日本帝国海軍重巡洋艦 <白馬>

白馬・1925

  _/_/_/ <白馬> CA HAKUBA Class,IJN 1926 _/_/_/

    基準排水量 9,320t
    満載排水量 11,023t
    全長 190.34m 全幅 18.2m
    機関出力 艦本式OGT8基4軸推進 130,000馬力
         ロ号艦本式重油専焼缶 12基
    最大速力 35.4kt
    航続距離 14kt 7,800浬
    兵装 3年式50口径20p連装砲4基8門
       10年式45口径12p単装高角砲4基
       7.7mm機銃4挺
       61cm固定三連装魚雷発射管4基12門
    カタパルト1基 14式水偵1機塔載
    乗員数 674名+30名
    同型艦 <白馬><乗鞍>
    イブクーロ王国向仮称艦名 <太陽王><海洋王>


 ■発注への経緯
 ┼――――――
  □1922年初頭もイブクーロ王国は海軍の主力艦として巡洋艦を列強各国に発注した。王国海軍が
  近い将来国産化をすることを前提とし、技術輸入という側面もある。前年に世界規模でワシント
  ン海軍軍備制限条約が締結されているため、同条約に参加していないイブクーロ王国も諸外国と
  の関係を考慮し、条約に準拠した軍艦とした。
   索敵、護衛、襲撃、陸上砲撃、駆逐艦群などのの旗艦任務の他にも、王国の象徴として、海外
  訪問の際、王国の面目足るべく美しい船体であることも併せて要求した。

  □イブクーロ王国(後略イブ国)は選定にあたって、国土条件にあう海軍国を探した。
   まず、イブ国は海洋性の島国であるため、第一次大戦で壊滅したドイツ海軍やイタリア、フラ
  ンスなどの沿岸海軍がこれから除かれた。
   第二に、現在イブ国は植民地を保有しておらず、ある一定の地域だけを護るのではなく、広大
  な太洋を主戦場に迎撃戦を想定することになる。これには英国やオランダも含まれる。
   この二つを大前提にして選定対象の一つとなったのが極東の新興国家、日本であった。
   日本は島国であり、台湾、朝鮮半島という「領土」はお粗末にも資源産出に乏しく無きに等し
  い。ドイツから獲得した南洋諸島も同様である。
   そして大洋を挟んで米国と対峙する日本は、太平洋を舞台とした「迎撃決戦」が海軍の原則で
  ある。まさにイブ国と類似する海軍国家であった。

  □上り調子のこの世界第三位の海軍国も、イブ国への売り込みに熱心だった。
   イノッチ王子が来日した際は国をあげてもてなし、大正天皇との会談も行われている。
   肝心の技術面でも最新鋭重巡洋艦<古鷹>の建造ドックを開放し、本来ならば外部には秘匿され
  るべきドック内の写真を提供するなど大盤振る舞いで、イノッチ王子もいたく感激した。

   何故、これほどまでに日本が熱心かというと、前年のワシントン条約によって「八八艦隊計画」
  の夢が潰えたことにその一端がある。大建艦計画である「八八艦隊計画」はその内容もさながら、
  それにかかる費用もまた壮大な額である。このまま行けば、数年後ノ海軍予算が国家予算の何割
  になるのか大蔵省の役人が真っ青になるほどである。
   同時に、とてつもない内需拡大に繋がる事も事実で、すでに造船所からその末端に至る町工場
  まで、それを見越した設備投資から鋼鉄の買い付けも行われていた。
   <長門>が竣工、<陸奥>も完成間近、そして次の艦も‥‥‥というところで計画は中止された。
  これによって一時的とはいえ、国内需要も落ち込んだのである(この後、大恐慌と関東大震災によ
  って本格的な不景気に見舞われるが)。それに加えて先物買いしてあった資材などは建設などに
  一部転用できたが、それでもかなりの資材が残っていた。
   国内で使わないなら外国に売ってしまえ。至極当然で短絡的な発想が沸いたのも致し方ない。
  そこへ渡りに艦(舟ではない)でイブクーロ王国の発注である。それもこの後、駆逐艦などの発注
  についても示唆したのだ。日本が無資源国家という地勢的観点点から見ても、貴重な外貨獲得の
  チャンスであるのは間違いなかった。

