
諸元
全長 : 8.83m
全幅 : 10.21m
自重 : 2,300kg
全備重量 : 3,200kg
発動機 : 三菱「ハ42−11」空冷星型複列18気筒
離昇出力1,900馬力×1
最高速度 : 624km/h
上昇力 : 6,000m/5分24秒
航続距離 : 1,045km(正規)、2,410km(増槽装備)
武装 : 20mm機銃×4(翼内)
250kg爆弾×2
乗員 : 1名
昭和15年春、海軍仕様開示による局戦に対し三菱設計陣が提示したのは、あ
る意味において、局戦としては非常に常識的な発想のもとに設計されたJ2M
「試製紅電」である。
まずは「試製紅電」の特徴を列記する。
・小型軽量にまとめた機体に大馬力発動機を搭載することで
高い上昇力を達成する。
・太い機首の直後から主胴体を絞り込み、空力抵抗を軽減し、
高速力を発揮。
・風防の背を低くし、かつファストバックとすることで
空力抵抗を軽減、高速力発揮の補助とする。
・操縦席の位置を前進し、風防を低くしたことによる視界低下を
多少なりとも改善する。
・推力式排気管を採用、速力向上の補助とする。
・主翼構造を単主桁とし、頑丈で軽量な主翼を実現。
・翼面荷重は160kg/u程度で旋回性能は低いが、ファウラーフラップを
空戦フラップとして使用可能とし、これを補う。
「試製紅電」では、小型軽量な機体に大馬力の発動機を搭載することで高い
上昇力を達成する設計で、このために選択された発動機は三菱社内で開発中の
大直径の「14試リ号改」すなわち、後の「ハ42」(陸軍名称ハ104)であ
った。
このため、太い機首が空力抵抗を大きくし最高速力に悪影響を与える心配が
あった。
当時、海軍空技廠の空力設計班では空力抵抗軽減策として2つの案が提出さ
れていた。「紡錘形胴体」と「主胴体絞り込み」の2つである。
設計当初は「紡錘形胴体」に傾きかけた「紅電」の設計であったが、「紡錘
形胴体」では機体外形を滑らかに成形すると機体が意外に大型化することが判
明したため、「主胴体絞り込み」へと転換した。
また、空力抵抗軽減策のひとつとして機体外形の突出を小さくするため、背
の低い風防を採用した。これにより、特に前方視界が悪化することが懸念され
たため、操縦席の位置を前方によせることになった。
幸いにも提示された仕様における航続距離の優先度が低かったため、胴体内
燃料槽を小さくすることによる損失が少なく、操縦席を前方に寄せることが可
能となったのである。
ちなみに燃料槽は操縦席下方、両内翼部の3ヶ所である。
また、軽量化のために小型に削り込んだ機体の安定性不良が懸念されたが、
これは大面積の垂直/水平尾翼で無理矢理押え込むことで対策としている。
「試製紅電」の初飛行は昭和17年12月。以後の試験で要求仕様を充分満たす
性能を発揮できることは確認できたものの、当初の懸念通り前下方視界の悪さ
が指摘された。
このため「着陸には相応の熟練を要す」と評価されることとなったが、少な
くとも審査失格になるほど視界が悪かった訳では無かったようである。
また、翼面荷重が高めであることから旋回性に難が有るが、アスペクト比が
小さいためロール率は高い数値を示した。
絞り込まれた主胴体と大面積の垂直/水平尾翼のため意外なくらい安定性は
良く、これによって「試製紅電」は高い射撃精度を得ることが出来た。
ただし、大面積の尾翼で強引に安定性を確保していることから操舵系は若干
重い作りとなっており、操縦には少々腕力を要する機体となっている。
また、コンパクトで頑丈な機体/主翼構造のため降下制限速度も850km/hを
越え、操舵系も高速機動向きに設定されたため高速戦闘に向く機体となった。
着陸速度もまた高めであったものの、高翼面荷重による影響は陸軍の二式単
戦「鍾馗」よりもはるかに良好な数値であることが判明、海軍も一応の納得を
示した。
「試製紅電」は搭載した発動機「ハ42」の稼動性が良好なため、安定した
性能を発揮できる機体となっているが、一方でその「ハ42」の大直径による
太い機首のため前下方視界が悪く、着陸の容易な軽戦に慣れた古株の操縦員の
一部から「試製紅電」が嫌われる一因となっている。
ただ、若手の操縦員は軽戦へのこだわりが少ないためか「試製紅電」に対す
る拒絶反応はほとんど無いようである。
審査が順調に終了した場合、昭和19年中盤頃に戦力化が可能であると考えら
れている。
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