ソビエト連邦 ベリエフ RMBe 競速飛行艇

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(添付スケールは 1m 単位)
緒元 Beriev RMBe
エンジン クリモフ VK-107M-R11(左回転)
クリモフ VK-107M-R12(右回転)
各々 2150hp(緊急出力)
プロペラ油圧式可変ピッチ推進式
直径 2.9m(三翅) 左右逆転
翼幅10.34m
全長8.90m
全高2.94m(プロペラ含まず)
4.02m(プロペラ含む)
乾燥重量2950Kg
全備重量3400Kg

彩華:地球のみなさーん、こんにちわー。私は今第13回シュナイダー杯のレース会場、イギリスのポーツマスにほど近い港町カールショットに来ていまーす。日本で言うと北海道くらいの緯度でしょうか、うー、10月だというのに真冬のような寒さです!

ささき:時は1947年、しかも南太平洋にはイブクーロ王国などという聞き慣れない島国があったりする世界だ。要するに、皆さんの居る世界とは少し次元の異なるパラレル・ワールドだな。我々ウチュー人の技術によって実現された次元転移マシーン「うつろー君」があってこそ、我々が今この場所にいる訳だ。

彩華:ちょっとマスター、いきなり出てこないでください!この時代の人がマスターを見たらびっくりしちゃうでしょ?!まぁ、なんせマスターは「ウチュー人」ですから、この時代でなくっても充分ブキミなんですけど。

ささき:相変わらずメイドの分際で生意気な奴だな…まぁ、ここで M.I.B に捕らわれても仕方ないから、私は隠れていることにしよう(こそこそ)。

彩華:さて、私は今ソビエト・チームのピットに来ています。こちらの世界でもイデオロギー対立というのがあるらしく、大戦終了後は冷戦の緊張が高まっています。ソビエト連邦もシュナイダー杯に招待されていたものの、西側の多くはボイコットすると予想していたので彼らの出場は意表を突いていました。今回はその辺の事情も含めてお話を伺ってみたいと思います。それではどうぞ、地球の…いえ日本の皆さんに自己紹介してください。

ストロバヤ:日本の同志達、ご機嫌よう。ソビエト連邦海軍大佐、ウラジミール・ストロバヤである。

スミノフ:ノボリヴィシスクのお母さん、見てるかい?ソビエト連邦海軍技術中佐、アレクサンドル・スミノフです!

彩華:しかし、お二人とも凄いお名前ですね…(^_^;)

ストロバヤ:そうか?我がソビエト連邦ではごくありふれた名前だが。

スミノフ:別に珍しい名前じゃないよ、僕の故郷にはアブソルトスキーとかフロストビッチとかもっと変な名前の奴も沢山居るし。

彩華:えー、まぁ、そういう事にしておきましょう(^-^;)。ストロバヤ大佐は出場機のメインパイロット、スミノフ中佐は機体の総責任者でいらっしゃいます。まずストロバヤ大佐にお話を伺いますが、ソビエト連邦が今回のレース出場を決めた理由は何だったんですか?

ストロバヤ:勿論、それが賞金や金ピカの優勝カップの為でない事は理解して頂けるだろう。そういう物は資本主義者達を喜ばせるかも知れないが、我々労働者には何の価値もないものだ。

彩華:おぉ、いきなりイデオロギー全開で来ましたね。それでは、真の理由とは?

ストロバヤ:この競技会を通じて、我々ソビエト連邦の優秀さを世界に示すことだ。純粋な理想に支えられた労働者の団結から作り出された美しい機体が、資本主義者の搾取によって生まれた醜い機体を軽々と引き離して圧勝する姿は、必ずや全世界の同志達を抑圧から目覚めさせ、革命に向けて勇気づけることであろう。

彩華:なるほど〜、わざとらしい位アジ演説っぽい発言ですねー。アカ嫌いのチャーチル英首相やトルーマン米大統領が聞いたら激怒しそうです。

ストロバヤ:というのは優良共産党員としての本音であるが、表向きは世界平和と国際親善の為という無難な理由になっている。本放送では先ほどの発言をカットして頂きたい。

彩華:了解ですー。さてスミノフ中佐、機体について説明して頂けませんか?まず RMBe という名前の由来は何なんでしょう?

スミノフ:Razvedchik(競技用) Morja(水上機) Beriev の頭文字。Beriev が世界的に有名な水上機設計者、ゲオルグ・ミハイロビッチ・ベリエフ同志の名前だってことはわかるよね?

