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護衛空母「浦賀丸級」大量生産への道すじ(本文に登場する人物名、団体名などは全てフィクションであり、偶然に同名の実在者とは関係ありません) ◆プロローグ 1939(昭和14).2月、海軍は船団護衛を主任務とする護衛空母の開発を計画した. その計画について、海軍では、米英との技術水準比較研究を行ったが、驚くべきことに、あらゆる点で帝国が劣っていることが判明した. だが、ここにいたって、慌てたところでどうにもならない. 「技術の劣勢は、訓練と、そして数でおぎなおう」という、画期的な構想が山本大将から飛び出た.資源に劣る帝国が、数で米英を圧倒?できるのか、そんなことが?……いや、やらねばならない. ◆フェーズ1:資金調達 といって、国庫には金がない.では民間から集めましょう・ということで、郵便貯金を全部統括する資金運用部を大蔵省に設置.加えて産業報国債券を年利6分で発売した.その宣伝ポスターには、当時のスーパーアイドル、原節子と李香蘭が起用されたことが大きな話題となり、産報債の売れ行きは好調だった. ◆ フェーズ2:設備投資 昭和14年末に、資金が潤沢に集まる見通しがつくと、海軍は民間造船業者を集めて、2万トン級船舶の造船設備投資の説明会を行った.設備投資の半額を政府が負担するが、有事には海軍が接収するというものである. この設備投資に応じた業者は次の通り. 新潟鉄鋼、日本海造船、横浜船渠、浦賀船渠、石川島重工、日立向島、 播磨重工、大阪造船、波止浜造船、三井玉野、三菱長崎など、48個所である. ◆ フェーズ3:船体設計 昭和14年4月から、急速造船の研究が始まった.欧州大戦の際、フランス海軍からの注文で、駆逐艦を3ヵ月で竣工させた経験があったので、その工程管理表をもとに、船体工事3ヵ月+儀装2ヵ月+なにやかや・で、6ヵ月で就役できる見通しがついた. 船体は190mの長さで、22mの幅のある、輸送船と巡洋艦を足したような形で、とにかく直線を主体とした簡易なものである. 喫水が5m余りと浅いのは、排水量を1万トンにせよ・との厳命のためで、これは米国のカサブランカ級よりも50cm浅い. また、日本製鉄、住友金属など、本艦に使用する鋼材は、なるべく工事現場での加工を少なくするため、製鋼所サイドでプレカットして出荷されることになった. 船体は3層構造で、下甲板下が重油・軽質油タンク、上が機械・缶室・弾薬庫である.中甲板が格納庫甲板であり、各乗組員の居住区であり、作業場所でもある.つまり、格納庫で寝起きして働いて、飛行機をいじくりまわす・ということだ. 上甲板はそのまま飛行甲板である. ◆ フェーズ4:生産 昭和15年暮れには、先の設備工事も出来つつあり、明けて昭和16年春より、第1ロット48隻の建造が始まった. ◆ フェーズ5:兵装 搭載機はすでに決定しているため割愛する. 高角砲は搭載しない.欧州大戦では、4000発に1発命中といわれ、昨今の高速機には、弾丸に目でも付かない限り役にたたないと考えられた. 一方、高射機銃は重要視され、12個所の砲座が用意された. 肝心の搭載機銃だが、一応96式3連装25ミリ機銃が正式採用されたのであるが、肝心の日本製鋼所の製造能力が追いつかないことが判明した.そこで、さまざまな機関砲が輸入・搭載されていった.まず、ビッカース40ミリ連装機関砲で、これは毘式機銃としてすでに正式採用されたものである.古い砲で、頑丈だが砲座が重く、旋回が遅い上に低初速とあって、評判はよくなかった.スエーデンのボッフェルス40ミリ4連装砲は、大変良好な成績を示し、関係者からも熱望されたが、なにぶん高価なため、産報債の売れ行きを睨みながら輸入された.戊式40ミリ機銃というものがこれである.ドイツ系の砲は検討対象とされなかった.ヒトラーの人種政策によれば、「日本人も劣等民族」と規定されるがゆえである. 案外好評だったのが、イタリアのブレダ37ミリ連装砲である.こちらも武式37ミリ機銃として大量に輸入された. ◆ フェーズ6:人事・組織 昭和16年初頭より、いっせいに48隻づつ建造が始まり、年96隻づつ就役していく.1隻あたりの乗組員は約500名.これだけで年5万人の将兵が新たに必要となる.かといって、従来の海軍兵学校では、そんな大量の士官養成能力がない.そこで、護衛空母は特務艦である・とし、特務士官制度を拡大して、大佐までの昇進を可能として対応することになった. ◆ フェーズ7:護衛艦艇 年96隻もの護衛空母が就役すると、既存の駆逐艦戦力ではとうてい間に合わない.そこで、大量の2等駆逐艦の建造が並行して行われた. 要目は、全長85m、全幅8m、排水量900トン、1万8000馬力で最高速度28ノットというもので、こちらは年間192隻建造されることになった. ◆ エピローグ(艦内生活) 昭和16年7月、新造なった第1グループの1艦「浦賀丸」(浦賀船渠建造)に、新たに編成された将兵が配属され、慣熟航海が始まった. 艦長:井上総一郎特務大尉「ようーーーし、前進、半速!」 兵学校出の青くさい士官と異なり、善行章5本を肩に縫い付け、海軍の甘いも酸いも知り尽くしたベテランの塩辛声が響きわたる. 通信特務少尉七寸五分(くずはた)勉「艦長!このふね、艦橋が低いですから、舵が大変ですのう」 艦長:井上総一郎特務大尉「ふっふっふ、その辺のひよっこならそうかも知れん.じゃが、海軍一筋16年の年期じゃよって、この位なんともないわい!それ、とぉぉりかじぃぃ…」 副長:佐鳥 源一特務中尉「艦長、居住区ですが、艦尾は排煙路が近くて暑いので、舳先で寝起きさせたいのですが」 艦長:井上総一郎特務大尉「ああ、かまわんよ.冬になったら、艦尾にいきゃぁいいさ」 主計官:伊東誠三特務少尉「ところで、ちょっと早いのですが、そろそろ晩飯です.鯛の軍艦焼きですぜ」 副長:佐鳥 源一特務中尉「鯛?どうしたんだ、そんな司令部用の飯?」 主計官:伊東誠三特務少尉「んあに、舷側の機銃坐から釣り糸たらせば、鯛やら鯵やら、どんどん釣れますぜ」 艦長:井上総一郎特務大尉「おう、この外房のあたりは鯛乃浦といってな、鯛の漁場なんさ.釣るのはいいが、戦隊司令部に見つかるなよ.じゃ、ごちになろうか」 |