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イタリア巡洋艦 トリアテッレ号について 1930年代後半、近づく戦雲におびえる各国海軍は、 いずれも軍備拡張に余念がなかった. 軍備は相対的なものだから、どこか一国が拡張を開始 すれば、それはまたたく間に周囲に伝染する. フランス海軍による、ド級戦艦の改装、ならびに ダンケルク、ストラスブール巡洋戦艦の建造をみて、 イタリア海軍もただちにカブール級、アンドレアドリア 級、あわせて4隻の旧式戦艦を徹底改装すると同時に、 4万トン戦艦リットリオ、ビットリオベネトの建造に 着手した.こちらはさらに2隻追加を予定している. しかし、イタリア海軍のファンダメンタルを冷静に 考えてみれば、国防予算に限界があるのみならず、 4万トン級の艦船を入渠できるドックは3箇所しか なかった(日本の2箇所よりはましだが). だから、大型戦艦を都合6〜8隻整備しても、修繕 をどうするのか、というところまで配慮されて いなかったのである. しかも、現実にフランスと戦争状態におちいれば、 地中海にある英国艦隊の存在をどう扱うのか、という 問題にいきあたる.こちらは常時戦艦2〜4隻が編成 されているのだ. イタリア側に有利な点はただ一点、地中海を東西に 分断できる位置に国土が存在し、空軍の支援を受ける ことが容易なことにある.現実にイタリア空軍の3発 重爆撃機隊は、充分な雷撃訓練を受けている. ならば、海軍の役割は、高速を利して敵を各個撃破する ヒットエンドラン戦法をとることになる. イタリア海軍の艦船は、必ずしも統一された構想で建造 されてはいなかったが、幸い、既存戦艦あるいは リットリオ級、重巡ザラなどを除けば、ほとんどの艦艇が 36ノット以上で行動できる. そこで、リットリオ級戦艦の3、4番艦の建造をとりやめ、 その予算と資材で建造されるのが、ここで紹介する トリアテッレ級大型巡洋艦4隻である. その戦術構想は、敵大型艦船を含む艦隊に対し、空軍と 水雷戦隊が襲撃し、その後傷ついた敵に本級がおそい かかってとどめを差す、というものである. 設計にあたっては、修理にあたって中型ドックを 使用するために、全幅26m以内ということが厳命された. そして、その艦体に22万馬力の機関を搭載し、38センチ 50口径3連装砲塔を2基装備したから、多少の高角砲 や魚雷、機関砲などを搭載できたものの、水偵などは あきらめざるを得なかった. 1930年以降の大型艦で、3本煙突を装備するものは 英国条約型重巡くらいしかなかったから、本級の太い 3本煙突はさまざまな憶測を生んだ. 1940年初頭、イタリア海軍は臨戦体制として、 次のような艦隊配置を行った. ( )内は間もなく就役するものである. 1.タラント主力部隊 戦艦4隻+2(リットリオ、ベネト) 駆逐艦トルビューネ級以前のやや旧式艦24隻 2.トリエステ警戒部隊 重巡ザラ級4隻、 駆逐艦トルビューネ級以前のやや旧式艦11隻 水雷艇、潜水艦 3.ラ・スペチア打撃部隊(第1打撃部隊) 重巡トレント、トリエステ、ボルツアーノ 軽巡ジュッサーノ級4隻、駆逐艦ナビガトリ級12隻 4.シラクサ打撃部隊(第2打撃部隊) 大型巡洋艦トリアテッレ級4隻、 軽巡カドルナ級モンテコックリ級併せて4隻、 新鋭駆逐艦フレッチア級フォルゴーレ級 マエストラーレ級オリアニ級併せて16隻 5.ナポリ警戒部隊 軽巡デユカダコスタ級アブルッチ級4隻、 最新鋭駆逐艦ソルダティ級12隻 6.カリアリ、トブルク、トリポリ部隊 水雷艇、潜水艦 シラクサに配備された本級は、打撃部隊の中心として、 地中海の東西双方ににらみをきかせる任務につくことに なったのである. |