1万トン軽巡洋艦計画

 1920年、上海に日英合弁のパシフィック・マリンタイム・デザイン社(PMD)が設立された。
 この会社は英連邦が対米宥和に転じ日本の圧力をモロに受ける事を恐れたオーストラリア・ニュージーランドが対日宥和の最後の望みをかけて日本に設立を呼びかけたもので、英連邦側は適当な技術を供与する見かえりに日本の動向を探り、日本側は英連邦の技術を調査する一方で英連邦の市場に進出を狙うという同床異夢という言葉がぴったりなものであった。
 鳴り物入りで誕生したものの、世間は軍縮条約下。真っ当な設計の仕事はなく英連邦などの下請け仕事に甘んじていたが、そこに降って湧いたような競争試作。世界に出るチャンスとばかり話にとびついた。


  1万トン軽巡洋艦
1万トン軽巡

 PMD社がイブクーロ王国向けに設計した大型軽巡洋艦。
 イブクーロ王国が太平洋の覇者となる事を目論んでいない以上、想定敵は列強が南太平洋に派遣するか、あるいは南米諸国に売却した旧式の装甲巡洋艦や軽巡洋艦であると考えられ、列強が建造中の強力な新型巡洋艦(条約型巡洋艦)やチリ海軍の<アルミランテ・ラトレー>のような自艦と同等または自艦より強力な艦との交戦は重視しておらず、防禦より攻撃を重視する方針をとっている。
 船体や配置は傾斜甲板や誘導煙突といった新機軸や特殊鋼などの新技術がふんだんに投入されているが、消耗品や備品面では生産能力や維持能力を考慮して冒険を避け、兵装類は原則として英軍仕様の既存品を使用し、カタパルトのような新技術もあえて採用していない。
 しかし、設計の方針としてマージンが大きくとられており、将来の新技術や新兵器にも柔軟に対応する事ができ、イブクーロ王国の発展とともに改装を重ねて長く使用することが可能であるとされている。


◆船体等
 船体は凌波性能と重心低下に大なる威力を発揮するとされる日本軍方式の傾斜甲板方式を採用する。
 艦橋は旗艦任務や荒天の行動に適した日本軍の新型偵察巡洋艦と同系列の比較的大型の艦橋を採用する。
 煙突は排煙の逆流を防ぐため、日本海軍で実用化されつつある1番煙突を後部に湾曲させ、2番煙突と統合した誘導煙突を採用する。(3番煙突は通常の形式)

◆防禦
 装甲は運用思想が「軽巡洋艦」である為に20センチ完全防御は行わないが、想定敵である列強の軽巡洋艦や旧式巡洋艦を圧倒する為にある程度の直接防御力は持たせるものとし、主要部分は11度の傾斜を持たせた3インチNVNC鋼、甲板装甲は1.4インチNVNC鋼を使用する。

◆機関
 機関は英巡洋艦<エメラルド>と同様にソーニクロフト型大型駆逐艦(シェイクスピア型)のブラウン・カーチス式オールギヤードタービンを2組搭載、缶は新型統一缶(海軍省缶)は運用上の不安と機密問題の為に採用を見送り従来型のヤーロー式水管缶とするが、過熱器を装備し、新型缶と同様の250PSI、200Fとする。
 燃料は重油専燃、缶数は10基で定格出力は100000馬力、速力は32ノットとする。

◆砲兵装
 砲兵装は砲弾や部品の調達の面から、原則として英軍規格とし、主砲は7.5インチMkVIとする。正味8インチ案も考慮されたが、現状では性能と信頼性のバランスのとれた適当な砲が無いためにMkVIが適当とした。ただし、将来において安定した8インチ砲が供給されるようになった場合の換装を考慮し、主砲周辺の機構は特に大きなマージンをもたせて設計する。
 主砲配置は日本軍のピラミッド配置の発展型とし、連装3基、単装2基の8門装備とする。
 副砲は高角砲兼用で3インチ20ハンドレットウェイト砲MkI。他に近接防禦・対空用に水冷式の2ポンド砲(ポンポン砲)を装備する。これらはいずれも単装砲とする。