 ■新型重巡洋艦
 ┼――――――
  □軍縮条約時代に突入し、イブ国の発注は国の威信をかけた艦建競争の先駆けとなった。
   IJN(日本帝国海軍)が提案する巡洋艦は、最新鋭の<古鷹>級を発展させた重巡である。
   当初、<古鷹>級の売り込みが考えられたが、条約前に設計された同艦は実際のところ重装備の
  軽巡に過ぎず、これから現れるだろう列強各国の条約型重巡とでは見劣りするであろうことは必
  至であった。IJNもすでに本格的な条約型重巡の設計も行っていたが、さすがに自分の所も保
  有していない強力に艦を差し出すのは躊躇われた(これが後の<妙高>級である)。
   そのため、イブ国用に新たに設計を施そうと考えられたが、条約型の設計で手一杯な現状では
  ロクな艦が造れないだろうと思われた。とはいえ、みすみす欧米に取られるのも癪である。
   そのジレンマに解決案を出したのは、<古鷹>級や<妙高>級を設計した天才・平賀譲少将であっ
  た。平賀少将も<妙高>級を差し出すのは反対だったが、代案としてそれに準ずる艦を提案した。
   <妙高>級はまだ設計段階で、実際に起工されるのはもっと後になる。そこで、<妙高>級をより
  完璧なものとするための、「試作艦」として造る事にしたのである。
   これには艦政本部はおろか、同僚の造船技官も度肝を抜かれた。つまりスケール1/1サイズの
  模型を造ろうというのである。それも紙や木材ではなく鋼鉄で。
   <妙高>級は現在建造中の<古鷹>級の拡大版として設計されているが、まるっきり別物と言って
  良い。実際には<古鷹>は個々の技術を確かめるための原型艦ぐらいである。平賀少将は<妙高>級
  の性能に格段の自信を持っていたが、さらにその精度を増すためのステップとしてこの発注を逆
  に利用しようと考えた。条約によって制限された戦艦に代わるのは、無制限に建造できる重巡洋
  艦に他ならないからである。
   これには相手国に失礼ということで反対意見もあったが、世界でも賞賛を集めた<古鷹>級の後
  継艦であることがイノッチ王子へアピールとなるし、試作艦はその後の軍艦建造に影響を及ぼし
  た<夕張>の例もあるということで、技術試験艦も兼ねた重巡としてスタートした。

  □設計は未だ起工していない<妙高>級を基本に進められた(そのための試験艦なのだから当たり前
  だが)。まず基本的要目が軍令部から出された。
   ・基準排水量 10,000t以内 ・最大速度35kt以上 ・航続距離 13.5ktで1万浬
   ・武装 正20p連装砲3基6門 12cm単装高角砲4基 魚雷発射管8門
   ・水偵1機塔載
   イブ国向けということでさらに細かい指示があったが、大筋はこのようなものであった。
   この時点ではどちらかといえば<妙高>級というより、まだ<古鷹>級の拡大型という方が正しい。
   これに対して平賀少将は軍令部と艦政本部に真っ向から注文を付けた。

