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昭和10年1月に海軍から出された戦艦「扶桑」級の改装案には,さまざまな物が存在した。 中でも,「既存の概念に捕らわれぬ斬新な発想の改装案」として進められた「改装特殊案」は,通称「TA艦」と呼ばれ,数々の改装案の中でもある意味特異な存在感を放っていた。 TA艦の「TA」とは,文字通り「改装特殊」の頭文字である。主務者は勝須朗尊技術中将―――艦政本部内では「ブチ切れ甚八」として数々の迷案を残した佐保光樹技術中将と双璧を為す程のパラノイア的人物として知られた,その人である。ただ,如何にも「狂人」的趣のあった佐保とは異なり,勝須は人間的にまだまっとうな「常人」であり,幾分救いはあったと言えよう。ただ,その分「ナニ」な技術に対する情熱が暴走していたといった感は拭えない。 閑話休題。兎に角「既存の概念に捕らわれぬ斬新な発想」に取り掛かった勝須は,暫くして幾つかの概案を作成した。それを福井静夫氏が所蔵する大量の艦政本部内部資料から抜粋すると,次の様になる。 ・一撃必殺の大攻撃力砲搭載案―――打撃戦艦案TA−29号 ・果てしなき高速力を求めて……―――高速戦艦案TA−25号 ・戦艦の攻防能力と空母の汎用性を極める―――強襲空母案TA―23号 ・未知なる可能性を求めて―――格闘戦艦案TA−27号 とまぁ,こんな所である。これは別に作者の創造ではなく,実際に公文書に書かれていた説明文である。公文書に戦後流行るトンデモ兵器本と同じような単語を羅列してしまう所に,勝須という人物の怪しさを窺い知る事が出来る。 では,各案を順に解説していこう。まずは一番有望視されていた案の,打撃戦艦案TA―29号からである。この案は,上の文章にもある通り「一撃必殺の大攻撃力砲搭載」こそが,その存在意義全てとも言える。その砲とは,一体何であったか―――それは,「45口径100cm砲」という,空前絶後の巨砲である。それを単装一基,ただ一門をでんと艦に配するという,よく言えば豪快な,悪く言えば「正気か!?」という案であった。 しかし,日清戦争時の三景艦の戦訓により,「砲一門で何をどうしろというのだ」という現場からの声に対応して,砲を二門搭載するという計画に変更された。福井氏がこの「打撃戦艦案」の予想図を描いているが,その予想図こそはこの砲二門案である。だが,二門に増やすと明らかに100cm砲の搭載は不可能―――という事で,45口径51cm砲という「常識的な」砲に変更された。51cm連装砲塔……この巨大なものを搭載する為に,艦容は一変している。 案としては,前部に砲を搭載した甲案と後部に配した乙案の2種類があった。甲案のほうは第一砲塔以外の構造物を全て撤去,第六砲塔を出来る限り後方に移設し,そして中央よりやや前方寄りに巨大な砲塔を配した。艦橋は新しく塔型艦橋を砲塔の後方に搭載し,誘導煙突により排煙するという設計であった。乙案は第三〜五砲塔を撤去し,巨大化した煙突を移設して後方に向いた砲を搭載するというものであった。前者は変更点数が多いために工期に間に合うかどうかが問題視され,後者は肝心の強力な砲が前方に発射できないという点が問題とされた。 だが,それよりも何よりも更に大きな問題が立ちはだかった。技術的に,51cm砲の搭載は「不可能」だったのだ。やむを得ず,砲は46cmの三連装に再度変更された。ここに至って,目標は「絶大な攻撃力を持つ」から「1号艦のテストヘッド」に変更されてしまっていた。 打撃戦艦に対する各方面の情熱は既にかなり冷めてしまっていた。おまけに,1号艦自体の設計が既に大方出来あがっていたという事もあり,本図の上がらぬまま計画は中断されてしまった。 続いて,高速戦艦案,TA―25号である。恐らく,TA艦の中では最も分かりやすい改装内容と思われる。