◆水雷兵装
 自艦より強力な艦との交戦を主目的とはしていないが、全く打つ手ナシでは困るので、それなりの雷装を施す。
 日本軍の中甲板に発射管を配置する方式は重量や容積の点において有利で重雷装が期待できるが、被弾時の危険が極めて大である為、英軍式の上甲板両舷配置とし、53.3cm三連装魚雷発射管を4基搭載する。
 発射管は日本軍の六年式魚雷(長射程)と英軍のMkIV(高速・大威力)の両方の発射可能なコンパチブル発射管を新開発する。(英軍発射管を改造する予定)

◆航空兵装
 進歩の著しい航空機1機を搭載(航空架台上)し、偵察や観測、連絡に使用する。ただし本艦の運用地を考慮すると陸上機の運用は困難が予想される為、滑空台は使用せずに水上機をデリックで海面に昇降する形で使用する。
 若し航空機の発達が予想を下回り、本艦が就役後も実用に耐えないと判断した場合は航空艤装を撤去して後檣を前進させ、後部単装砲を連装とする事をあらかじめ考慮して設計する。
 想定搭載機はハンザ式水偵(ハンザ=ブランデンブルクW−29)とするが、航空機の大型化を考慮し、航空架台やデリックのサイズや性能は若干の余裕を持たせるものとする。


要  目  (新造時)
基準排水量9800トン
全長187m
16m
平均吃水5.8m
主機ブラウン・カーチス式オールギヤード・タービン 2基2軸
主缶ヤーロー式水管缶(重油専燃) 10基
出力100000馬力
速力32ノット
航続距離12ノットで10000浬
兵装19cm連装砲 3基
19cm単装砲 2基
7.6cm単装高角砲 4基
2ポンド単装ポンポン砲 6基
53.3cm三連装魚雷発射管 2基
搭載機水偵1機(架台上)

  5000トン練習巡洋艦(附属計画)
5000トン練習巡

 艦艇に大きな戦闘力を持たせたギリギリの新鋭艦とした場合、乗員や関係者の練度や技術力不足から重大な事故を招きかねず、かといって排水量の制約から安全面に余裕を持たせる余地はない。
 また、新技術がある地の古来の習慣と融合すると、思いも寄らない弊害が発生し重大な結果となる可能性があり、新技術導入の最も顕著な成功例で「奇跡」とまで言われた日本でさえ農業技術の改善により大量発生するようになった脚気のために陸海軍が「滅亡の危機」と言っても過言でない状態に何度も陥っており、実践的な調査・研究を行なう事なく海軍を整備する事は危険きわまりないと考えられる。
 そこでPMDの打った奇手が本計画である。1万トン軽巡と同規格の装備を世界大戦終結により余剰の感のある英軽巡洋艦に搭載する事で、1万トン軽巡の計画・建造中に乗員や関係者の訓練を行い、海軍の制度を整え、発生するであろう事故の対策を行なう事を目的としている。

 船体ベースは特に余剰すると見られる軽巡洋艦のうち比較的新しく、設計にも余裕のある英海軍のC型を想定している。機関は1万トン軽巡と同じソーニクロフト型大型駆逐艦用を搭載するが1組のみとし、缶は1万トン軽巡と同じものを4基搭載するほかに混燃の低出力缶を2基搭載し、巡航など一般的な用途にはこちらを使用する。(王国の石油事情が良ければ6基とも専燃とする事が可能)

 最も重要な工期については機関はソーニクロフト社で建造中の<ブローク>、兵装はポーツマス工廠の<エッフィンガム>、艤装類は三菱重工の<青葉>といった各種の事情で工事が遅延している艦から流用/借用を行なうか、あるいはこれらの工廠で同規格品を生産する事でさらなる短縮も期待できる。


要  目  (カロライン級を改装した場合)
基準排水量4800トン
全長135.9m
12.6m
平均吃水4.50m
主機ブラウン・カーチス式オールギヤードタービン 2基2軸
主缶ヤーロー式水管缶 6基(4缶は重油専燃、2缶は石炭混燃)
出力40000馬力
速力21ノット
航続距離10ノットで5600浬
兵装19cm連装砲 1基
19cm単装砲 1基
7.6cm単装高角砲 2基
2ポンド単装ポンポン砲 1基
53.3cm三連装魚雷発射管 2基
搭載機水偵1機(架台上)