![]() ベル XP-52 側面図
解説 1939 年 12 月の R40C 競作に挑んだベル社が送り出した珍機。ベルの技術者は「一般的な形態に とらわれないこと強く希望する」という一文にこだわりすぎたらしい。四角い胴体と長い機首、とりわけコクピット部分の傾斜と機首砲口ブリスターは「ワニ」を連想させた。開発者が冗談で口にした渾名「エアラゲーター」が米陸軍の制式ニックネームになり、受領したテストパイロットは面白がって「サメ口」ならぬ「ワニ口」を描く有り様だった。 ![]() XP-52 エアラゲーター 米陸軍における塗装 胴体中部に装備されたターボチャージャー付きコンチネンタル XI-1430 エンジンは、延長軸で機体後部の推進式二重反転プロペラを駆動した。ギヤボックスには「エマージェンシー・ボルト」と呼ばれる火薬ボルトが仕込まれており、これを炸裂させるとプロペラシャフトが脱落し、パイロット脱出時の安全を確保するようになっていた。ラジエターは主翼付け根前方の胴体下部に半埋め込み式に設置されていた。 機首には長砲身の新型 M9 37mm 砲と AN-M2 20mm 機関砲二門、両翼には 12.7mm 機銃を二門搭載。後方にプロペラがあるため 37mm と 20mm の薬莢はコンテナに格納、主翼機銃の薬莢は翼端の排出穴まで電動ベルトコンベアで運搬され、プロペラ回転圏外に投射されるという凝ったものだった。 高々度性能を確保するため高アスペクト比の主翼を採用。垂直安定板は機体後部上下に不対称な形で取り付けられ、下部にのみラダーが設けられていた。後部プロペラの回転圏を確保するため主脚は長く、機首輪は機関砲との干渉を避けるため 90 度横に寝かせて引き込むようになっていた。 ![]() XP-52 内部配置図 テストの結果は惨々だった。カタログ値 1,600hp の XI-1430 エンジンは 1,300hp 程度でアップアップしてしまい、排気タービンは過熱に悩まされ、安定性が悪い割に運動性も悪く、二重反転プロペラは故障ばかり引き起こし、上昇力も最大速度も軍の要求にはほど遠かった。主翼銃の排莢機構は詰まってばかりで使い物にならず、新しい M9 37mm 砲の不調にも悩まされた。 ところが何をとち狂ったのか、米陸軍は改良型 P-52A 300 機の量産をベル社に発注した。P-52A はプロペラを四枚羽の通常形式に交換、排気タービンと翼内機銃を取り去り、爆弾ラックを搭載した地上攻撃機型である。しかし最初 120 機が完成したところで軍はこの機体の使い道がないことに気づき、あとの 180 機はキャンセルされた。作ってしまった 120 機の行く先は…こんな厄介者を有り難く引き取ってくれる先は一つしかない。P-52A はすべてレンドリース契約でソ連に送られた。ソ連ではこの機体をどうにか使いこなし、短期間ながら東部戦線で実戦投入したと伝えられる。 ![]() P-52A ソビエト空軍における塗装 作者からのコメント ワニです。またしても不採用前提の火葬機です。まず「エアラゲーター」という名前が先に浮あって、ワニ型の機首を持った推進式の機体というコンセプトは後から浮かびました。三面図を描く気力がないので今回は側面図だけです。似せるつもりはなかったのに A-10 に似てしまいました。 文・画とも Copyright by Y.Sasaki 1999 7/20 |