骨折した足は・・・

これはよからぬことを考えるとろくなことがないという教訓のお話です。

 そのとき、香取慎吾氏(仮名)は友人と電車に乗っていました。電車の 中はかなり混んでおり、彼と友人はつり革につかまって立っていました。
 しばらくたつと、となりの友人が、やや上ずった声で囁きかけてきました。
「おい、前の娘(こ)、すごくかわいいな!」
 言われて、目の前の座席に座ってる女の娘をみると、確かにめちゃくちゃ かわいくて、しかも、清楚な感じです。おお、これは!と思っていると、
「おい、なんとかしたいな!」
と、友人が悪魔のような言葉を囁きかけるではありませんか!確かに、ぜひ、 お友だちになりたいなぁ〜と思わせるほど香取慎吾氏(仮名)好みではありま したが、元来が、そういう場面ではからっきし度胸のないたちなので、黙って 友人の言葉にうなずくだけでした。ところが、この友人はこういう場面でも 物おじしない度胸のいいヤツだったのでとっとと行動に出てしまいました。
香取慎吾氏(仮名)のほうを指さしながら、
「すいません、こいつ膝を骨折してるんで席を替わってもらえませんか?」
なんというズル賢い発想でしょう!席を譲ってもらうことできっかけを作り、 しかも自分はその女の娘の隣に立ってお話をして仲良くなろうという魂胆です! 香取慎吾氏(仮名)がもちろん骨折などしていませんでしたが、こう言われては もう後の祭りです。あわてて、友人に非難の視線を向けましたが、友人は 女の娘の方を向いたまま涼しい顔をしています。
 ところが、なんということかその前の囁きが聞こえていたのか、女の娘は こちらの声はあきらかに聞こえていると思われるのに、完全に無視をして しまったのです!あれ?コイツ・・・、と香取慎吾氏(仮名)は少しカチンと 来ましたが、そんなことを考えているヒマはありませんでした。
 なんと、その女の娘の隣に座っていた、どう見ても80歳近いようなおばあ ちゃんが座席から立ち上がると、
「それは大変ですね!どうぞどうぞ!」
と、言って席を譲ってくれたのです!
 今更、ウソですなどとはとても言い出せず、しかたなく香取慎吾氏(仮名)は おばあちゃんが譲ってくれた席に、顔から火の出る思いで座りました。しかも ただ、座ってるのではウソがバレてしまいますから、混んでいるにもかかわらず 右足を延ばしたままにする必要がありました。
 自分たちが降りるはずの駅についてもおばあちゃんはこちらを見て心配そうな 顔をしているだけで一向に降りる気配がありません。とうとう、彼らは4駅も 乗り過ごすはめになってしまいました。その間に目的の女の娘はとっとと降りて 行ってしまうし、もう踏んだり蹴ったりです。おばあちゃんの降りた次の駅で 彼らはやっと降りることができましたが、他の乗客の手前、電車を降りるとき も右足を引きずるようにして降りるということまでしなくてはいけなくなって しまいました。
 この後、この二人は友だちから、ただの知り合いになったとさ!