イブクーロ空軍 試作水上戦闘爆撃機
アトランティック航空機「ナ・イーサ」


Fly in the Dusk
 黄昏の海上を飛ぶ試作機。当時と
しては先進的な厚翼単葉機である。
フロートがアメリカ系の造形である
ことがよく分かるアングルである。


 1924年、オランダの航空機メーカー、フォッカー社はアメリカに現地法人「アトランティック航空機」を設立した。同社はアメリカ陸軍からDH.4型軽爆撃機100機をを金属フレーム胴体に改修する(他に同規格での新造35機)契約を得、また、陸海両軍から本社に発注された試作機の再組立・整備を行う等、順調なスタートを切ったかに見えた。

 しかし、「旧敵国のために戦闘機を作っていた会社から軍用機を調達するとは何事だ」という国内からの批判を受けている米軍当局が、今後とも同社にまとまった仕事を回してくれる可能性は低かったし、フォッカー得意の「鋼管フレーム胴体・木製応力外皮翼」という構造様式は米国メーカーも着々と習得しつつあり、同社の技術的優位が長く続くとも思えなかった。

 イブクーロ王国の新戦闘機計画が伝えられたのは、そんなときである。アトランティック航空機支配人ボブ=ヌーアダインは本社社長トニー=フォッカーにに相談することもなく応募を即決、これまた無許可で本社設計主任ラインホルト=プラッツに設計作業を依頼した。

 第一次大戦で数々の名戦闘機を送り出し、「ドイツは敗けたが俺の戦闘機は敗けていない」との想いを抱きつづけていたプラッツがこの依頼を断るはずはなかった。しかし、当時、フォッカー社では社運を賭けた新型輸送機F.7の計画が進行中であり、設計能力に余裕がなかったため、プラッツ側ではF.7の構造様式を流用した「機体部分」だけを設計するにとどめ、水上機化とエンジン、機銃等の儀装に係る設計作業は在米スタッフの手に委ねられることになった。

 当時のアトランティック航空機には設計能力を持ったスタッフが不足していたため、突然降ってわいたこの作業をこなすことは、自力では到底不可能であった。しかし、ヌーアダインはかって海軍当局がフォッカー社から得た技術資料をカーチス等の国内メーカーに流していたという弱みにつけこんで、当時開発中であったレーニンOA-1水陸両用観測機、ヴォートSU「コルセア」水上機、カーチスR3Cレーサー等の海軍機の技術資料を入手、見事に水上戦闘機を仕立て上げた。

 さて、本機の開発はオランダ本社首脳陣には秘密であったが、たまたまF.7a/3m輸送機の売りこみのために訪米していた本社スタッフが1925年10月の社内初飛行を目撃、本件は本社社長トニー=フォッカーの知るところとなった。普通ならここでプロジェクト中止を言い渡されるところ、F.7a/3m計画に対するヌーアダイン、プラッツ両名の貢献に免じて、開発費を本社に負担させないことと、審査に供される試作機に「FOKKER」と大書(胴体後部下面)することを条件に継続を許され、無事競争試作に参加できることとなった。

On Surface
 水上でエンジンテストを行う試作機。
胴体塗装の迷彩効果と、遭難時の救助を
容易にするための派手な翼の塗り分けが
アンバランスで、独特の雰囲気がある。

 本機は木製応力外皮構造の主翼(中央翼内に燃料タンクを内蔵)を持つ高翼単葉機で、胴体と尾翼は鋼管フレーム(一部木製)に羽布または合板を張ったフォッカー式構造、フロートはジュラルミン製である。フロート支柱は独ハインケル機に範をとって単純なN型構成としたが、前部フロート間支柱の弦長を大きくして、着水時の前のめりを防ぐベーンを兼ねさせているのが特徴である。なお、水上機化にあたって原設計どおりでは方向安定が不足することが判明したため、垂直安定板弦長の拡大が行われている。

 コクピットは主翼後縁付近に開口するため、前下方視界を主翼にふさがれる格好になったが、水上機であって着陸時の視界を陸上機ほどには要求されないことと、コクピット床面に透明部分を設けることで十分フォローできるものとされた。また、風防直前に燃料タンクのキャップが配されているので、ここに燃料ゲージを備えるオプションも用意することとされた。

 エンジンは、「予想どおり」カーチスV-1570「コンカラー」が入手できなかった(同社も競争試作に参加を予定したため、自社最新エンジンを他国メーカーに供給するはずはない)ので、リバティ12-A液冷倒立V12気筒を搭載、機銃の銃身はこのクランクケースの脇を通る構成とした。エンジンの馬力不足のため、試作機の速度性能はやや不足したが、イブクーロ王国軍当局に対しては、「制式採用時にはカーチスやロレーン、BMW等に換装する」との説明が行われている。

 爆弾類は両外翼に設けられた左右各2組の強化リブに必要に応じて爆弾架を取り付けることによって搭載されるが、最大搭載量の200kgを積む場合には、機銃少なくとも1丁を取り外し、燃料搭載量にも制限をうけることになる。


〜諸元〜

翼幅9.94m
全長9.09m
全高(水平姿勢・プロペラ除く)3.63m
翼面積14.96u
自重822kg
最大離水重量1276kg
発動機 「リバティ12-A」倒立V型12気筒
  離昇出力430hp
最高速度267km/h
航続時間(巡航最大)4時間20分
武装 ブローニング.303機関銃×2(機首)
爆弾類(50kgまで)×4(翼下)