そのときヨッパライは・・・

これはある電車の中で起こった恐ろしいお話です。

 その事件は香取慎吾氏(仮名)が電車に乗って帰宅する途中に起こり ました。  香取慎吾氏(仮名)は仕事で疲れた体をゴトゴトと走る電車のベンチ シートにあずけていました。彼の座っていた場所は、11人掛けの シートの左端で、その日は夜遅かったのとローカル路線のせいで車内 はガラガラで、自分のほかには、自分の対面のシートの反対側の端に もう一人、20台半ばと思われる女性が腰かけているだけでした。 その女性はハードカバーの小説を静かに読んでいるようでした。
 そのうち次の駅につきました。ここでも乗降客は少なく、ただ一人 中年の男性が乗ってきただけでした。その男性は、あきらかに酔って いるようで、かなり足元が不安げです。
 さて、そのヨッパライ男性ですが、手近なシートに腰を下ろすかと 思いきや、何を思ったのかガラガラのシートには見向きもせず、小説 を読んでいる女性の前のつり革につかまると、おぼつかない足取りで 体を前後に揺らしながら、そこに立ちはだかりました。その女性は全 く気づかぬ風で黙々と小説を読んでいます。ヨッパライは上からじっ とその女性の顔のあたりを見つめています。しかも、体を前後に揺ら しながらなにやらブツブツとその女性に向かって言っているようでし た。何を言っているのだろうと香取慎吾氏(仮名)は耳をすませました。 すると、何と!ヨッパライはその女性に向かって「ブ〜○、○〜ス、 ブ○ス、・・・」と繰り返しているではありませんか!気のせいか、 その女性の表情は険しくなったようでした。しかし、まだ黙々と小説 を読み続けています。ヨッパライは懲りずに延々と「ブ〜○、○〜ス、 ブ○ス、・・・」を繰り返し続けます。それでもその女性はヨッパラ イを無視し続け、黙々と小説を読み続けます。
 その状態は5分ほど続いたでしょうか。すると、さすがに耐え切れ なくなってきたのか、女性の顔が明らかに険しくなってきました。し かも肩も小刻みに震えているようです。そのまま、1分ほど経過した ころ、ついにその女性は
「パン!」とひとつ大きな音で読んでいた小 説を閉じると、下からキッ!とヨッパライをにらみつけ、 「なによっ!ヨッパライがっ!」 と強く言い放ちました。するとそのヨッパライはその言葉に全くひる みもせず、むしろ待っていたかのようにこう答えました。 「へっ!ヨッパライは明日になったら直るけど、
ブ○は明日になっても直らねぇじゃねえか
 その直後、電車が次の駅につきました。ヨッパライは何事もなかった かのようにもつれる足でヨロヨロと電車を降りて行ってしまいました。 後には、言い返せないでボーゼンとしたままの女性と、超気まずい思い で座っている香取慎吾氏(仮名)が残っているだけでしたとさ!