   ・航続距離は無理をせず7,500海里まで短縮。
   ・主砲塔は3基から4基に増やして8門にする。
   ・魚雷発射管は全廃し、水雷防御を強化すること。

   主砲塔の数を増やしたのは攻撃力不足という点より、連装5基の塔載が予定されている<妙高>
  級の船体バランスに近づけることである。魚雷発射管を全廃するというのは、まさに思い切った
  提案であったが、発注先のイブ国海軍が駆逐艦隊の旗艦として使用とすることから、魚雷がなけ
  れば話しにならないため、渋々本級においては塔載することを決定した。平賀少将は<妙高>級で
  も魚雷を載せないと公言していたが、そこでも欧米視察中に設計を変更され叶うことはなかった。
											 .
  □イブ国の要求では「王国の象徴として、海外訪問の際、王国の面目足るべく美しい船体である
  こと」が求められている。IJNは軽巡<夕張>でそれまでにないスタイルを世界に見せ付け、芸
  術的な美を実現させることに成功させている。
   艦艇を設計する際、船体の中で最も重要とされるのが全長である。長ければ長いほど排水量に
  対しての機関馬力と重量の低減に繋がる。だが、船体が長くなった分だけ重量が増えるという矛
  盾が生じるため、全長の長さを設定するのは極めて重要といえる。
   <古鷹>ではできるだけ幅を狭め、船体を長くして高速化を図っている。本級もこれに追随し、
  船体をできるだけ長く取っている。外国の巡洋艦の横縦比がせいぜい9:1なのに対して、計画時
  の本級は10.5:1といういるじるしく細長い船体であることが窺い知れる。これが後の日本の重
  巡でも採用され、抜群の高速力を得る秘密である。
   船体が長い事はその艦の優美さをも左右する。これに上部構造物のバランスが加わって美醜に
  大きく関わってくる。本級では連装砲塔4基を船体中央部にできるだけ集めて美的な印象を強め
  ている。諸外国の巡洋艦が上部構造物が分散して配置され間延びした感があるのに対して、して
  いるのに対し、艦橋や煙突などを中央部に集中した結果、緊張感を持たせたのである。

   本級でも<古鷹>級で採用された波形平甲板を採用している。凌波性の向上だけでなく、平甲板
  にすることによる船体の構造単純化と縦強度が高まり、なおかつ重量軽減にもなる。舷側甲板を
  そのまま船体構造の一部にすることによって合理的な船殻となり得た。
   甲板を波形にするのは、大規模な艦上構造物や砲塔など重量物を支えるためである。直線平行
  甲板ではトップヘヴイになってしまい、重武装と高性能は不可能である。

  □防御面において、いかに重巡とはいえ戦艦のような防御を施すのは不可能である。従って重要
  部分やヴアイタルパートのみに限って施すしかない。
   IJNは独自に開発したNVNC鋼(ニッケルクローム鋼均質甲板)を用いた。すでに装着され
  ている<古鷹>級同様、ヴァイタルパート部分に102mmの鋼板を装着した。その際、12度の傾斜をつ
  け遠距離砲戦で斜めから進入する砲弾の貫徹力を減殺するのが目的である。
   そしてこの鋼板の水線下にバルジを設け、水中防御対策を施した。バルジ内部は空とし、魚雷
  爆発によるガス圧が同一にかかるようにした。防御縦隔壁も二重に設け、破片防御と漏水防止と
  した。この隔壁は厚さ25mmのHT鋼を二枚重ねあわせたもので、戦艦<長門>などと同様の防御形
  式である。巡洋艦程度にこの防御方式が採用された例はないが、イブ国が水雷戦を主眼において
  いるため、対水雷戦を見据えた意欲的な対策である。
   対魚雷防御として、<古鷹>級から始められた缶室の縦壁方式を早々と止めてしまったことであ
  る。この方式はボイラーを両舷に分け、さらに縦壁でしきって幾つかの缶室にするというもので
  ある。この縦壁は船体を強化する共に、砲弾の直撃を受けた場合、被害を最小限に食い止めるた
  めの防御隔壁である。砲撃戦を主眼においた<妙高>級においても採用している。
   だがこれは魚雷戦になるとなんとも厄介なことになる。魚雷が片側一方に命中した場合、隔壁
  によって片弦のみが浸水し、艦がバランスを崩して転覆する恐れがあった。
   本級でも重油専燃缶12基を備えているが、対水雷戦を主眼においているため、縦壁の採用を止
  め、横壁で4基ずつ3室に分けるのみに終わった。これならば片弦から浸水した場合でも、4基
  のボイラーが犠牲になる代わりに水平を保てる。魚雷はバルジで止めなければならないものだと
  割り切った。

