかも.
あまりの異形ぶりに躊躇する高官たちには、「ああ、これは、後退翼の一種とお考えください.
今後の高速機のトレンドでしょう」とけむに巻いておいた.


『Vx2e』
秘密試験場で、風洞試験中のCICADA XP−56試作2号機.
STOL性能を追求するなら、円形翼のほうがすぐれているが、今回の課題は「最高速」.
高速機動のためには、この翼形のほうが良い.
ジンマーマンは不満だったが、試験の結果、垂直尾翼面積不足が指摘された.
主翼・尾翼の「外翼」部分は、飛行中は下に90度折り曲がる形式で、このアイデアは後にXB−70に生かされることになる.
画像は、時速500マイルを想定した急降下機動試験で、尾部が少し振動しているのがおわかりだろうか?
直接関係ないが、試験場の奥にうずくまるのは、ここに棲息する怪獣である.