[イタリア海軍 - 巡洋戦艦試案]
_Italians Project Battlecluisers
艦形図
第1次世界大戦に敗れた帝政ドイツ。 そのドイツが敗戦後、初めて建造した大型軍艦はその特異な性能から各国の注目を集めた。 基準排水量1万トン、28cm3連装砲2基、そして長大な航続力。 戦艦では追いつけず、巡洋艦では撃ち負ける。 これまでの軍艦のどの範疇にも属さないその異質な性能は、通商船破壊にまさに最適のフネと言えた。 さらに、英独海軍協定の締結と共にドイツは再軍備を宣言。 さらなる大型艦艇の整備にとりかかった。 この事態を憂慮したのがフランスである。 同国は早急にポケット戦艦後継艦の対抗艦艇の整備計画に乗り出すことになる。 結果、基準排水量2万7000トン、33cm4連装の主砲は全て艦首に集中され、 各砲塔を離して設置し戦闘被害の極限を図ったこともあり、ポケット戦艦に負けず劣らず奇異なフネとなった。 この戦艦こそ、後に悲運の最期を遂げる「ダンケルク」である。

このフランス戦艦の登場に驚いたのが、地中海の盟主を自称するイタリアだった。 既存の戦艦は大改造を施したとは言え、老朽艦であることに変わりは無い。 また、30.5cm砲を削正して32cm砲としたが、これも当時既に威力の不足を否めなかった。 そこで1936年「ダンケルク」対抗艦が検討され、試案が募集された。 本艦はその1案である。

まず、以下に「ダンケルク」と本艦、さらに比較的大きさの似通った2種類の艦の諸元を記す。

艦名排水量全長全幅喫水機関出力速力航続力
ダンケルク26500t214.5m31.08m8.7m112000hp29.5kt16400/17kt
伊巡戦試案25800t215.0m31.00m8.5m183000hp34.7kt5000/18kt
シャルンホルスト34841t229.8m36m8.7m138000hp29kt8525/19kt
アラスカ29779t246.43m27.76m9.7m150000hp33kt10000/15kt
兵装
主砲には「ヴィットリオ・ヴェネト」で採用された38.1cm3連装砲を採り、 これを2基艦前部に集中搭載し、仮想敵艦たる「ダンケルク」と同じような方式を採った。 もちろん、そのままでは装甲が過大なので若干の修正は加えられる予定となっていた。 これは同時に、砲の旋回性能向上も見込んでの事である。 その結果、防御力はともかく攻撃力は大型巡洋艦と呼ぶには大きすぎ、結局「巡洋戦艦試案」となってしまっている。 艦尾には、「アブルッチ」級軽巡の主砲であった15.2cm砲を2基背負い式に配置し、 高角砲には他の戦艦と同様の9cm単装高角砲を片舷6基、両舷で12基搭載している。 全体的に見れば主砲の破壊力こそ「ダンケルク」を凌駕するも、副砲および高角砲は排水量の割に少ないと言わざるをえない。 なお、機銃は37mm連装が8基、20mm連装が14基となっている。

船体
「ダンケルク」にも似た特異な形状に対し、船体はイタリアにしては至極平凡な作りを提示していた。 広い艦幅は、インターナル・バルジ及びインターナル・アーマーの採用に寄与し、装甲は最大厚210mmで15度傾斜して取り付けられ、 テーパーしつつ水線下まで続いている。 その水線下は装甲板の前方にもう1枚40mm鋼板を配置し、その間に重油層をかませる方式をとっている。 このやり方は「ビスマルク」のそれとほぼ同様である。 これは主缶を横に3基並べて搭載した結果、前部缶室が幅一杯となりプリエーゼ式の円筒を内臓するのに支障が発生した事による。
なお、舷側装甲が210mmでは8インチ砲弾に耐えるので精一杯である。 それでも、主砲の大きさはこれを補って余りあると判断されたようだ。 すなわち主敵たる「ダンケルク」には長い槍と軽快な動きでアドバンテージを見出そうとしたのだ。 ちなみに、艦首には「ヴィットリオ・ヴェネト」と同様にバルバス・バウが採用されている。 また「ヴィットリオ・ヴェネト」に比べると本艦は乾舷が若干低い事から、イタリア艦艇としては比較的大きなシアとフレアが付けられている。

機関
機関配置はイタリア海軍の標準とも言えるシフト配置。前部缶室には6基、後部缶室には4基の主缶を搭載し、 約19万馬力の出力は25000トン強の本艦を35ノットで走らせる予定だった。 発案者が直前に示した案では15万馬力となっていたが、速力差3ノットでは不安な事と、 根っからのスピード狂であるイタリア人の性格から出力向上となったようである。 そのため、後続距離は減少し、16ノットで5000浬と短距離快足型の典型を成している。

その他
艦橋構造物は、どちらかというと重巡洋艦に準じた3脚檣となっている。 「ヴィットリオ・ヴェネト」では塔状艦橋に、軽巡では円錐系をしたイタリア海軍独特の物になっているにも関わらず3脚檣を採用したのは不明である。 だがしかし、上構はある意味で最も設計者の好みの出るところであり、単なる発案者の趣味と言われている。
その他、日本では空母「蒼龍」で試みられた傾斜2枚舵(釣合舵)を採用したのも本艦の特徴である。 そのため、水線下は非常にスッキリとした形を形成している。 また、主砲・副砲の爆風から隔絶された煙突間に航空艤装は搭載されている。 艦載機は2甲板レベルの格納庫に格納される模様だが、「兵は神速を尊ぶ」中にあってはその運用速度は果たして疑問である。 だが、これによって主砲・副砲・高角砲の各砲は広い射界を得ている。 搭載機数は3機を予定していた。


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