  □本級の艦橋構造物は<古鷹>級に比べて大型化した。進歩し続ける軍艦において、射撃指揮や対
  空指揮、魚雷戦など新装備を配備する必要性が高まっていた。それに「試験艦」という性格上、
  新装備の善し悪しを確かめる事も必要である。構造物の大型化は被発見率が高まるが、その一方
  で移住性や戦闘指揮などにおいて期待されている。
   艦橋はほぼ<妙高>級をそのまま持ってきたような形をしている。背部に立っている前檣はポー
  ルマストで、後檣は三脚檣でクレーンと兼用する。
   誘導煙路になった煙突の後ろにはカタパルトを備える。当初は滑空台の採用が考えられたが、
  使いづらいことこの上ない滑空だいよりも、現在開発中でこの艦が海の上に浮かんでいる頃には
  完成して「いるだろう」カタパルトを装備する。搭載機についてもハンザ式や代用している10式
  艦戦ではなく、その頃の最新鋭機も合わせてイブ国に供与することを確約した。

  □前述したが、主砲は連装4基とし、前部と後部にそれぞれ背負式に配置した。最もシンプルな
  デザインだが最も信頼性の高い配置方法でもある。
   本級が採用した3年式50口径20cm砲は、仰角40度、俯角5度、最大射程27,500m。正8インチ
  砲ではなく正20cm砲であるのは、もともと<古鷹>級を目的として造られたものだったので、この
  ようなことになっている。
   砲塔そのものの防御鋼板は25mm。破片防御程度の効果しかないのは明白だが、重量軽減のため
  に目を瞑った。4基もの砲塔を完全防御するなど、条約化においてはほぼ不可能である。もし命
  中した場合は逆に薄装甲が故に貫通して外部で爆発を狙った‥‥‥というよりは願った。何とも
  いい加減聞こえるが技術力の限界でもある。弾薬庫を誘爆させさえしなければ良いということで、
  防火装置を備えてはいるが、どこまで通用するかは未知数である。

  □魚雷の塔載について平賀少将は反対していたが、イブ国が駆逐艦隊の指揮を任せる事もあって
  そうもいかない。発射管の塔載は決定したが、上甲板から海へ投射するには魚雷の強度にやや不
  安があった。衝撃に耐え切れず海中に突入した途端に故障したり、或いは誤爆することが考えら
  れた。これを解決するため、機械室真上に固定式で発射管が装備された。<古鷹>級にも採用され
  た方式だが、艦内に魚雷を配するというのは極めて危険なことでもあった。それに乗組員の居住
  区が一部圧迫されるなど弊害も起きている。これは魚雷性能の向上を待つ一時的措置とされ、耐
  久性の高い魚雷が開発して発射管を上甲板に移すことで決着した。

  □高角砲として45口径12cm単装砲塔を4基を塔載した他、7.7mm4挺を対空戦用に装備した。

   全長190.34m、全幅18.2m。ヤード法で設計されていたのでさらに細かい端数が付く。
   この細長い船体で最大速力35ktを発揮し、航続距離は14ktで7,500を予定している。

   大幅に設計技術を流用しつつも、本級の基本排水量はほぼ計画通りの9,300t前後と見積もられ
  た。満載状態排水量では11,000t前後。<妙高>級が排水量制限ギリギリで設計されているのに対
  し、本級は700tも小さい船体でそれに準ずる巡洋艦となり得たのである。
   尚、本級は命名基準にのっとって<白馬>級と命名されている。

   日本帝国海軍は重巡洋艦<白馬>級を自信を持ってイブクーロ王国に提案するものである。
   尚、イブクーロ王国海軍向として仮称艦名<太陽王><海洋王>を付記する。

  ※実際に採用されるとは限らないと共に、競争試作内のイブクーロ王国海軍がこの後の歴史でどの
   ような歴史を辿るのか(ロンドン条約への加盟、第二次大戦への参戦があるのか等)、採用された
   後にどのように運用されるのかがあるのか分からないので、日本海軍で採用さた場合<白馬><乗鞍>
   という艦名のみ付記します。
第二次改装後
白馬・1940