彩華:うーん、確かにベリエフの飛行艇 Be-4 や Be-8 に似ていない事もないですが、それにしても過激な機体ですね。ズバリ設計のポイントは何なんでしょう?

スミノフ:「限られたエンジンパワーを最大限に引き出すこと」だね。我々ソビエト連邦にとって最大のネックになったのは、出場規定にある「第二次大戦終了時までに100基以上生産されたレシプロ発動機であること」という一条だったんだ。

ストロバヤ:これは資本主義者どもが我々を大会から追い出すべく、意図的な悪意を持って仕組んだ条項であるな。

スミノフ:我がソビエト連邦では偉大なる指導者スターリン同志の意向に従い、実績があり実用的なエンジンだけを大量生産したからね。量産されたエンジンでレースに使えそうなのは空冷の ASh-82(1850hp) か液冷の VK-107 (1650hp) 位しかなかったんだ。

彩華:なるほどー。双発のくせに単発機なみのサイズですし、乾燥重量と全備重量の差が 450Kg しかないことからも余程切り詰めた設計ということが分かりますね。しかし、なぜ大馬力の ASh-82 を使わなかったのですか?

スミノフ:理由はいろいろあるけど、一番は空気抵抗だね。確かに ASh-82 も優秀なエンジンで、これを積んだ La-9 は最高速度 690Km/h を記録しているけど、VK-107 を積んだ Yak-9U は更に高速な 698Km/h を記録している。600Km/h を超える高速機にとって、形状抵抗は死活問題なんだ。

彩華:しかしそれほど形状抵抗にこだわるなら、あえて飛行艇型を採用した理由は何ですか?しかも PBY カタリナみたいに平べったい艇体をしていますが。

スミノフ:鋭いとこを突いてくるなぁ(笑)。まぁ形態の研究と決定は TsAGI で行われた事なんだけど、VK-107 二基分の浮力を持たせ、なおかつ最も小さい機体形状を模索した結果とだけ言っておこう。

彩華:なるほどー。しっかしずいぶん小さな主翼ですねぇ。しかも後退角が付いてるし、おまけにこの高翼面過重の機体でフラップ無しという設計は思い切ってますね。

スミノフ:そこは超優秀な操縦士だけが扱うということで割り切ってる。ストロバヤ大佐が操縦桿を握ってる限り、腕の点については何も心配していないよ。

ストロバヤ:他人事だと思って無茶言うなよ、同志スミノフ(笑)。こいつを飛ばすのは、I-16 でメッサーシュミットを墜とすよりずっと難しいぞ。

彩華:そのへん、操縦性についてもう少し詳しく伺いたいんですが。

ストロバヤ:例えば、舵のハーモニーは無いに等しい。低速ではエレベーターが軽すぎ、高速ではやたらに重くなる。エルロンの効きは非常に悪いが、だからと言って高速で無理な舵を取ると逆効きを起こすといった具合だ。

彩華:しかも左右エンジンが外回りの逆回転なんですね。翼幅に対して推力軸が離れているし、片発停止が起きたらスピンに入りませんか?

ストロバヤ:心配無用だ。我がソビエト製のエンジンは絶対に故障しない。

彩華:ですが、もし万が一緊急事態が発生したとして、プロペラ回転面がコクピットとほぼ並行ですよ?これってエンジンが回ってる限り脱出不可能だと思うんですが…。

ストロバヤ:何の問題もない。勇敢なるソビエト操縦士に脱出などあり得ない選択肢だ。

彩華:う〜ん、更に言わせて頂くと、プロペラの装備位置が低くて、離着水時に艇体の上げる飛沫の直撃を受けそうな気がするんですが。

ストロバヤ:ソビエト製のプロペラは強靭だ。飛沫ごときで曲がったり壊れたりしない。

彩華:は…はぁ(^_^;)

ストロバヤ:それに、プロペラなど離水時の一回だけ持てばいいのだ。周回飛行を終わって着水する時にペラが曲がっても、それは競技の成績に何の影響もないからな。

彩華:なるほど〜、スラブ人の図太さと無神経さ…もとい、誇りと勇敢さを印象づける発言ですね。それではストロバヤ大佐に伺いますが、ズバリ優勝のご自信は?!

