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ブラックバーン・ファイヤーイーター緒元
- 計画 -
1940 年 11 月に発注された英空軍競作仕様に応えた戦闘機。この仕様は単発単座戦闘機に 1200Km という(少なくともイギリスでは)画期的な航続距離を求め、しかも爆撃機を援護する高空航続性能を求めながら同時に防空戦闘機として急上昇力を要求するなど、矛盾だらけで虫のいい要求仕様であった。 ブラックバーン社は 1939 年から雷撃戦闘機「ファイヤーブランド」を手がけていたので、当初はこれを改修して要求に充てるつもりで「ファイヤーイーター(火吹き芸人、または喧嘩っ早い人)」の名を与えた。しかし検討が進むにつれファイヤーブランドの改修では間に合わないことが判明たため、新規に設計し直すことが決定された。しかし予算処理の都合上計画番号は変更されず、従って名前も変更されなかった。それゆえ「ファイヤーイーター」は名前こそ似ているが、「ファイヤーブランド」「ファイヤークレスト」系とは似て非なる機体である。 - 設計 -
要求された性能を満たすためには、何を置いてもまず強力なエンジンが必要である。しかし期待された 24 気筒液冷H型ネイピア・セイバーは「ファイヤーブランド」開発チームの間から先行き不安な評判が聞こえてきたため、より確実なブリストル・セントーラス空冷 18 気筒を採用することにした。 空気抵抗を減じるため胴体はエンジン直径に合わせて円筒形に絞り、干渉抵抗削減のため中翼逆ガル構造が採用された。コクピットキャノピーも水滴型を採用せずハンプバック方式とし、P-47 「レザーバック」に似た長い背ビレ状の整流覆いが付加された。セントーラスの大馬力を有効に活かし上昇性能を確保するため、直径 4m の大型四翅プロペラを採用。このため逆ガル方式でありながら主脚は比較的長く、高い三点姿勢によって前方視界が悪化するのを尾輪柱を長くして対処した。 武装はイスパノ Mk.II 20mm 機銃を主翼に四門搭載、一挺あたり最大 150 発の弾薬ベルトを搭載できた。長大な主翼と操縦席前方の胴体に合計7個所の燃料タンク(坊漏被服つき、外翼タンクを除き消火装置装備)を装備し、増槽なしで 1,400Km の航続距離を実現していた。 高空性能を向上させるため主翼アスペクト比を平均 7.5 と細長くしたため、単座戦闘機ながら全幅は 17m 近くに達した。主翼面積は 35.6m^2 でファイヤーブランドに近いが、自重が 200Kg 近く軽いので翼面荷重は乾燥状態で 144Kg/m^2 である(ファイヤーブランドは 150Kg/m^2)。欧州戦闘機として異例に軽い翼面荷重は航続距離を稼ぐには有利だったが、その代償として急降下・ロール(横転)性能の低下は避けられなかった。なお、翼型には層流翼が採用されている。 - 飛行 -
一号機の初飛行は 1943 年 2 月 18 日である。予想された通り三点姿勢での前方視界は悪く、おまけにラダーの効きが悪いので地上での取り回しが難しいと評価された。飛行中の視界は悪くなかったが、方向安定性不良とラダーの効きが悪い癖はつきまとった。上昇力は優秀で搭載燃料の少ない迎撃状態では高度 20,000ft(6,100m) まで 6 分 30 秒だったが、最大速度は 632Km/h と要求された 685Km/h を 50Km/h 以上も下回った(ただし、同じエンジンを積んだファイヤーブランド TF.5 の 560Km/h より遥かに優秀である)。高々度ではセントーラスの馬力低下を大直径ペラと高アスペクト主翼が補い、特に良くはないものの劣悪というほどでもなかった。 ラダーの効きは悪く、エレベーターは敏感すぎ、エルロンは重く操縦性はあまり良くなかった。とりわけスピットファイヤーの速いロールと鋭い突っ込みに慣れた戦闘機搭乗員にとって、全体的に鈍い操舵応答は悪評だった。一方維持旋回率だけならスピットファイヤーに追随できる性能を持っていたが、操縦桿を引きすぎて失速させると回復の難しいフラットスピンに入る悪癖があった。 四門の 20mm 機銃は機体中心からかなり離れており(内銃間隔 6.2m)、方向安定性不良と相まって吹き流しに対する射撃テストの結果は芳しくなかった。もっとも低集弾性についてはスピットファイヤーもタイフーンも似たようなものであり、同調機銃を持たない英軍戦闘機に共通した傾向であった。 - 評価 -
速度を除けば要求仕様を一通り満たすものの、航続性能を除けば特に優れた性能もなく、総じて凡庸な機体であった。 作者からのコメント 「何でもできる飛行機を作ろうとすると、何をやっても大したことない飛行機になる」紫電改や二式大艇を生んだ川西飛行機の名設計者、菊原静夫の言葉です。今回の競作要求を見て真っ先に浮かんだのがこの言葉でした。しかもメーカーは仕様書を字面通りに捕えて迷機を作るあのブラックバーン…。傑作機になるはずがありませんが、それでもかなり頑張った性能だとは思います(ファイヤーブランドの 560Km/h はひどすぎ…零戦 52 型より遅いぞ)。 最初はスピードに重点を置いて雷電のような膨らんだ胴体に逆ガル翼を付けた機体を考えていたのですが、いろいろ描き直しているうちにご覧のように相成りました。F4U と Fw190D とシーフューリー をごちゃ混ぜにしたような(^_^;)。まぁ風防の形状やら何やらで英軍機らしくは見えるでしょう。しかし全幅 16.8m は凄いです…あの烈風ですら 14m なんですから。日本機では双発の「月光(16.98m)」なみです。ロール率が悪いどころじゃないぞこりゃ(笑)。 今回は Paint Shop Pro だけで描いてます。正面図がないのは時間が足りなかったから(ゴメンナサイ)。国籍マークのラウンデルは例によっていい加減ですが、垂直尾翼の三色フィン・フラッシュはスケールに合わせて 18(W)x24(H) インチの正規サイズに描いています。これは機種に関わらず高さ 24 インチ固定で幅を 18, 24, 36 インチの3サイズで使い分ける規定になっていました。迷彩パターンもそうですが、英軍機の塗装って変な所にコダワリがあるのですね。 文・画とも Copyright by Y.Sasaki 1999 12/25 |