第三,四砲塔を取り外して缶を増設,と同時に機械と缶の近代化を行い,なおかつ艦首尾延長,球状艦首の採用による造波抵抗の減少といった数々の改良により,機関出力20万馬力,最大速力35kt発揮すると見込まれた。ただ,防御は従来のままであり,この点だけは懸念された。それでもこの速力は大きな武器といってもよく,軍令部に正式案として提出された時も好評を博していた。だが,減少した砲力を懸念する声も見られた。 強襲空母案TA―23号は,初期においては第五,六砲塔を取り除き,そこに水上機運用施設を設けただけという,極めて簡素なものであった。しかし,勝須がそのような案で納得するわけが無い。「水上機みたいな半端な物を使うくらいなら,いっそのこと本物の艦載機くらい積みたいよなぁ……」と勝須が本当に言ったかどうかは定かではないが(多分言ったと思われる),「水上機母艦の能力を持った戦艦」は,「戦艦の攻防性能と空母の多用途性とを両立させた新時代の戦艦」へと変わってしまったのである。 内容としては,先に述べた基本計画を更に発展させた物と解釈すればいいだろう。艦体は艦首尾延長,機関強化といったオーソドックスな内容である。肝心なのは,上部構造物である。 まず艦載機の運用を可能にする為,艦橋より後方の構造物をすべて撤去している。そして,その跡地に二段式格納庫を備えた。これにより,常備48機の運用が可能となる。飛行甲板は格納庫の上に配置されている。 ただ,これだけでは発艦が出来ないため空母とは言えない。だが前部に搭載された四門の主砲の発射には艦橋の存在は不可欠である。この矛盾を解決したのが交叉甲板―――いわゆる,アングルド・デッキである。左舷に向けて斜めに大きく張り出した飛行甲板は発艦を可能にしただけでなく,甲板面積の拡大による取り回し性の向上という副産物も呼んでいる。通常の甲板に比べ幅が広いため,格納作業がスムーズに行えるのだ。 煙突は,赤城等の他の日本空母と同様,舷側煙突を採用している。これは甲板面積の拡大というだけでなく,着艦時に発生する排煙による悪影響の排除を狙った物である。ただ,これに関しては艦橋による乱流があるために,せいぜい気休めではという意見も囁かれた。 このTA―23号案も,正式に軍令部に提出された。「いいとこどり」が何よりも好きな日本海軍には,この案はツボに填ったものといえる。それでも,工数の多さに対する半端さは否定できないだろう。 ここまで説明してきたTA艦―――TA−29,TA−25,TA−23各号は,図面乃至予想図といった形で出ている為,分かりやすい。しかし,多だ一つ,予想図すら描けない案が存在する。それが格闘戦艦案,TA―27号である。 きっかけは,勝須の友人の海軍士官,白鳳院久禰大佐との会話である。白鳳院家は,白鳳院柔術の宗家である。彼は,白鳳院流柔術の正当なる後継者だった。ある時勝須から扶桑改装の計画についての相談を受けた時に,白鳳院は次のように提案したのだ。 曰く,「戦艦で敵艦投げるってのはどうですかねぇ?」 類は友を呼ぶとは,昔からいう諺である。しかし,こうまで的確な例があるだろうか?勝須の問いに,大真面目でこう答えると言うところは,流石としか言い様がない。ただ,それを冗談と取らず,本当に進行させてしまう勝須も勝須ではあるが。 では,白鳳院のいう格闘戦艦であるが,この詳細ははっきりしていない。「ワイヤー付きの銛を打ち込んでウインチと艦の機動性によって本当に投げ飛ばすつもりだった」とか「高速で接近して楔を打ち込み,2隻1組となり敵を撃滅する」とか,さまざまな憶測が流れている。 しかし,真相は明らかになってはいない。流石の勝須もこの計画だけは纏め切れなかったようである。 以上が,日本海軍技術中将勝須朗尊の入魂の改装案,「TA艦」である。四つの大きな案のうち,軍令部に提出されたのは比較的マトモなTA―25号案とTA―23号案のみであった。 しかし,その案の中には数々の新機軸が見受けられ,勝須の技官としての非凡な能力が現れている。