超硬質合金(タングステンカーバイト) No.2

2001.11.09 

 前回、取り上げられなかった「東京電気」と「東芝」について紹介します。

 東京電気

 線引作業(タングステン線)に欠くことの出来ぬのは線引用ダイスである。

 東京電気では現在(昭和8年)或る太さ以上の線引にはタングステン合金で作った所謂メタル・ダイスを用い、其れ以下の太さのものにはダイアモンド・ダイスを用いて居る。 これらの二種のダイスは全部東電の手によって製作したもので、メタル・ダイスはタングステン・カーバイトにて作ったものを使用して居たが、昭和2年頃より米国のカーボロイ、独のウィディア等と略々同じ成分のタングステン合金の製作に成功し、東電において線引に使用するのは勿論、「ダイヤロイ」と称して一昨年(昭和6年)より市場に売り出すに至った。このダイヤロイの品質は仙台市所在金属材料研究所において製作した「センダロイ」は勿論のこと、米国のカーボロイ等にも優るものである。


 東京芝浦電気

 旧芝浦製作所では鶴見研究所で昭和3年から研究を開始した。昭和4年には切削用としてチップ材の実用化に成功、さらに研究を続け、昭和5年にはいちおうの製造研究を終わり、「タンガロイ」の名称で製造販売をはじめた。

 旧東京電気株式会社でも昭和5年にダイヤモンドダイスに代わる材料としてマツダ研究所(旧東電の技術研究所)でタングステンカーバイトの研究を開始、昭和6年にはこれにコバルトを加えてタングステンフィラメント伸線用のダイスを製作した。この合金は「ダイヤロイ」の名称で売り出され、さらに切削用のものにも研究が進められた。

 そこで同種合金である旧芝浦製作所の「タンガロイ」と旧東京電気株式会社の「ダイヤロイ」の生産を統合するため、昭和9年に「特殊合金工具株式会社」を設立し、増産体制を整えた。
 当初製品はタングステンカーバイトにコバルトを加えたものであったが、さらに切削性の向上を図る研究が進められ、これらにチタンカーバイト、タンタラムカーバイトを加えた高性能の合金が開発され、各種切削用チップ、ダイスあるいは型材用として需要が急増した。

 同社は昭和12年に芝浦マツダ工業株式会社に合併され、昭和17年に東京芝浦電気株式会社に吸収された。
 東京電気株式会社は株式会社芝浦製作所に昭和14年7月1日吸収合併され東京芝浦電気株式会社が誕生した。
 なお、旧芝浦製作所と旧東京電気は共にGE社と資本および技術提携しており、東芝発足後もその契約は引き継がれた。


 引用・参考文献

「我社の最近二十年史」 東京電気株式会社
昭和9年1月5日発行

「東京芝浦電気株式会社八十五年史」 東京芝浦電気株式会社
昭和38年12月25日発行

「東芝百年史」 東京芝浦電気株式会社
昭和52年3月31日発行



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