瞬電
全幅11.0m
全長12.1m
全高3.8m
最大速度640km/h
上昇力6100mまで6分
武装20mm機関砲4門
航続距離最大2550km
 日本が大陸に深く引きずり込まれつつあった昭和15年4月、一つの要求仕様が海軍機の製造メーカーに発令された。既に、この仕様は14年度中に内示が出され、九州飛行機でもいくつかのプランを模索中であった。
「現在手に入るエンジンで、この仕様に追いつくエンジンはありません。全部出力が不足気味です。確実に高度6000で1500馬力を出してくれるエンジンがこの仕様には必要でしょう。」
「とりあえず火星ですすめ、21型で離昇1800馬力を出すとか言っていたから、それへの換装を前提にしてはどうかね?」
「ろくな過給器がありません・・・。」
「と、なると?」
「中島のあれが必要です。」
 重い沈黙が流れる。社長が私の目を覗き込む。鋭い視線だ。私はそれを真っ正面から受け止め、視線を返した。
 ため息をつくと、社長はぽつりとつぶやいた。
「まだ審査を通ってない発動機をか・・・きつい賭だな・・・・。」
「しかし、それしかありません。練習機にとどまり続けていることも博打のような物。」
「わかっている。一線機を作らないことには。練習機なんか他の中堅会社にいつ乗っ取られてもおかしくないんだ。君の腕にすがるしかない。好きにやりたまえ。しかし、失敗はできないぞ。」
「社長・・・ありがとうございます。全霊を傾けて必ずや成功させます!」
 14試局戦・・・J2W1の設計はこうして始まる。

「この要求仕様の辛いところは、速力、上昇力、火力の調和を取って、なおかつそれぞれの性能では前代未聞の要求をされているところだ。航続力要求、格闘戦要求は12試艦戦ほどでも無いかわり、速力要求が非常に厳しい。」
「それでは、翼面馬力と馬力荷重、空力的洗練を追求する、というのが基本路線になりますね。」
「うむ。しかし、小さすぎる翼にもできない。着陸速度が増加してしまう。」
「フラップで補うにも限界がありますね。」
「と、言うことは、軽い機体に強力なエンジンを積み、小さな翼でいく、というのが基本方針となるわけだな?」
「しかし、あまり小さい機体だと、のちの装備増加要求に対応できません。」
「よし、胴体の余裕は長さ方向で稼ごう。正面面積は最小限に抑える。」
奇しくもそれはF4Uコルセアとほぼ同じ設計方針であった。

「ずいぶんと、上面図から見る限りでは、胴長に見えますね。」
「実際胴長なんだ。」
「そして、ずいぶん脚が長い・・・」
「誉の大馬力には、やはり大直径のペラをつけるのが本道だろう。それの代償だ。」
「それにしても、格好悪いです。直径4mはやりすぎでは?」
「致し方ない。要求は上昇力と最高速度、そして火力だったのだから。」
 翼面積約19.7m^2。驚異的に小さい翼面積。
 これに誉を搭載し、そのパワーに耐えるだけの頑丈な胴体を構築するのだから、翼面荷重は海軍戦闘機としてはかつてないほど高い値になることは当然だった。
 かくして、この機体は「瞬電」の仮愛称をつけられて追浜に投入されることになる。
 そこで示したのは理詰めで行った設計の正しさだった。しかしその反面、

 といった欠点を指摘されている。とくに航続距離はこの仕様の額面をそのまま受けとったライバル機もまた同様に指摘されているが、これに対し、瞬電はすぐさま、胴体内タンクの大型化によって切り抜けた。
 この余裕こそが最大の売りなのである。




あとがき  土壇場で上下面図が飛んで焦りました。(^^;;;とりあえず、ほっと一息。
 だけど、時間がないから文も絵もあらが目立つこと目立つこと。