軍令部でもこの斬新な案には騒然となり,選考は難航に難航を重ねた。 ≪扶桑級戦艦改装特殊案 TA計画案各艦諸元≫ ◎打撃戦艦案TA―29号 全長…205.1m 全幅…28.7m 基準排水量…――――― 機関出力…――――― 航続距離…――――― 最大速力…――――― 武装…45口径51cm砲連装1基,45口径36cm砲連装2基(甲案) 45口径51cm砲連装1基,45口径36cm砲連装3基(乙案) ◎高速戦艦案TA―25号 全長…225.1m 全幅…28.7m 基準排水量…――――― 機関出力…200,000馬力 航続距離…――――― 最大速力…35.1kt 武装…45口径36cm砲連装4基,45口径12.7cm高角砲連装6基 ◎強襲空母案TA―23号 全長…225.1m(水線長) 全幅…30.5m 基準排水量…――――― 機関出力…160,000馬力 航続距離…――――― 最大速力…31.5kt 武装…45口径36cm砲連装2基,45口径12.7cm高角砲連装6基 搭載機数…48機(補用6機) ◎格闘戦艦案TA―27号 詳細不明 ****************************************************************************** ★作成後コメント―――究極超国家あ〜る版 ども、あ〜るです。 え〜、、今回の競作。 全てはこんな会話から始まりました。 「改装のネタ、どうしましょうね。」 「100サンチ砲1門積んだ"打撃戦艦"なんて如何です?」 ほんの軽い冗談のつもりでしたが、そこはアニメマニア。 ヤマモトヨーコに対する思い入れもあって、今回の作品へと発展するのであります(笑)。 ただ、肝心の「打撃戦艦」と僕の好きな綾乃の乗る「格闘戦艦」がついに日の目を見 ることなく投稿の締め切りが来てしまったことは、ちょっと残念です。 さて今回の競作、前代未聞の「合作」と言う提案に乗っていただいた海野氏。 また、快く許可をして下さった胃袋氏、さらに、区画図を提供して下さった天城氏に この場をお借りして、心からの御礼を申し上げます。 この作品は、あなた達がいなければ、永遠に完成することなく、 時代という流れの中に埋もれてしまっていたことでしょう。 最後に、こんな火葬艦たちに目を通して下さった皆様方にも、深く御礼を申し上げま す。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ☆作成後コメント―――海野土左衛門版 ども,毎度毎度の海野土左衛門でございます。 今回は恐らく競作史上初と思われる設定を含む共作という形での参加になりました。 究極超国家あ〜るさん,どうもご協力ありがとうございました(ぺこり)。 この作品は,設計技師の名前だけでピンと来られた方もいらっしゃると思いますが, とある宇宙戦艦を元ネタに作成した案です。ですが,「ヤ●モト」の方であって,決し て,「ヤ●ト」なるブツではございませんので,ご了承下さい(笑)。 担当としては,原案は海野&あ〜るさん共同,文章書きは海野です。画像の方はTA −29号乙案とTA―25号があ〜るさん担当,TA―29号甲案とTA―23号が海 野の担当です。因みに,TA―27号のエピソード設定はあ〜るさんの提案に,海野が 肉付けしたものです。如何でしょうか? 最後に,究極超国家あ〜るさん,そして海野土左衛門,この架空機の館でも屈指の二 大アニメ莫迦の火葬な案をご覧になって「ふざけとんかコイツら・・・(−−♯)」とお 思いになった皆様,「誠に申し訳ございませんでした!!!(平身低頭)」 でわでわぁ〜〜〜(^^ゞ;;;;;;; 平成11年10月31日23時41分 林原めぐみ「ふわり」を聴きつつ・・・ (財)郷研聯盟会長 海野土左衛門 追伸,無な企画を許可してくださった胃袋さん,そして,立派な画像を快く提供して 下さった天城さん,どうも有難うございました。心より,感謝致します。 |