マイルズ・メイン
全幅16.5m
全長10.2m
全高3.6m
最大速度670km/h
上昇力6100mまで7.5分
武装20mm機関砲6門
 名機の影に駄作機あり。今日はマイルズ・メインで皆様のご機嫌を伺います。
 この機体、1940年のバトルオブブリテンが終わった直後に出された要求仕様で作られたの。
 なにせ当時と来たら、次世代機であるはずのタイフーンは尾部の空中分解は起こすし、エンジンも故障続出するし、フラッターも起きるし、上昇力も高高度性能も貧弱ってもう手の付け様も無い状態だったわけ。
 「これだったらタイフーンの手直しするのと、新機種を募るのと、体して代わんないんじゃない?」ってなわけで大幅に欲張った仕様が出て来ちゃったのよ。
 「タイフーンより速く、タイフーンより高く、タイフーンより遠く」ってのがこの趣旨なんだけど、似たようなエンジン使って、そんな都合の言い事、簡単に出来ると思う?一応言っとくけど、ホーカー社は戦闘機の名門で、だだっ子のタイフーンも最後には改良型、テンペストへと発展したんだ。カタログスペック上はイギリスの量産したレシプロ単発機としては最高の物。
 てなわけであるから、名門メーカーは参加しなかった。手間ばっかりかかる上、タイフーンが問題点改修に成功したら、発注が取り消される事は目に見えていたから。なにより、他の主力機の生産で手一杯だったのだ。
 参加したのはマイナーどころばっかり。ちょっと名前を上げて見よう。  以上の面々が「当たれば大儲け」なんてお気楽な事を考えて参加したというわけだ。
 もう、どれもこれも曰く付きばっかり!ボールトンポール社は、かの「デファイアント」を作った会社だし、エアスピードとマイルズ、パーシバルは練習機専門、と言っても過言ではないし、フェーンはこれが最初の機体だと言うし、サロは安定不良の駄作飛行艇、「ラーウィック」を作った会社なのだ。
 そんな中で、マイルズは期待を込めて、「メイン」という名前をこの新機に付けて開発を開始した。これまで、「メンター」「マスター」「マジスター」と、ずっと頭文字Mの名前を付けて来たので、それにあやかった、大層景気の良い名前を付けて来た。なにせ「主力」だもん。
 でも、「良好な高空性能を期待する」と仕様にあったとはいえ、真っ正面から「高々度戦闘機が期待されている」と当局の意図を読み違えたのは致命的だった。
 それがどんな戦闘機になったのかと言うと、これだ。

 高高度戦闘機にはそれなりのエンジンが必要だけど、彼らが選んだのは、やはりマーリンだった。このマーリン61、ウェルキンやタイプ432じゃ不調続出だったんだけど、「メイン」はスピット用の出来のいいものを入手できたんで、馬力はちゃんと額面出力を発揮した。
 でもさぁ、このスパンを見てよ。
 確かに、高高度だと空気が薄くなって、操舵反応が鈍くなるし、派手に操舵するとすぐ失速するから、翼の面積を増やす必要はあるんだろうな。でも、このスパンは無いんじゃない?
 おかげで、ロール性能は劣悪。確かに、高高度での三舵のバランス自体は素晴らしいものだったが、その反応速度は言うに耐えない物だったのだ。つまり、ロールだけでなく、ピッチもヨーも鈍いの。
 さらに、大面積主翼の生み出す抵抗は、低空での速度を著しく低下させてしまった。もっとも、その中にいっぱい詰め込んだ燃料タンクのおかげで、ヨーロッパの戦闘機としては桁外れの航続性能を持てたんだけど、米軍のマスタングが到着した今となってはそれも不要。だいたい、英空軍自体が護衛戦闘機の要らない夜間爆撃へと戦術を定めていたのだ。
 アンダーパワー気味のうえ、運動性が鈍くて、おまけに通常の高度じゃ速度も遅い、とりえは翼面荷重が低くて着陸が容易な事ぐらいの機体じゃ、低空で食われちゃうよね。おまけに、そういった機体の使用用途が無いし、タイフーンの欠陥を改修したテンペストが期待できる、と来た日にゃ、「メイン」の運命も決まった。
 気の速いマイルズ社では、量産ライン上で60機程の「メイン」が既に完成していたんだけど、それらは格安で空軍に引き渡された。
 そこで写真機を取り付けてドイツ東部の高高度戦略偵察へと使われたのは良いんだけど、一番最初にFw190Dに撃墜された英軍機、という不名誉な記録を残して幕を閉じたのでありました。

あとがき

 世界の駄っ作機を片手に、岡部ださくさん風の文体を目指して見ましたが、うまく伝わったでしょうか(^^;;
 やっぱり、大戦機は英国よね〜。