
諸元 全長 : 9.50m 全幅 : 14.00m 自重 : 4,100kg 全備重量 : 5,800kg 発動機 : P&W R-2800-21 空冷星型複列18気筒(ターボ過給器付) 離昇出力2,000馬力×1 最高速度 : 748km/h 上昇力 : 6,100m/5分00秒 航続距離 : 1,600km(正規)、2,800km(増槽装備) 武装 : 20mm機銃×4(胴体下面) 乗員 : 1名 XP−56Bはノースロップ社がXP−56の安定性不良に対応するために 設計した機体で、XP−56に代わってR40C計画に参加した機体である。 まず、この機体の特徴を簡単に列挙する。 ・V字先尾翼付の「無尾翼」形態機。 ・発動機に信頼性の高いR-2800系空冷発動機を使用。 ・主胴体を紡錘形とし、空気抵抗を軽減。 ・発動機は機体中央、もっとも機体の太い部分に配置。 ・推進式プロペラ装備。延長軸で駆動。 ・冷却能力補助のために強制冷却ファンを装備。 ・高々度性能確保のために排気タービンを装備。 ・主胴体の主脚をタンデム配置とし、プロペラ接地の危険性を軽減。 XP−56はその設計当初から、安定性不良が懸念されていた。これは無尾 翼機の宿命とも言うべき欠点で、正攻法で克服するには時間がかかる。 XP−56Bは、この欠点の克服を安易に尾翼の付加で解決する設計となっ ていた。とは言え、無尾翼機の利点は尾翼を排除することで、限界まで空気抵 抗を減らす事である。安易に尾翼を追加したのでは利点を帳消しにしてしまい かねない。XP−56Bの設計は、この尾翼の追加による空気抵抗を最小限に 止めることがその骨子となっていた。その結論が「V字先尾翼」の採用であっ た。 V字先尾翼は、単純に垂直尾翼・水平尾翼を採用するよりは空気抵抗の増加 は少ない。しかしその構造上、的確な操舵は困難である。 ここでノースロップ開発陣がとった方策は、発想の転換、あるいは原点への 回帰とでも言う物であった。もともと無尾翼機は、その名が示すように尾翼を 持たない。機体のコントロールは補助翼の操作などで行なうのである。 XB−56Bの場合、そのV字先尾翼は機体の安定のみに用い、機体の姿勢 制御は従来通りの無尾翼機として行なうという方針で、V字先尾翼の操舵の困 難さを無意味なものにしてしまった。 無論、無尾翼機の姿勢制御も困難なものであることには代わり無いが、V字 先尾翼の操舵よりは、データの蓄積のある無尾翼機の姿勢制御のほうがまだ見 込みのある選択であった。 XP−56がP&W X-1800水冷発動機を装備予定だったのに対し、XP− 56Bは当初からP&W R-2800を装備する設計となっていた。X-1800をはじ めとする、新開発の水冷発動機群の高性能は魅力的であったが未だ開発途中で あり、その開発如何では機体の命運にもかかわりかねない。このリスクを避け るため、ノースロップ開発陣はすでに性能の安定しているP&W R-2800空冷 発動機を採用した。 空冷発動機を採用したことによって主胴体が太くなったが、空気抵抗を最小 限に抑えるため、主胴体を紡錘形に成形し、発動機をその中央に配置すること で、主胴体の太さを発動機直径ギリギリに抑えた。推進式プロペラを採用した ため、プロペラ後流の影響もなく、紡錘形主胴体は計算値通りの低抵抗性能を 発揮した。 発動機を主胴体中央に配置したことで、機体尾部のプロペラは延長軸で駆動 することとなったが、マスプロを得意とするアメリカの精密工作技術は延長軸 の使用にもまったく不安を感じさせなかった。 むしろ問題だったのは空冷発動機を装備したことでの冷却不足であった。機 体の空気抵抗を最小限に抑えるため、冷却気取入口が小さく、冷却気流入量が 不足すると考えられたのである。 ノースロップ開発陣は冷却気流入量を増加させるために、強制冷却ファンを 機体尾部に追加した。これで、冷却気流入速度を向上し、単位時間当たりの冷 却気流入量を増加させることで、冷却問題を解決した。 また、強制冷却ファンをプロペラと逆回転とすることで、副次的効果として プロペラトルクが解消され、機体の安定性が向上した。 他の措置としては、排気タービンの装備が挙げられる。これによって得られ た余剰出力のため、上昇性能、加速性能が大幅に向上した。代わりに燃費は悪 化し、その太い胴体、大きな主翼がもたらす大容量の燃料容量でも航続距離は かなり低下した。 主脚は機首、機尾、両翼の4点着陸式。機尾の主脚は尾部の推進式プロペラ が接地することの防止策である。 1943年1月、XP−56Bは初飛行に成功した。V字先尾翼はその設計意図 通り、優れた安定性を発揮した。しかし、無尾翼機の宿命と言ってもよいのだ が操縦性は悪く、空戦向きの機体ではなかった。このため迎撃任務に用いるた めには、その速力を利してひたすら一撃離脱を行なうしかない。 このため、 操縦席後方のV字先尾翼が後方視界の害になることはさほど問題視されなかっ た。 XP−56Bは操縦性は悪いが、速力、上昇力は、充分に要求仕様を満たし ており、また、飛行試験において、加速性能、安定性、稼働率なども良好な性 能を発揮した。 その異様に先鋭的な機影を除けば、迎撃専用機としてはかなり期待の出来る 機体である。 作者のコメント 巣田 夏生です。 この当時の米国で開発された大馬力液冷エンジンは、そのほとんどが失敗作 となっています。そんな訳で稼働率重視で空冷を選択しました。 空冷のR40C計画機といえば、XP−56です。もともとXP−56は、 液冷のX-1800装備予定で、X-1800の失敗でR-2800装備に切り替えた機体です。 このための冷却不足と、安定性の不良で失敗作となったXP−56ですが、 最初から空冷装備で、安定性不良が解決できていたら、と言う発想でXP−5 6Bを作成してみました。安定性不良が原因で、速力も計画値に遠く及ばない 400km/h台に止まったといわれるXP−56が真価を発揮できていたら・・・・、 と言う作品です。 XP−56「ブラック・バレット」については「架空機のような実在機」のお 部屋を参照して下さい。 |