「いやいやいや、どうもどうもどうも。あ、初めましてカーチス社の営業部に勤めております
キィッチと申します。…えっと、中佐さんでよろしんですね?。それでは今年の2月に貴国から
提示されました水上戦闘爆撃機につきまして当社の提案をお披露目させていただきます。」

 「え?イブクーロ語が流暢ですって?そりゃ、まあ私はこの国出身ですから。はい。3年前に
一旗揚げようと思い立ちまして、アメリカに渡ったんですよ。私の兄がイブクーロ陸軍で士官を
勤めてましてね『これからは飛行機の時代だ』って、ずいぶん聞かされたものですからアメリカ
に渡って運良く飛行機会社に就職できたときは嬉しかったですよ。」

 「いやぁ、故郷は冬でも暖かいですなぁ。アメリカなんか寒くて寒くて、もう…」

 「しかし、こんなに早く故郷に戻って飛行機の売り込みができるなんて思っても見なかったで
すよ。はっはっは…だけど、世界中の航空機メーカーに対して競争試作を提示するなんて思い切
ったことされましたねぇ。たしかに、各国とも航空機開発には力を入れてますから、提案が山ほ
ど出てきてるんじゃありませんか?…ほう、そりゃスゴイ。それでは選ぶのも大変でしょうね。」

 「さて、それでは当社の提案内容ですが…このようなプランを考えております。アメリカ陸軍
に納入している機体を水上機化したものですから、開発コストも抑えられますし実績もバッチリ
ですよ。単フロート化も考えたのですが、強度と重量を天秤に掛けた結果、双フロートで落ち着 きました。」


カーチス モデル34I−A
【諸元】全幅:11.43m、全長:7.25m、全高:3.97m、翼面積:23.41m2
    自重:1,013kg、全備重量:1,600kg、武装:固定同調7.62mm機銃×2・翼下に軽爆弾×4
    最高速度:280km/h、航続距離:530km、発動機:カーチスD−12Aピストンエンジン500馬力


 「ま、このようになっております。は?航続距離が短い?はい、たしかに提示された要求書ど
おりの数値ではありません。しかし、大丈夫です。図のように成形された増加燃料タンクを胴体
下に搭載することで700kmオーバーの航続距離は保証できますよ。」

 「は?液冷エンジンの保守性・信頼性にご不満がおありですか?たしかに液冷エンジンは保守
が難しいし信頼性が低いと言われてますが、当社のD−12Aは大丈夫ですよ。フランスやイタ
リアみたいにスペック優先で実際はダメなエンジンを作ってはいませんから。ははは…」

 「今年のシュナイダー・トロフィーレースやピュリッツアー・トロフィーレースを見て下さい
よ。D−12Aをつんだ我が社の機体がブッちぎりで優勝してますから。ええ。」

 「え?シュナイダー・レースでは米海軍所属の機体が2機とも途中で棄権したじゃないかです
って?…たはは、中佐痛いところをついてこられますな。アレは競技用にチューンされてますか
ら扱いが難しいんですよ。軍用の機体は大丈夫ですって。」

 「はぁ、それでも液冷エンジンは心配ですか…?どこの国も海軍さんは慎重ですなぁ。いえね、
アメリカ海軍さんもこのモデル34を艦上運用するには液冷エンジンがネックだって言ってるん
ですよ。」

 「ご安心下さい、中佐。まだ、発表段階ではありませんがアメリカ海軍向けに空冷エンジンを
搭載した機体も開発中なんですよ。その機体を水上機化したプランも持ってますから、ご覧頂き
ましょう。」

カーチス モデル34I−N
【諸元】機体寸法はモデル34I−Aと同じ。自重:965kg、全備重量:1,560kg
    武装はモデル34I−Aと同じ、最高速度:245km/h、航続距離:540km
    発動機:プラット&ホイットニーR−1340「ワスプ」星形ピストンエンジン410馬力


 「と、まぁ若干性能が下がってしまいますけど、エンジンの信頼性は抜群ですよ。むろんこの
機体をお使いになられる場合は、エンジンのライセンスにつきましては当社からP&Wに話を通
しておきますから、ご心配なく。」

 「故国の政府との交渉はイイものですなぁ。いえね、東洋なんかじゃまず金品を渡さないと話
が先に進まないんですよ。軍も政府も腐ってるんですな。どうせ、リベートの分は機体価格に跳
ね返るんですから、当社が損することは無いんですけどね。」

 「それでは、中佐。我が社の提案についてご検討をお願いいたします。あ、忘れておりました
が技術者の受け入れについても社長からOKサインは貰ってますから、ご心配なく。今後とも末
永くおつき合いいただきたいものですな。それでは…」