ストロバヤ:他チームの顔ぶれを見よ。「自由と博愛と平等」の国はファシストの遺産に動力を頼り、「新しき自由の国」は肌の色で出場チームを分け、「紳士の国」は搾取の元凶たるアメリカの缶詰会社に魂を売っているではないか。純粋な理想と革命精神を持つ我々が、堕落した資本主義者やファシストの残党に負けるはずがない。」

彩華:うーん、イデオロギーで勝ち負けが決まるわけじゃないと思うんですけど…。

ストロバヤ:思想面を別にして優勝の自信はある。スミノフは馬力不足と言ったが、この機体に搭載されているエンジンは普通の VK-107 とは訳が違う。ソビエト連邦で最高のエンジニアを結集し、技術と知恵の粋を集めてチューンアップした特製品だ。

スミノフ:燃料さえ自由にしてくれたら片発 2500hp 以上は出す自信があるんだけどなぁ…まぁ、それでもオーバーブースト時で片発 2150hp は堅いね。もちろん水エタノール噴射を併用するよ。

彩華:えっ、エタノール?メタノールじゃないんですか?!

スミノフ:エタノール50%と水50%の混合液さ。

ストロバヤ:この水エタノール混合液はエンジンをパワーアップするだけでなく、我々の革命的精神をより高次元へと高揚させる働きもあるのだ。

彩華:それって…要するにウォッカじゃないですか(^_^;)

スミノフ:彩華さんもどうです、一杯。寒いときはコレが一番効きますよ!

彩華:い、いえ、結構です!!それでは、これで中継を終わらせて頂きます〜。みなさん、ヨッパライ操縦は危険ですからやめましょうね〜(^-^;)。

スミノフ:まぁそう不調法なこと言わず、ほらグッと一気に煽れば大丈夫ですから!

ストロバヤ:これを飲めば、君にもきっと革命精神というものが理解できるようになるであろう。第一注がれた杯を空けないというのは、我々ロシアの礼儀に反するぞ?

彩華:ひいぃ、結構ですってばぁっ!!(ToT)


作者からのコメント

 えー、レポーター彩華が何やら大変なことになってますが、いい気味です( ̄ー ̄;)。

 前回の「Day Dreamer」は考証やらストーリー作成に相当なエネルギーを費やしたので、今回はあまり深刻に考えず流してみることにしました。描きだした時は列強のなかでまだエントリーしていないのがドイツ・イタリア・フランスそしてソビエトで、独や伊は誰かがやるだろうから(おぃおぃ)おフランスかソビエトか、どちらもイスパノスイザ系 1500hp 級の液冷だなーと思いつつ国籍不明のまま飛行艇型の機体を描いてみたのですが、Schump 氏が「Pa.46/6ブラスク」をアップされたことで「それじゃオイラはソ連だ、ソ連と言えばウォッカだ!」とグラス煽って気勢を上げつつ、訳のわからないノリで一気に文章のほうを仕上げました(^^;)。

 ヒコーキの方はご覧の通りです。「紅の豚」のサボイヤ S-21 に似ていると思う方がおられるかも知れませんが、これに関しては全く参考にしていません。だいいち私は S-21 のカタチさえ曖昧にしか覚えておりませんし。

 一見してわかる問題はプロペラが飛沫の直撃を受けるばかりかローテイト時に水面を打ちそうな気がすることですが、他にも重心が後ろ過ぎるんじゃないかなぁとか、やっぱ翼支柱がひ弱すぎるよなぁとか、水平尾翼のテイルボリューム過大じゃないかなぁとか、左右のエンジンもちっと接近させたほうがいいよなぁとか、気になるところは沢山あります。でも所詮、定量的な検証をやってる訳じゃないのでこんなもんで充分かなぁとも思うのですが(苦笑)。

 ロシアの飛行艇といえば水色塗装ですが、実際に塗ってみると何かインパクトに欠ける感じだったので、悪役っぽくダークブルーで塗りつぶしてみました。真っ赤なスピナーと無塗装のプロペラ・フロート底面はロシアの美的センスです(笑)。

 さて、彩華の奴はどうしてるか…。

彩華:何ですってえぇ、あたしの注いだ酒が飲めないってのぉっ?あんたそれでもロシア軍人?!

スミノフ:か、勘弁してください彩華さん、もう僕限界です…(@_@;)

ストロバヤ:…(既に冷凍マグロ状態)

彩華:ちっ、口先ばっかで情けない男達だわねぇ。ねぇマスター、酒が切れたわよ!ボトルもう一本持って来て!

ささき:い、いかん…ただでさえ粗暴で生意気なやくざメイドなのに、酒が入ってますますタチが悪くなってしまった…。

彩華:ちょっと、誰がやくざメイドですってっ?!黙って聞いてりゃ、ウチュー人の分際で生意気な…(ぽき、ぽき)

ささき:ひいぃぃ、どうしてこうなるんだあぁぁ〜(Т◇Т;)


文・画とも Copyright by Y.Sasaki 2001 3/03